ストライプのすべて

コナー・マクレガーから、トム・ブラウン、リル・ウージー・ヴァートまで、SSENSEエディトリアル チームがアルファベット順にストライプを大解剖

  • Text: SSENSEエディトリアルチーム

道路標識を彷彿とさせるOff-Whiteの斜線。Issey Miyakeの三次元ストライプ。ドイツの映画監督ファスビンダー(Fassbinder)の『ケレル』。星条旗。階級を示す軍隊の肩章。英語で「三つ子の魂百まで」を意味する「虎の縞模様死ぬまで」。船乗りのボーダー シャツ。扁平にみえるストライプ、ありがたくないストライプ。細い線、太い帯。スピードを象徴するレーシング ストライプ、ゆっくりと溶解して錯視を引き起こすストライプ。覆い隠すストライプ、強調するストライプ。SSENSEのエディター チームがあらゆるストライプに注目し、AからZまで網羅したストライプ用語集を贈る。

Adilette / アディレッタ

「ette」という接尾辞は、普通、相対的にサイズが小さいことを意味する。例えば、簡易キッチンの「kitchenette – キチネット」、シガーより細く短い「cigarette – シガレット」。女性版に対する差別的な表現として使われることもある。例えば、スマーフ村でただひとりの女の子「Smurfette – スマーフェット」。そうかと思うと、逆に、女性の側からの抗議を表すこともある。例えば、婦人参政権を主張する女性団体のメンバーを指した「Suffragette – サフラジェット」。そんな中で、奇妙なことに、Adidasの「Adilette – アディレッタ」だけは、接尾辞の含蓄とは無関係なようだ。1972年のミュンヘン オリンピックで初登場したアディレッタは、シルエットが美しく、速乾性に優れた、快適なスライド サンダルだ。ちょっとそこまでスポーツ ドリンクや頭痛薬を買いに行くとき、ロッカールームでシャワーを浴びるとき、あるいはシーズン最初のプール遊びに最適な一足。接尾辞「ette」の、もうひとつの用法と言えるかもしれない。すなわち、「親愛の情」を示す「ette」。アディレッタは、さしずめ、やんちゃで多感で、靴紐を結ぶことさえできないほど落ち着きのないAdidasの弟、あるいは妹だ。


Bridget Riley / ブリジット・ライリー

インクで描いた線のような平凡なものを使っているのに、圧倒的な深みと流動感を感じさせるのは、非常に非凡な才能である。ブリジット・ライリー(Bridget Riley)のめくるめく作品は、文字通り、体調が狂ったような状態を引き起こす。吐き気、めまい、乗り物酔い、潜水病──それらすべての異常な感覚を、巧妙に描かれた精緻なストライプが誘起する。


Censor Bar / 検閲の目隠し

デジタル編集でピクシレーションの操作ができるようになるまで、道徳に反するものを隠すには、その上に黒い帯をペタリと貼り付けてしまうのが一般的なやり方だった。ヌードのセルフィーが氾濫し、インスタグラムによってガイドラインが設けられた現在、写真を撮影した後の編集で付け足すもの自体が、装いの一部になった。


Diagonals / 斜線

斜線は手間を省く。正方形を二分する場合、斜線なら、退屈なふたつの長方形ではなく、一度にふたつの台形を作ることができる。なんといっても、斜線は効率的だ。スクランブル交差点で、お目当ての向かい側へ直行できる。信号が青に変わるのを、2回も待つ必要がない。だが、ファッションには、斜線を活用する余地がまだたくさん残っている。今のところは、10年毎に思いついたように現れては、着る人を引き立てるでもなく、視覚を誤魔化すトロンプ ルイユの役割を与えられているに過ぎないのだから。


Eleanor Mustang / マスタング エレノアのレーシング ストライプ

フォード マスタング スポーツルーフ シリーズの1971年型モデル「エレノア」は、女優でもある。1974年の映画『バニシング in 60』での助演で広く知られ、映画史上もっとも有名になった車の1台に数えられる。エレノアはスピードで勝負する。イエローの車体、ボンネットの中央を走る幅広のブラックのストライプ、サイドにも長くのびるストライプ。フォード社こそ、レーストラック専用だったレーシング ストライプを乗用車へ採用したアメリカで最初の自動車メーカーであったことを考えれば、マスタングを代表してエレノアがキャスティングされたのも当然だろう。


