メモ & スケッチ
アーティストの制作過程に直接触れることのできるメモやスケッチは、プロセスの一コマを切り取ったものであったとしても、完成品と同じくらい、示唆に富んだ視点を我々に与えてくれます。 ソーシャルメディアが率先して行ってきた、見る者と見られる者の境界線を取り払うことによって透明性を確保する傾向が、アートの世界へも波及したことで、アーティストが自らの手の内をさらけ出すことは、プラスの要素として歓迎されるようになりました。 アーティストのごく個人的なメモやスケッチを所有することは、これまで一般人が目にすることのできなかった思考過程や、そこからやがて創造的な作品が生まれていった道筋を垣間見るきっかけを与え、ラフ スケッチは作品が完成すれば意味を失うのだから破棄されてしかるべきという考え方を根底から覆すでしょう。 メモやスケッチは、コレクションに親しみと双方向性の要素を与えることで、アーティストを神聖化するのではなく、ひとりの人間として向き合うためのきっかけを与えてくれます。 最もシンプルで現実的なアイデアは、綿密かつ出口の見えない試行錯誤の結果生まれたものであり、創造性の究極の原形であることに違いありません。