Bottega Venetaに
知性が光る

2020年の秋がデザインしたオルンクワとディーンの友情物語

  • Photography: Emmanuel Olunkwa
  • Models: Aria Dean

エマニュエル・オルンクワ(Emmanuel Olunkwa)が暮らしている地区では、彼の言葉を借りるなら、「孤立した場所」と呼ぶにふさわしい日々が流れている。歴史あるブルックリンのスタイブサント ハイツなのに、「ニューヨーク」が意味する諸々とは無縁なほど、遠く隔絶した場所のように感じる。「ここにいると、何でもなりたいものになれる」と言うオルンクワは、慣れ親しんだ形式へ回帰すると同時に、新たな手法を実験中だ。今は、カルチャーの分野で働く人たちの共有スペースPioneer Worksと、建築、政治、哲学、その他多岐にわたるインタビューを出版するプロジェクトとして先頃始動した『November』、両方のエディターを務める。オルンクワの仕事には、いずれも一貫して、協働作業の本質が関わっている。

オルンクワのユニットはアパート ビルの1階だが、4階上には、批評家、アーティストとして活動するほか、『Rhizome』のエディター兼キュレーターでもある親友のアリア・ディーン(Aria Dean)が住んでいる。今日は1階へ降りてきたディーンをオルンクワがもてなし、一緒にアートを楽しんだ。2020年秋冬シーズンのBottega Venetaに身を包んだふたりが、カメラを全景撮影に設定して、生活空間にあるさまざまなモノの表面にアーティストの視線を注ぐ。本の背表紙、テーブルの脚、ピンクのカラーには、どんなディテールが潜んでいるのだろう。

オルンクワは、以前、自分のスタイルが描写されているのに気づいたことがある。ゼイディー・スミス(Zadie Smith)の短編集『Grand Union』に登場するラファエルという登場人物が、不気味なほど彼に似ているのだ。スミスが書いた架空の若者は、非常に美しく、とてもスタイリッシュで、『Frieze』のシニア エディターを 「『ゾンビばかりをコレクションする売女』と呼んでも最近まで首にならなかった人物らしく、趣味の良い身なりをしている」。もちろんこれは物語で、本当の話ではない。だが、オルンクワは目にしたものをそのまま正直に言葉にするという事実が、スミスの簡潔な描写には凝縮されている。

「親友とこれほど近くで暮らしてみて、正直であること、弱さを持っていることの大切さがわかった」と、オルンクワは言う。「本当の友情はどんな形をとるか、どんな感じがするか。それを知ることができた」。互いに行き来して、互いの生活空間に足を踏み入れるにつれ、オルンクワとディーンが相手に抱く人物像は変化し、深みを増す。ディーンの仕事には、近過去の短命な事象を保存する作業が多い。あちこちに散在するインターネット文化とデジタル形態のアートワーク。捉えにくく、同時に消し去ることのできない媒体だ。影響もそれと同じように作用する。友情に同じ感触があるのも、おそらく偶然ではないだろう。

  • Photography: Emmanuel Olunkwa
  • Models: Aria Dean
  • 翻訳: Yoriko Inoue
  • Date: September 18, 2020