F※ck You Pinstripe /「F※ck You」ピンストライプ スーツ

ウェザーとの対戦に向けた初のマスコミ向けイベントに、誂えのパリッとしたピンストライプ スーツとピンクのネクタイで現れた。だがよく見ると、ストライプと見えたのは実は実線ではなく、極小フォントで垂直方向に「Fuck You」を書き連ねた模様だった。だからこのストライプは会場でのふたりの激しい応酬には大いに貢献したが、それが裏目に出たのかもしれない。予想にたがわず、世紀の対戦は第10ラウンドでメイウェザーがマクレガーにTKO勝ちを収め、全勝無敗のチャンピオンの座を守って、史上初の快挙を達成した。約36分のファイトで手にした賞金は、スポーツ史上最高額とも推測される3億ドル。この後、メイウェザーは、(再度)きっぱりと引退した。


Giorgio / Giorgio ビバリーヒルズ ロデオ ドライブ店

1961年にオープンしたブティック「Giorgio Beverly Hills」は、命名からわかるとおり、ラグジュアリーに徹した。仰々しいほど誇示した世界! Halstonによる数々のデザインに、 一世を風靡したDIANE von FURSTENBERGのラップ ドレス! そんなロデオ ドライブの店内には、明確に男性を意識したオーク造りのバー、ビリヤード ルーム、読書室があった。女性たちが店内で楽しくショッピングにいそしみ、カードで支払いを済ませるあいだ、(いかにも男らしいタイプの)連れの男性ももてなそうという配慮だ。だが、グレース王妃(Princess Grace)、ダイアナ・ロス(Diana Ross)、グレタ・ガルボ(Greta Garbo)、エリザベス・テイラー(Elizabeth Taylor)のような女性客は、想像するに、自分で買いたいものを買い、オークのバーや読書室を自分で楽しんだ女性たちに違いない。ブティックのひさしでよく知られるイエローとホワイトのストライプは、Giorgioブランドの香水からビーチ タオル、Tシャツ、ジム用バッグに至るまで、あらゆる商品に使われ、単に過去を懐古させるだけでなく、商品化曲線などという概念が登場する以前に、予言的影響を発揮して時代に先駆けた。


Hesh / ヘッシュ

21世紀が幕を開けた頃、「ヘッシュ」と呼ばれるようになったトレンドが、じわじわとメインストリームに浸透し始めた。太平洋岸北西部のスケートボード集団と密接に関連したヘッシュには、いくつかの明確な目印があった。先ず、直毛にして染めた(不潔な)黒髪、手首に巻きつけたブレスレット代わりの紐や細いレザー、きつすぎるほどタイトなジーンズ、たまにビンテージのミリタリーウェアやスタッドが付いたベスト、そしてほぼ必ずと言っていいほど、レッドとホワイトのストライプのトップス。海で生きる同胞とも言える船乗り、80年代のスラッシュ メタル、フランスのヌーベル ヴァーグ、ラモーンズ…どこからインスピレーションが湧いたにせよ、反抗的な一匹狼のコンセプトは、妙にストライプと結び付く。


Issey Miyake Pleats Please

プリーツは、言うなれば三次元のストライプだ。触っても、動かしても、なぜか必ず元に戻る。三宅一生は、間違いなく、プリーツのキングだ。Homme Plissé Issey Miyakeのゆったりした単色使いのウェアは、模様のないストライプ、抑制されたコンセプトのストライプである。


Jean Paul Gaultier

縞模様のボートネックは、元来、水夫の制服としてつくられたものだ。約2センチ幅のホワイトと1センチ幅のネイビーは、船から海へ落ちたとき、とても目に付きやすい。ジャン=ポール・ゴルチエは、救命具にしがみつく水夫のごとく、このストライプを掴み、以来、手放したことがない。ストライプとセクシーな船乗りのイメージを、Gaultierブランドから切り離すことはできない。ホワイトとその半分の幅のネイビーの縞模様「ブルトン ストライプ」が今でも魅力を失っていないのは、ひとえにGaultierのおかげかもしれない。


