タイダイに染まるPrada
SSENSE限定2019年春夏カプセルコレクション

ダッド スニーカー、高級パーカー、スラップ ブレスレットが登場する前、あらゆる形容矛盾を時代がもてはやすようになる前から、Pradaは存在した。
ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は、常にパラドックスを好んだ。1984年、このミラノ出身のデザイナーは、家族が経営する革製品ビジネスを、高級ナイロンのバックパックというたったひとつのアイテムによって、ファッション界で最も名高いブランドへと変身させた。ラグジュアリーとは無縁の丈夫な工業用ナイロンから作られた、Pradaの実用的な定番アイテムは、80年代で最も意外性のある「イット バッグ」となった。それから約10年後の1996年春夏コレクションは、「アグリー シック」という、またもや矛盾した概念で、批評家から酷評されると同時に絶賛された。これは決して偶然ではない。Pradaのアプローチは、常に相反するもの同士をぶつけ合うというものだった。
SSENSE限定の2019年春夏「タイダイ」カプセルコレクションは、こうしたPradaの伝統がそのまま形になったもので、人気のある防染法の技術を応用したコレクションは、ブランドのルーツが抵抗運動にあることを思い出させる。抵抗文化のイデオロギー、つまり規範を覆し、社会への服従を拒否するという願望を引き合いに出すのは、確かに効果的だが、見え透いている。Pradaは、定番のコットン ジャージのTシャツではなく、贅沢な布地に、ほとんど職人技といえる緻密さでタイダイ染めをほどこす。いたって平凡な模様—子どもの頃に裏庭でFruit of the Loomのまっさらな白のセパレーツを浸し染めしたことを思い出してほしい—あるいは、悪趣味でさえある模様 —ハーモニー・コリン(Harmony Korine)監督の映画『ザ・ビーチ・バム』で、マシュー・マコノヒー(Matthew McConaughey)が着ていたような模様—が、新しい形となって生まれ変わる。シルクサテンのジャケット全体には、さまざまな色が滲んで混ざり合い、鮮やかに花開く。カードホルダーのナッパ レザーに入った模様は、どこかフラクタル模様のようだ。これらが重ね合わさることで、タイダイ模様はPradaのバッグの持つ気品を獲得し、同様に、ハンドバッグはタイダイの精彩を取り入れる。これはすべて、Pradaの永遠の魅力のうちだ。平凡なものと華やかなものという、真逆にあるふたつを隣り合わせることで、Pradaは美しいと考えられているものに手榴弾を投げ込むのだ。