タイラ・パークスは
ラブソングの
振られ役
作詞家で歌手の
25歳が披露する
恋愛論
- 文: Molly Lambert
- 写真: Yana Yatsuk

タイラ・パークス(Tayla Parx)は、サボテンが茂るロサンゼルスの公園に姿を表した瞬間から、まごうことなきタイラ・パークスその人だった。ピンクの髪の毛、ネオン グリーンのまつげ、ローズピンクのバケットハット。服装から態度まで、快活なエネルギーを全身から放出しながら、彼女はセットにいるひとりひとりとお喋りしては、笑っている。パークスは、何年間も舞台裏を動き回りながら、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)など超有名アーティストのためにも歌を書いてきた。自分自身のサウンドで世に知られる準備はすっかり整っている。本名タイラ・モネ・パークス(Taylor Monet Parks)、ソングライターでアーティスト、女優でもあるパークスは、アリアナ・グランデの「7 rings」や「thank u, next」、カリード(Khalid)とノルマーニ(Normani)の「Love Lies」、パニック!アット・ザ・ディスコ(Panic! At The Disco)が全米チャートに返り咲いたヒット曲「High Hopes」など、ジャンルを超えたポップソングを書いてきた。ソロ デビューを飾るフル アルバム『We Need To Talk』と、この3重のスターたちの知名度を糧に、パークスはついに表舞台に立とうとしている。
彼女はダラスで生まれ、その後、家族はコロナへと移った。かつて柑橘類の果樹園のメッカだった街は、今ではインランド エンパイアとして知られるリバーサイド郡の一部になっている。幼い頃からピアノのレッスンを受け、自分の部屋で歌を書くようになった。両親は彼女の音楽活動に対して「とってもとっても協力的」で、家ではベイビーフェイス(Babyface)やブライアン・マックナイト(Brian McKnight)の音楽がかかっていた。曲の作り方を学ぶようになったきっかけについて、彼女は「興味があったのは、ずっとメロディーだった。歌詞に興味を持ったのは、後になってから」と話す。パークスは、アンドレ・3000(Andre 3000)の対話のように自由に想像が広がるスタイルに感銘を受けた。これは、今も彼女の歌詞の流れの中にはっきりと見て取れる。彼女はあらゆるタイプの音楽を聴く。「いい曲は、ジャンルを問わないと思う」と言い、影響を受けた人として、ミッシー・エリオット(Missy Elliott)を挙げる。ミッシーが行なってきた、ティンバランド(Timbaland)やアリーヤ(Aaliyah)のようなミュージシャンたちとの共同制作は、パークスとそのクルーが育んできた「ソングライターとミュージシャンという仲間同士」の空気にも色濃く反映されている。
パークスの初仕事は9歳のときで、ケネディー センターの舞台に2年間立った。一躍注目を浴びるようになったきっかけは、映画版のミュージカルの映画版『ヘアスプレー』で妹のアイネスを演じたことだ。そして17歳のとき、彼女は憧れのミュージシャンのひとりと出会い、作詞家として生計を立てるという可能性に気づいた。そこからパークスは作詞を再開し、今度はもっと真剣に取り組むようになった。「ベイビーフェイスに会ったの。彼のスタジオで働いている人と友達になったことがきかっけよ。ある日、彼に同行することがあって、それ以来、私はプロの作詞家になろう、と思ったの。私もやりたいって思った。寝室で書いてるだけじゃなくて」。パークスは1年間でおよそ200曲もの歌詞をコツコツと書いた。彼女の作詞のプロセスはさまざまだ。「誰かと話しているときに歌詞が思い浮かぶこともあるし、コードを聴いて思い浮かぶこともある」。初めて大々的にヒットしたのは、フィフス・ハーモニー(Fifth Harmony)の「Boss」で、これは、このガールズ グループの2014年のデビュー アルバムのリード シングルにもなった。同年、彼女はジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、マライア・キャリー(Mariah Carey)、キーシャ・コール(Keyshia Cole)のためにも作詞をしている。それ以来、ジ・インターネット(The Internet)、防弾少年団(BTS)、ジャネール・モネイ(Janelle Monae)、クエヴォ(Quavo)など、さまざまなジャンルのアーティストと、コラボレーションの関係を築き続けてきた。また、アンダーソン・パーク(Anderson .Paak)のツアーにも参加した。彼もパークスと同じく、特定の音楽ジャンルに分類するのが難しいアーティストだ。多くの作品に関わってきた彼女だが、中でも特に誇らしく思っているのが、ジ・インターネットのための作詞したことだと言う。「ようやく、妹に私はカッコいいと思わせることができた」