Kanye / 「College Dropout」時代のラグビー シャツ

「自分で着てみるまで、Ralph Laurenは退屈だと思ってた」と、カニエ・ウェストは軽口をたたいたことがある。これは本当ではないし、少なくとも10年間、ヒップホップ派はRalphとそのポロ シャツを派手に愛用していた。だが、初のスタジオ アルバム『College Dropout』から3枚目のスタジオ アルバム『Graduation』に至るいわゆる学校時代、カニエが学生らしいスタイルで自らの視覚的イメージを確立したことは確かだ。何もかもパステルか原色、バックパック、いかにも典型的な大学生風のいでたちだった。そしておなじみのラグビー シャツ。現在のカニエは、テキストを走り書きしたTシャツとか赤ん坊用みたいなデザインの靴とか、どちらかと言えば幼稚園前の子供みたいなスタイルだが、プレッピーなストライプは、依然としてWASPと呼ばれるアングロサクソン系白人のカレッジ ルックを象徴するデザインであり、それをヒップホップ ピープルが自分たちの流儀で着倒すことも変わらない。


Lil Uzi Vert / リル・ウージー・ヴァートのストライプ トップス

2017年5月、ストライプの長袖トップスを着たリル・ウージー・ヴァートの姿が写真に残っている。ボタンを外して左の肩を見せ、雄鶏のように天辺だけ赤く染めた髪で、Goyardのバッグを抱えている。そのトップスを素敵だと思って、「カワイイ!」と叫んだ女性ファンもいる。だが反対にオンラインでは、奇妙なファッション センスを槍玉に挙げた人が多かった。リル・ウージーは、あのシャツは2,400ドルもしたんだとやり返した。ただ、彼は法螺を吹いている。まだらに漂白して穴を開けた件のトップスは、Faith Connexionの商品だ。小売価格は300ドル、現在はセールで65ドルに値下がりしている。


Missoni Zig Zags / Missoniのジグザグ模様

「見て、この世には色しか存在しないって誰が言ったの?トーンってものがあるのよ。」Missoniの美しいニットウェアを1969年に初めて目にした当時の『Vogue』アメリカ版編集長ダイアナ・ヴリーランドはこう言った。彼女にそう言わしめるだけあって、ジグザグ模様が放つ視覚的インパクトは強烈だ。たくさんのジグザグ模様はもちろんのこと、それがMissoniのジグザグ模様となれば、なおさらだ。色彩がゆがみ、希釈され、合わさり、ギザギザになって、トーンを変える。目がクラクラするようなMissoniの色のパターンは、何故だかわからないが、誘惑的だ。まるで広大な歪んだ花畑を空から見ているかのように。いや、訂正する。Missoniにとってのジグザグ模様は、単に様々な色が織りなすパターンではない。それは、Missoniにとってのタータン模様なのだ。


Nanaimo Bars / ナナイモ バー

ジョージ5世は、赤と白はカナダの国の色であると宣言したとされるが、別の人に言わせれば、チョコレート ブラウンとカスタード イエローの方が、色の組み合わせとしては適切だと主張するかもしれない。ココナッツ風味のグラハムクラッカー、クリーム、チョコレートガナッシュの3層のストライプで出来たナナイモ バーという名のこのお菓子を一口食べると、カナダの誇りの味がする。それも当然、このスイーツの発祥の地であるナナイモでは、ナナイモ バーにちなんだ独自メニューを開発した39店が立ち並ぶ「ナナイモ トレイル」なるものまであるのだから。トルドー首相が、先日パパラッチされたような上半身裸姿でジョギングにやって来てすべてを台無しにしない限り、カナダが誇るお菓子の未来は明るい。


Orlando Magic Throwback Jersey / NBAオーランド・マジックのピンストライプのチーム ユニフォーム

かつて、バスケットボールを観るのは楽しかった。弱いチームにも勝つチャンスがあったし、シーズンの結果は蓋を開けてみるまでわからなかった。オーランド・マジックの1994-95年のNBAシーズンが懐かしい。ちょうどマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)が野球へ転向していた時期だったため、NBAはかつてないほど、スター不在の余波を受けて苦しんでいた。しかし、思いがけないところにそのスターがいたのだ。ペニー(Penny)の愛称で親しまれたアンファニー・ハーダウェイ(Anfernee Hardaway)は、かつて皆がそうだったように、いくつものポジションをこなせるマルチ プレーヤーで、同じくチームの中核だったシャック(Shaq)ことシャキール・オニール(Shaquille O'Neal)とコンビを組み、チームがそのシーズンのNBAファイナル進出を果たす原動力になった。抜群の身体能力と溢れんばかりの愛敬のおかげで、彼はその年、Nikeとの契約を獲得する。ペニーのCMキャラクターであるリル・ペニー(Lil Penny)が作られ、クリス・ロック (Chris Rock)がその声を担当した。それだけではなく、彼の名を冠したシグニチャ モデル「エア・ペニー(Air Penny)」も誕生した。それが、のちに歴史に残る「アップテンポ」シリーズの原型となったとされている。


