無検閲のアルヴィダ
スウェーデンのインスタグラム パーソナリティと共に、セルフィーと検閲を語る
- 文: Rebecca Storm
- 写真: Arvida Byström

「例えば、女性の乳首。こういうことには意見を一致できると思うの」。アルヴィダ・バイストロム(Arvida Byström)は、検閲について思いをめぐらす。「もういい加減、そういうこだわりは超えられないのかしらね」。フォトグラファー、モデル、熱烈なセルフィー愛好者ではあるが、対話するうち、バイストロムの関心がビジュアルに限定されないことが明らかにされる。バイストロムは、ほぼ間違いなくオリジナルなモノクロ パステル インスタグラマーのひとりだが、一見屈託のない表面的なアプローチは、より深い社会政治的テーマに対してより広範な聴衆を獲得することに成功している。SSENSE のセルフィー シリーズで、バイストロムはHood by Air、Versace、Ashish、Charlotte Olympiaのモデルとなり、年を取ること、自己検閲、ハイヒールについて、レベッカ・ストーム(Rebecca Storm)と対話した。

レベッカ・ストーム(Rebecca Storm)
アルヴィダ・バイストロム(Arvida Byström)
レベッカ・ストーム:遅ればせながら、お誕生日おめでとう!
アルヴィダ・バイストロム:ありがとう! 25歳になったの。なんだかすごい出来事みたいな気がするわ。
あなたは、ソーシャル メディアにかなりパーソナルな内容をアップしてるし、セルフィーをポストする回数も多いですよね。ある程度の若さを維持しなくちゃいけないプレッシャーを感じることはありますか?
「若いままでいる」時期は、かなり長く続いたわ。で、ようやく終わりつつある。私は、すごく色んなことをやってきたのよ。別に、若いからそうしなくちゃいけないってわけじゃない。若くても、色んなことをクリエイトする必要はないし、それはそれでいいの。年を取ることは、本当のところ、それほど嫌じゃないわ。年を取るって、多分、素敵なんじゃないかな。だから、否定的には考えない。
いつかセルフィーをやめると思いますか?
できれば、そうしたくないわね。年を取るにつれて、もっともっと面白くなるんじゃないかな。普通、女性は若いときが一番きれいってことになってるから、何が「きれい」かを考え直さなくちゃいけない。だから、年を取ってその答えを見つけるのは、とっても面白いはずだわ。今セルフィーをとってる人たちにも、全員、続けて欲しいわ。今から40年後は、セルフィーなんて超レトロなこととか、年寄りしかやらないことになってたりして。


あなたはソーシャル メディアといっしょに成長してきたようなものですね。そこから写真に興味を持つようになったのですか? それとも、あなたにとっては、別々の活動だったのですか?
実際のところ、両方が一緒に発展してきた感じ。確か私が12歳くらいの頃、カメラが安くなって、簡単に手に入るようになったの。友達は、みんな、写真家になりたがってたわ。それに、オンラインにのせる自分の写真も必要だったし。あの当時は、Myspaceの初期だった。オンラインにセルフィーをのせてるかっこいい子が沢山いて、それを見て、10代の初めだった私はすごく影響されたわよ。「わぁ、素敵」って。
ソーシャル メディアには次の段階があると思いますか? 進歩していくと思いますか? それとも、検閲によって後退すると思いますか?
検閲だけが後退の原因だとは思わない。世界にはいつだって検閲があるし、いつだって特定の道徳観から検閲が生まれる。使っていい言葉、使ってはいけない言葉。私たちの日常生活にだって、緩い検閲があるわ。でも、ちょっと時代遅れになって今の時代にはそぐわないだろうか、どこに線を引こうか、って考え始めると、色々なことが出てくる。ちょうど今は、検閲の対象を考え直そうとしてる時期だと思う。特に、体について。ジェンダーの境界が流動的になっているから、どんどん対話が広がってるわ。それに、体の特定の部分を検閲するのって、すごい変だし、逆行だと感じる。大体、どうしてこれ以上女性の体を卑下しなきゃいけないの? みんな変わってきているから、意見が一致しない領域に検閲があるんだと思う。

