ヒップホップ界のパパラッチ、Places+Faces

写真コンビがエイサップ・ファーグやジョーイ・バッドアス、カニエ・ウェストを撮影したお気に入りのフォトアルバムを紹介する

  • 文: Arthur Bray
  • 画像提供: Places+Faces

20世紀後半、セレブリティ写真という幅広い人気を誇るジャンルが誕生した。スターたちを仕事場で、あるいはオフに隠し撮りで、撮影した写真だ。被写体が人々の記憶の中でどのように認識されるかは、多くの場合、これらの写真によって左右されてきた。2000年代半ばには、ブログを運営する無数のパーティー フォトグラファーたちがポートレート写真のスタイルを用いるようになった。彼らはフラッシュをたき、あえてぞんざいなアプローチで、どんちゃん騒ぎが繰り広げられるレイブなどで人々を撮影した。Places+Facesは、そのような中でも特に最近注目のパーティー記録写真家、Instagram熱狂時代におけるヒップホップ界のパパラッチである。

ロンドン出身のイムラン・シーセイ(Imran Ciesay)とソロモン・ボイェード(Solomon Boyede)、またの名をシーセイ(Ciesay)とソウルズ(Soulz)は、2011年にTumblrで写真プロジェクトを開始した。これ以来、このコンビはライブに行っては、お気に入りのパフォーマンスをプレス席から撮影してきた。活動開始当時からPlaces+Facesは拡大を続け、PalaceやSupremeのようなストリートウェア ブランドと同じように、服飾ブランドやジン、ミックステープ、巡回展、パーティー企画にまで手を広げている。2013年、シーセイはニューヨークを訪れたとき、偶然エレベーターでエイサップ・ファーグ(A$AP Ferg)に遭遇し、エイサップ・モブ(A$AP Mob)とアルバム『Trap Lord』制作の舞台裏を撮影するためスタジオに呼ばれる。そして罪のない嘘のおかげで、エイサップ・ファーグのマネジメント側から自由に出入りできるパスを確保した。ここからすべてが始まった。「自分はそこにいて当然という風を装えばいいんだ」とシーセイは回想する。相棒が海外にいる間、一方のソウルズは、ツアー中のアメリカのラッパーを撮影したり、人気上昇中のグライムのMCから、当時新しくできたばかりのジャンルで最前線をいくUKロード ラップまで、イギリスの才能が次々と生まれる場所で撮影を続けたりしながら、本国の砦を守っていた。ストリート カルチャーとドキュメンタリーが交錯する場所に立つふたりは、アメリカとイギリスのヒップホップをカメラに収め記録する取り巻き写真家の地位を獲得していった。カニエ・ウェスト(Kanye West)、ギグス(Giggs)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)、セクション・ボーイズ(Section Boyz)、ウィズ・カリファ (Wiz Khalifa)など、みな瞬く間にフラッシュの中に収まった。

セレブリティ写真の分野において、パパラッチとは他人の生活をしつこく詮索するものと考えられることが多いのに対し、P+Fは自らの仕事が時代を超えるものだと考えている。「僕はみんなに、90年代のビギー(Biggie)やトゥーパック(Tupac)を見るときと同じように、僕たちの写真を見てもらいたい。Places+Facesは文化を記録しているのだと知ってほしい」とシーセイは『Fader』誌に語っている。「写真を通して僕たちの旅と物語を見せたい。人々に美術館にいるように感じてほしいんだ」。恥ずかしげもなくオートフォーカスを多用したシーセイとソウルズのスタイルは、被写体の純粋な感情を露わにする。あるときは、エイサップ・モブのメンバーが今は亡き親友エイサップ・ヤムズ(A$AP Yams)の墓碑を前に見せた想いを捉え、またあるときはガンビア人の若者がP+Fの商品を見せびらかす姿、またあるときは、トロントの倉庫でのパーティーでモッシュする十代の若者たちを捉える。「集合写真」やセルフィーや、Instagramのライブ投稿が巷にあふれる中、バランスを失うことなく、このような飾らない素の瞬間を切り取るのは容易ではない。がむしゃらに各地を回った2017年、ソウルズの記録によれば、ふたりは北米、ヨーロッパ、アジア、さらにはオーストラリアまで、月に1回は遠征していた。

ロンドンで撮影したクラウド サーフィング。大勢のファンの上にいるアーティストはアッシャー・ロス(Asher Roth)で、これはロンドンでのライブ最終日だった。

リングから運び出されている男は、ノックアウトされたバンコクのムエタイ選手。8月にバンコクでポップアップをやったんだ。この写真には白黒を選んだ。試合の激しさを強調したかったら。白黒はほとばしるエネルギーを捉えるのに向いている。

数ヶ月前にソウルで開いた展覧会とポップアップ ストアで撮影した行列の写真。ソウルを始め、アジア各地でファンが広がっているのを見て驚いた。

ジョーイ・バッドアス(Joey Bada$$)は以前何度か撮影したけれど、今回は格別に飾らない写真が撮れた。たまたま道で彼に会ったんだけど、同じパーティーに行く途中だった。1年くらい顔を見ていなかったから、久しぶりに友だちに会って近況を話すのはいいものだった。

この写真は、東京に行ったときにメイドインTYO(MadeinTYO)を撮った写真。彼もちょうど同じ時期に東京でライブをやってたんだ。それで知り合いになって、一緒に出かけたりした。バッグは今年初めの夏コレクションのものだ。

このスナップ写真は、ロサンゼルスのハウス パーティーで、警察が来てパーティーが閉鎖されているところ。

これは今年の初めロサンゼルスで撮ったエイサップ・ファーグ。彼がそのとき滞在していた家に招待されて、くつろいだよ。

この写真のモデルはティナ・クナキー(Tina Kunakey)。パリを歩いていて撮った。コーヒーを飲んでいる男の人の横に座るのは彼女のアイデアだったんだ。彼はすごくフレンドリーで写真に入るのも全然気にしてなかった。

これは「HYPEBEAST」と一緒にやった香港でのパーティーの写真。彼女はいきなりケーキを食べながらやってきたんだ。

これは、ロンドンであったスケプタ(Skepta)のSkAirイベントで撮った。この車は展示会のディスプレイの一部だった。ソウルズがロッキーを撮ったのはこれが初めてだった。僕は彼を過去に何度も撮ってるけどね。

この写真はロンドンで撮った。ワイヤレス・フェスティバルでのデザイナー(Desiigner)の最初のライブ。彼の横にいるのはDJレリーレル(DJ RELLYRELL)。ライブでどの曲をやるかを話していたところ。

  • 文: Arthur Bray
  • 画像提供: Places+Faces