異形のスニーカー
Nike、Prada、Margiela から見る5 つの突然変異

ファッション界に、ある伝染病が蔓延している。有毒な病原体がスニーカーに感染したせいで、かつてはシンプルだった定番アイテムが突然変異を起こし、膨張して、奇妙な形やサイズに変形しているのだ。最初にアウトブレイクの兆候を見せたのはBalenciagaのトリプルSで、ソールを3層に重ねたボテっとしたデザインは人気を博し、トレンドは伝染病のように拡大していった。ミュータントと化したスニーカーがクリティカル マスの分岐点を超えた今こそ、Z世代の時代におけるスニーカーが、X染色体を持つスニーカーであることを示す、5つの例を紹介しよう。

画像のアイテム:スニーカー(NikeLab)
これは、実家の玄関先に置いてある、あのダッド シューズとは違う。Martine RoseとNikeの初コラボレーションで若返ったこのダッド スニーカーは、ガンマ線に曝され続けたことで、これまでにない奇妙な形を獲得した。お馴染みの親父っぽいスポーツ カジュアルなスタイルだが、何かがちょっと違う。Martine Roseは、レザーのボディ部分をその半分のサイズのソールに適合させることで、アメリカのスニーカーの王道、エア モナークに革新をもたらした。こうして出来上がったのが、奇妙なまでのユニークさが溢れるスニーカーだ。カラーは、ホワイト、バブルガム ピンク、ブラックの 3 色で展開している。

画像のアイテム:スニーカー(Miharayasuhiro)
Miharayasuhiroのブラック & ホワイト スリッポン スニーカーは、至るところで見かける不朽のVansのスリッポンそっくりに見える。だが近づいてよく見てみると、その解釈にズレがあるのがわかる。90年代後半、シューズ デザイナーの三原康裕は自身のブランドを立ち上げ、それ以来ずっと、あえて人々の期待を裏切るような定番のメンズ アイテムを発表してきた。このスケーターが好きそうなスリッポンのデザインは、漫画に出てくる「スケーターが好きそうなスリッポン」のイラストのように見え、まさに、完全なまでに不完全な異形となっている。

画像のアイテム:スニーカー(Prada)
かつてない人気を誇る、Pradaの超機能的クラウドバスト スニーカーは、形だけでもすでに近未来的なのだが、このブラックとスライムのようなグリーン配色によって、もはや宇宙飛行士というより宇宙人のような印象を受ける。クラウドバストは2017年8月に発売が開始され、今や、このパッド入りで、バブル ソールに靴ひも無しのデザインのスニーカーは、11種類以上のカラー バリエーションと複数のシルエットが販売されている。

画像のアイテム:スニーカー(Nike)
Nikeのリアクト エレメント87は、ストリートウェアのドン、自身もランニング愛好家である、UNDERCOVERの高橋盾とのコラボレーションから登場した。リアクト エレメント87には、Nikeの科学者たちが苦心の末に開発したブランド独自の革新的なソール、リアクト フォームの技術に加え、安定性を高めるようデザインされた、節点のように見える同系色のラバーのディテールが採用されている。このシューズは、履く者を走ることに最適化されたサイボーグへと変えるために作られた。オーロラのようなグリーン、電圧を思わせるブルーの透けたハイテク生地は、ただ放射性に見えるだけではない。命の限り走り続けられるようにデザインされている。

画像のアイテム:スニーカー(Maison Margiela)
ホットメルト接着剤とダクトテープを模したディテールをほどこしたMargielaのフュージョン スニーカーは、不死身のゾンビが100年間履き倒したあとで、Grailedで転売したような見た目をしている。ゾンビのような服装で出歩くことが、まだそれほど普通になっていなかった90年代、他に先駆けて、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が、脱構築した未完成風のスタイルを生み出したことを考えれば、これは当然、意図的なものだ。名前の「フュージョン」は、どのようなタイプのサバイバルをシューズが象徴しているのかを表している。想像してみてほしい。ゾンビが溢れる世紀末世界、残骸を自分で集めて、何かカッコいいものを作らなければならない状況を。