Picasso / ピカソ

巨匠ピカソの愛した、白地にブルーのボートネックのストライプ。


Queue / 行列

人の行列を空から鳥瞰すれば、ストライプに見えるかもしれない。行列は、基本的には、人が自分の順番が回ってくるのを待つという、ある意味微笑ましい概念だ。だが、人間は一生のうち、平均して5年間を列に並んで過ごすというデータをみれば、微笑ましいなどとは言ってはいられない。おそらく、そこには電話の自動音声を聞きながら順番が来るのを待つことも含まれているだろう。そして、この傾向が、近い将来改善される兆しはない。それどころか、状況は悪化の一途をたどるばかりだ。新作スニーカーの発売を待つ、信号が青に変わるのを待つ、スーパーのセルフチェックアウトの行列で並んで待つ。人の行列が作るストライプは、まだまだ無くなりそうにない。


Red Stripe / ジャマイカのビール「レッドストライプ」

旨いビールが、ジェントリフィケーションのごとく、裕福な層にも広まること。


Sports / スポーツ

スポーツらしいルックスと言えば、何と言ってもストライプだ。ストライプのソックス、ストライプのショーツ、ストライプのジャージ、シューズにあしらわれたストライプ。そんなストライプが、通常は3本ずつ入っている。2018年のNBAのプレイオフで、クリーブランド・キャバリアーズの選手が会場に入る際に、Thom Browneに身を包み颯爽と登場したことを思い出そう。Thom Browneのシグニチャであるクロップ丈のスーツに、トリコロールのグログランリボンのディテール、ストライプのソックスで全身を完璧に固めていた。さらに、同ブランドが先月、FCバルセロナとのパートナーシップを締結したことも記憶に新しい。それによるとThom Browneは今後3年間、チームの移動中など、ドレスアップが必要な時のために、オフフィールド用のフォーマルウエアを公式に提供する。また、5月には、イヴァンカ・トランプがホワイトハウスの運動会(笑)にて、Gucciのブラックの無地にストライプの縁取りのディテールがほどこされたワンピースで、アメフトのボールを投げている様子が公開された。きっと「この服はスポーティだわ」と思い、2,200ドルもするワンピースを、ボールを投げる場に着て来たのだろう。ストライプとスポーツは切っても切れない関係なのだ。


Tupac’s “Keep Ya Head Up” T-shirt /トゥパックの「Keep Ya Head Up」T シャツ

1993年にリリースされたミュージックビデオ「Keep Ya Head Up」の中で、トゥパック(Tupac) は、白とオレンジのストライプTシャツに、ベースボールキャップを後ろ向きに斜めにかぶり、女性への尊敬の念をラップした。あの時のトゥパックは、男性に心の底から惹かれるという感情を若き日の自分に教えてくれた。その姿は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。そして、その後どんなひと目ぼれをした時でも、彼に対して抱いた憧れが、自分にとっての絶対的基準ラインとなったのだ。


Undercover

ストライプは、幾何学的な完全無欠さの産物だ。尺を測ったまっすぐな線が、完璧なパターンを成す。高橋盾が率いるUndercoverは、1本の線を、ブランドロゴの「U」の下に添え、マスコットの「Undercoverベア」に目隠しをするのに使った。しかし、高橋は、この一本線を、その厳正さから選んだわけではなかった。「僕たちは、人間なんです。だから完璧なのはクールじゃない。」2015年の『ビジネス・オブ・ファッション』誌とのインタビューで、高橋はこう語った。「僕は作品を作るなかで、ただカワイイとかキュートなものを表現するのではなく、その背後にあるものを探求したいんです。それが人間らしいから。キュートなテディベアに、ちょっとしたショック、ちょっとした暴力性を加える。そうすることで、真の美しさが生まれる。僕は美を否定しているんじゃなくて、別の観点から表現していると思ってます。」高橋は、1本の線が、常に完璧で人畜無害とは限らないと教えてくれた。時に、それは荒々しいまでに力強くもなるのだ。