パークスのスタイルは、本人に言わせると、対立するアイデアの間でバランスを探すことだ。「メロディーが歌詞と矛盾するにしろ、トラックがメロディーに矛盾するにしろ、私は悲しいテーマを取り上げて、それをパーティー音楽に聴こえるように作り上げるの。愛と悲しみのような、あらゆるソングライターが取り上げるテーマに対するとっぴな語り口を、私は探しているの。ただし、歌詞を提供するアーティストに合わせる形でね」。「thank u, next」のためのセッションは、グランデの強い要請により実験的なものとなった。また、同胞の女性たちに対する連帯感を表現するというアルバムのビジョンもあり、パークスやヴィクトリア・モネ(Victoria Monet)などのソングライターが雇われた。「彼女はこれまでとは違うことをやりたかったのね。私たちがクリエイティビティを発揮して、楽しむことを彼女は認めてくれたけど、アーティストの中には、なかなかこんな風になれない人がいるものよ。手を離して新しいことが起きるに任せるのって、難しい場合があるから」
「7 rings」の歌詞ができた日のことは、歌の中に刻まれている。「本当に、その日、私たちがスタジオに出向いたら、[アリアナは]まだ来てなかったの。それから彼女は、Tiffanyの大きな袋を抱えて部屋にやってきた。どうも彼女はTiffanyのお店で気を失ったみたいなんだけど、来たときは『どうぞ、受け取って。さあ頑張りましょう』って感じだった。それは友情の絆を固め、この場にいてくれてありがとうと言うためのものだった。彼女にとっては本当にきつい1週間だったけど、私たちはアルバムを作り上げたわ」。「My Favorite Things」を楽曲に挿入するアイデアが生まれたのは、グランデのいちばん好きな映画のひとつが『サウンド・オブ・ミュージック』なのをパークスは知っており、印税の決済は高くつくだろうが、その価値があるとわかっていたからだ。彼女は、歌詞の一部が物議を醸しているのも無理はないと考えていた。「インパクトが大きいと、いつだって議論が起きるものよ」。人々は、アリアナ・グランデが「7 rings」や「thank u, next」のような歌を出すとは思ってもみなかった。変化に対する心づもりができていなかったせいだとパークスは考える。
最近のパークスは、アンノウン・モータル・オーケストラ(Unknown Mortal Orchestra)、テーム・インパラ(Tame Impala)、ケイシー・マスグレイヴス(Kacey Musgraves)などを聴いて刺激を受けている。タイラ・パークスが次に狙うのはカントリー? 彼女はにっこり笑うと、実は来週いくつかのセッションを行うため、ナッシュビルに向かうと言う。それからすぐに、またリゾ(Lizzo)と一緒に回るツアーに戻る。「たくさんの男の子たちとの仕事を離れた今、ここからは女性のエネルギーに溢れたものになるよう構想中よ」。どんな聴衆の中でも彼女は動じない。相変わらず華やかなスタイルだが、異なる雰囲気のつけまつげや髪に変える間、パークスは携帯で、見逃していたNBCの『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』の続きを見る。彼女のお気に入りの番組で、女性たちが一緒にスーパーを強盗する話だ。
彼女はまた、『シムピープル』や『ウォーキング・デッド』のようなゲームで声優もしており、いずれは映画女優に戻る可能性も考えている。だが今のところ、タイラ・パークスが全力を傾けているのは音楽と自分のアルバムだ。世に出ているこれらすべての曲の背後にいる、ひとりの人間として、観客の前に姿を現す準備は整った。「皆が、私自身の思いに興味津々だと思うし、それなら、思い切って自分の言いたいこと表現しようと思うの。そこにはきっと脆さも出るでしょう。だけど、たまには大丈夫じゃなくても、大丈夫なのよ。時には、ラブソングに出てくる振られ役になるのもいいでしょ? そしてあれこれ言った後で、最終的に私は大丈夫、と言うのだっていい」と彼女は説明する。「別れの経験を積んでいく道のりみたいなもの。私たちは全員、そういう修羅場を経験してきてるでしょ? それって混乱するし、戸惑うものよね。だって友だち以上、恋人未満になるんだから。でもそういう時こそ、自分自身について多くを学べる。自分のやりたいことも、自分に必要なことも、自分の求めることについても。それから、自分の愛に対する考え方についてもね」
Molly Lambertはロサンゼルス在住のライターである
- 文: Molly Lambert
- 写真: Yana Yatsuk
- スタイリング: Haylee Ahumada
- ヘア: Nina Monique
- メイクアップ: Andrea Samuels
- 制作: Emily Hillgren
- 翻訳: Kanako Noda