あなたがモリー・ソーダ(Molly Soda)と作っている本は、その点を追究するためですか?
そうよ。インスタグラムのコミュニティ ガイドラインに引っかかって、報告された写真や削除された写真ばかりを集めた本なの。この本を作ってると、ちょっとした複雑な問題だってことが分かるわ。何が大丈夫で何がダメなのか、はっきりしないのよ。例えば、女性の乳首。こういうことには意見を一致できると思うの。もういい加減、そういうこだわりは超えられないのかしらね。インスタグラムの検閲の向こうに、もっと検閲する人たちもいるの。そのことにも、ちょっと触れるわ。前書きを寄稿してくれた人のひとりは、実際にオンラインで検閲してる人たちについて書いてる。すごい量の仕事が外注されてるわ。すごく安い賃金で、沢山嫌なものを見なきゃいけないのよ。殺人とか、首切りとか、そういう類。全部、私たちがハッピーにオンラインを体験できるようにするため。
あなたが受け取った写真の中で、いちばん馬鹿げた検閲はどんなものでしたか? 「これって、一体何なの?」という例を教えてください。
ええ、最初の頃に受け取った写真の1枚なんだけど、ヒジャブを着てる女の子の写真とテロリズムを結びつけた人がいるの。それが理由で削除された。クレージーな例よ。「あらまぁ、これがイスラム嫌悪じゃないんだったら、一体なんなの」って、呆気にとられたわ。どちらとも判別できないグレー ゾーンの写真もたくさんあるし、どうして露骨過ぎるって受け取るのか、理解に苦しむ写真もあるわ。美容整形も、否定的なレッテルを貼られてもののひとつね。でも、私としては、問題が潜んでいる領域という意味で、とっても興味をひかれるわ。誰でも美容整形できるお金があるわけじゃない。多分、私はポスト ヒューマン的に興味を感じるんだと思う。 つまり、望みどおりに、自分の体を変えられるっていうこと。それって、両面があるわよね。誰も知らないうちに、好きなような変身できるってスゴいことじゃない。そういうふうに、自分の生物学的な体を秘密にするって、面白いと思うわ。でも、反対に、結果がとっても決まりきったものなのが悲しいわね。その方面に詳しいわけじゃないけど、忘れちゃいけないのは、性転換手術っていうのがあって、男性も女性も、それで自信を持てるようになる人が沢山いると思う。
美容整形については、どう考えますか?
あれも、否定的なレッテルを貼られてもののひとつね。でも、私としては、問題が潜んでいる領域という意味で、とっても興味をひかれるわ。誰でも美容整形できるお金があるわけじゃない。多分、私はポスト ヒューマン的に興味を感じるんだと思う。 つまり、望みどおりに、自分の体を変えられるっていうこと。それって、両面があるわよね。誰も知らないうちに、好きなような変身できるってスゴいことじゃない。そういうふうに、自分の生物学的な体を秘密にするって、面白いと思うわ。でも、反対に、結果がとっても決まりきったものなのが悲しいわね。その方面に詳しいわけじゃないけど、忘れちゃいけないのは、性転換手術っていうのがあって、男性も女性も、それで自信を持てるようになる人が沢山いると思う。




最近、パメラ・アンダーソン(Pamela Anderson)を撮影しましたね。私の記憶する限りでは、セックス シンボルの象徴としてマーケティングされたセレブリティは、彼女が最初だったと思います。どうして、彼女を撮影したいと思ったのですか?
その点では、間違いなく、彼女は立派なアイコンだわ。あの撮影は商業ベースの仕事だったし、最終的にどんな写真を選ぶか、私ひとりで決めるわけじゃなかったの。彼女自身が気に入るもの、ってこともあったし。最近は違う撮影でとった違った感じの写真が出てて、彼女が年齢を重ねて、それを見せることに少し抵抗しなくなったんじゃないかと感じるわ。そういうのは、とても興味がある。でももちろん、自分がパメラ・アンダーソンで、注目を一身に浴びるのは、すごく大変だろうと思う。
着るものについては、どう考えていますか? 日常的に着まわせるものが好きですか、それともお洒落するのが楽しいですか?
ちょっとお洒落なものをミックスするけど、半分カジュアルっぽくミックスするの。それが私のスタイル。この撮影用に選んだのは、ハイヒール以外は、私が毎日着るようなものばかり。もっとハイヒールを履きたいんだけど、私って怠け者だから。



背が高いと、ハイヒールって履きにくいですよね。私がハイヒールを履いたときに感じることですけど。
私も背は高いけど、ハイヒールは大好きよ。だから、ハイヒールを履きたいのよ、ものすごく背が高くなるように(笑) 。でも、そうすると、周りの人と同じ高さになるように、だんだん縮こまって、ちっちゃなエイリアンみたいな姿勢になっちゃうの。そういう自分の姿を写真で見ると、背を丸めて、両手を挙げて「まるで、シンプソンズのミスター・バーンズそっくり」
周りの人と同調するために、猫背になって背を低くする。それ、私がいつもやってることです!
私もよ。そういう姿勢になってしまう。個人的には、背が高いのがとっても好きなんだけどね。

- 文: Rebecca Storm
- 写真: Arvida Byström