Vivienne Westwood Pinstripe Suit in Season 4 Episode 17 of Sex and the City / 『セックス・アンド・ザ・シティ』シーズン4 エピソード17 のVivienne Westwood のピンストライプ スーツ

このスーツが登場したのは、主人公のキャリーが、雑誌『Vogue』でフリーランスとしてコラムを執筆する仕事をすることになったエピソードだ。Vivienne Westwoodのスカート スーツ、キャリーがこっそり潜入した『Vogue』社内にある衣裳部屋、エロ編集者のジュリアンと言えば、きっとあなたも覚えているだろう。時代を越えて生き残るのは、権力を乱用する男たちなのか、それとも美しく仕立てられたピンストライプ スーツなのか──このドラマを見る限り、すぐには答えが出ない難問だ。


Wales Bonner

あらゆる人があらゆることに対して一家言持っている業界と時代にあって、グレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)のデザインは、決して言葉で飾り立てることをしない。ブランディングをせず、カルチャーについてコメントを出すこともなく、ひねりの効いたキャッチコピーや批評を出すわけでもない。にもかかわらず、彼女はそれぞれのコレクションで自らが探求するアイデンティティの物語を通して、メッセージを伝える。丁寧な下調べがされ、考え抜ぬかれ、思いやりにみちたものづくりは、今日のファッション業界においては、なかなかお目にかかれない。ボナーは、クロシェのストライプといったディテールが持つ持続的な影響を自在に操り、あれやこれやと言わずとも、主張を伝えるウェアを作る達人なのだ。


Xtina’s “Dirrty” Striped Bikini Top / クリスティーナの「Dirrty」なビキニ トップ

クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)が2002年にグラミー賞を受賞したアルバムのタイトルは『Stripped』だった。しかし、収録されているヒット曲「Dirrty」のミュージック ビデオを見る限り、「Striped」でも良かったかもしれない。 下半身をピッタリと包み込むヒップハガーのボトムス──それもかなり低い位置で穿いているのは確か──と、赤と白のキャンディ ストライプのブラのトップス。これによって、彼女は、長きに渡りファッション界に影響を与えるスタイルを提供した。カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)もきっとそう証言するだろう。なにせ、カイリーは「Dirrty」のリリースから10年以上も経ってから、ハロウィーンのコスチュームにそれを着て、再び大流行させたのだから。そのコスチュームは今でもEtsyで出回っていて、高いものだと、400ドル以上もする値段で取引されている。「パーティーを楽しむつもりなら」今からでもダーティーになるのは遅くない。


YEEZY Boost 350 New Colorway ft. “Transparent Stripe” / YEEZY Boost 350の新作にほどこされた「透明なストライプ」

先月末、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)が、夫のカニエのブランドであるYEEZY 350スニーカーの新色を、ひと足早く、自分のInstagramのティーザー動画の中で公開した。まさに彼女ならではのASMR的手法。ささやくような、彼女の声が動画の背後で聞き取れる。たっぷりとグロスを塗っているとおぼしき唇で「ちょっと待って、こんなのがあったなんて知らなかったわ。クリーム色の、透明なニットだなんて」とキムは言う。知らなかったというのは、たぶん嘘だろうが、バターのような色をした、暗闇で光るバージョンの新作スニーカーには、確かにシースルーの一本線があしらわれている。


Ziggy Stardust Striped Blazer / ジギー・スターダストのストライプ ブレザー

山本耀司、渡辺淳、高橋盾などを輩出した文化服装学院の卒業生である山本寛斎がデイヴィッド・ボウイ(David Bowie)に紹介されたのは、弱冠22歳の時だった。そして、山本はボウイのジギー・スターダストツアーの多くのステージ衣装を手掛けることになる。衣裳を観客の目前で一瞬にして変える、歌舞伎の仕掛けである「引き抜き」をボウイに教えたのも山本だ。そのおかげでボウイのライブパフォーマンスは、格段にテンポが良くなった。山本は、ボウイのストライプをあしらった衣装の多くを作った。その姿は今日も人々の心に刻まれ、色褪せることはない。中でも、ボウイが「ジギー・スターダスト」時代に着ていた、あの白地に黒の細いストライプが入ったジャケットは別格だ。

  • Text: SSENSEエディトリアルチーム