シネフィル:スニーカー
Vans、Nike、Reebokの舞台裏
- 文: SSENSE エディトリアル チーム

「シネフィル」シリーズ第4弾として、SSENSEエディトリアル チームが、映画の中の愛すべきスニーカーにまつわる神話を紐解く。

画像のアイテム:スニーカー(Nike)
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 -Nikeコルテッツ
使用期限切れの催眠剤クアールードを飲んで、しかもFBI絡みの厄介な問題を乗り切らなければならないとき、あなたならどんな靴を履くだろうか。映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の中で、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)が演じたジョーダン・ベルフォート(Jordan Belfort)によると、Nikeのコルテッツがうってつけのようだ。ディカプリオ自身も同じことを言うだろう。現に、カントリークラブの床を這いずって階段を降り、車に乗り込むシーンでは、あまりに熱の入ったラリった人物の演技のせいで、撮影後はカイロプラクターの世話になることになったほどだから。コルテッツの誰もが知るあの快適さを考えれば、彼はおそらく、撮影後に靴を履き替えなかったに違いない。

画像のアイテム:スニーカー(Vans)
『初体験/リッジモント・ハイ』 -Vansチェッカーボード スリッポン
Vansについて考えるとき、おそらくショーン・ペン(Sean Penn)より先に頭に浮かぶのは、スケートボードだろう。だが、Vansがこれほどまでメインストリームに浸透したのは、ショーン・ペンのおかげである。『初体験/リッジモント・ハイ』のセットに、ペンはチェックのVansのスリッポンを履いて登場した。この瞬間に、その後数十年にわたる、この怠け者のための靴の人気は確定したのだった。こうしてペンが演じる主人公ジェフ・スピコリによって広まり、サーファーやスケートボーダー、そしてマック・デマルコ(Mac DeMarco)によって不朽のスニーカーとなった。ヘイターが「どうしてこんな風に、臆面もなく人の時間を無駄にできるのか?」と聞いてきたとしても、Vansを履いていれば、「さあ、どうしてだろうね」と答えるだけで逃げ切れるはずだ。

画像のアイテム:スニーカー(Balenciaga)
『千と千尋の神隠し』 -Balenciagaトラック ランナー
オスカーを受賞した『千と千尋の神隠し』は、日本史上、最も興行成績の良かった映画であり、歴代アニメ映画における最高傑作と言われている。宮崎駿が、友人の10歳の娘をモデルにした千尋を中心に物語は進む。伝説の神々の世界に家族が囚われてしまった千尋は、そこで千という名前を与えられる。ここで人間として生きていくには、この名前でやっていかなければならないのだった。この二重世界を生き延びるのに、Balenciagaトラック ランナー以上にふさわしい靴があるだろうか? 絡み合い、織り合わさったレイヤーが、カオナシと一緒に電車に乗るのに最適なスニーカーを作り出している。

画像のアイテム:スニーカー(Reebok Classics)
『ウェインズ・ワールド』 -Reebok DMX ラン 10 スニーカー
劇中に商品を紛れ込ます広告手法であるプロダクト プレイスメントを、そっくりそのまま体現したのが、あの『ウェインズ・ワールド』の名シーンだ。その中では、ガースとウェインが、自らプロダクト プレイスメントの手法を用いながら、その馬鹿らしさについて、身も蓋もない議論を繰り広げる。だがこの場面でひとつ、画面に映り足りてないと感じさせるアイテムがある。それは、全身Reebokでキメているガースのコーディネートの仕上げとでもいうべき、Reebokのスニーカーだ。幸いにも、ブランドは同じ配色で、さらに進化させたバージョンを開発してくれた。それが、ブルーとアシッドグリーンのDMX ラン 10 スニーカーである。

画像のアイテム:スニーカー(adidas Originals)
『ミッド90ズ』 -adidas Continental スニーカー
「こういうのは、映画ではあっという間に台無しになるんだ。スケボー文化はいつもかなりひどい描かれ方をしているからね。だから、僕たちの指針は、スケートボーディングに対して敬意を払うことだった」。ジョナ・ヒル(Jonah Hill)は、スケボーの世界を描いた彼の初監督作品『ミッド90ズ』について、こう『GQ』に語っている。スタイルに限っていえば、悩むまでもなく、スニーカーはEmericaとVansで決まりに思えるが、とりわけスケートボーダーたちに愛用されているのは、その快適さと耐久性から、adidasのブセニッツだ。『ミッド90ズ』の中で、ナケル・スミス(Na’kel Smith)はスーパースターでキメており、これを見ても、adidasが私たちの考える以上に影響力をもち、快適なことが伺える。ここはサイズが合うか試すだけでも、Continental 80を履いてみるべきだろう。
- 文: SSENSE エディトリアル チーム
- 翻訳: Kanako Noda