「Bianca Chandon」のアレックス・オルソンと、コペンハーゲンを滑る

プロスケーターから転身したデザイナーが、瞑想と友達作りを語る

  • インタビュー: Zoma Crum-Tesfa
  • 写真: Lukas Gansterer

Supremeの「Cherry」などのビデオ出演によって伝説的な地位を手に入れた後、アレックス・オルソン(Alex Olson)を取り巻く環境は一変した。スケート カルチャーがますますファッション界の注目を集めるにしたがい、オルソン自身と彼のふたつのブランド「Bianca Chandon」と「Call Me 917」は、独立独歩でスケーターから転身を果たした起業家として、非常に有名な手本になった。オルソン自身はスタイルとは無縁で、服を買うのも嫌いだと言い、ファッション界がスケートに関心を持つのは、世界で最後のサブカルチャーのひとつ、すなわちソーシャルネットワークの繁栄によって力を増す一方のサブカルチャーへの執着と考えている。物事はどんどん変化しているが、その一方で、オルソンはスケートボード イベントのコペンハーゲン オープンに参加し、平常心を保つ。

ゾーマ・クルム・テスファ(Zoma Crum-Tesfa)のインタビューで、瞑想、スケートチームの選択、ジェイソン・ディル(Jason Dil)が初めて買ってくれたニューヨーク行きの飛行機のチケットについて、オルソンが語った。

ゾーマ・クルム・テスファ(Zoma Crum-Tesfa)

アレックス・オルソン(Alex Olson)

普段、どんな1日を過ごしていますか?

朝、3種類の瞑想をやるよ。最初はマインドフルネスの誘導瞑想法。Headspaceっていうアプリがあるんだ。15分の瞑想で、先ず座って、自分の身体が太陽の光を浴びている姿を心に描いて、リラックスして感覚を感じる。次にHRVっていう瞑想法があって、それは精神を心拍に同期させて、呼吸で心拍数をコントロールする。俺は、心拍数モニターを使って、これを10分やってる。雑念があると、心拍が下がっていくんだ。すごく面白いし、すごく気持ちがいいよ。3つ目は、ヴィム・ホフ(Wim Hof)メソッド。ヴィム・ホフは「氷男」と呼ばれてるオランダ人で、要するにあらゆる形態のヨガを探究して、自分なりの方法を発展させた人物だ。HRVに似てるけど、冷温の要素や自然の要素を使う。ホフは氷水の中に1時間浸かっていても冷水を泳いでも、全く平気なんだ。科学者は、そんなことをしたら低体温症で死亡するって言うだろうけど、ホフはもう30年間も実践してるから全く動じない。3つの瞑想を全部やると大体1時間かかるな。ヴィム・ホフ メソッドがいちばん長い。

最初は真剣なものじゃなくて、単に楽しむための実験が、だんだん本格的になっていった

瞑想を始めてどれくらいですか?

だいたい1年くらい。

会社の運営で、ずいぶん忙しいでしょうね。会社を始めた経緯は?

会社を始めたのは、それまで使ってたスケートボードの会社を辞めたから。「スケートボードのスポンサーが要るな」ということで...。例えばNikeとか、他の企業にスポンサーとして付いてもらおうと思ったら、ボードのスポンサーが必要なんだよ。なんというか、それが基盤になるわけだ。有名なアーティストに大きなギャラリーが必要なのと同じさ。ボードのスポンサーがギャラリー オーナーに当たるわけ。だけど、普通と違う形にしたい気持ちもあった。スケートボードの会社にしてしまうと対象がひとつに限定されるから、気が向かなかった。最初は真剣なものじゃなくて、単に楽しむための実験だったんだけど、それがだんだん本格的なものになっていったんだ。

外野から拝見していると、まったく苦労がないみたいです。あなたにはもう、象徴的なスタイルがありますよね。

俺にスタイルがあるとは思わないな。自分の服さえ買わないから。買っていた時期もあったけど、わざわざ出掛けて気に入る格好を選ぶのが大仕事だ。世界には服が有り余ってるから、新しい服なんか要らないさ。

でも、新しい服を作っていますね。どう折り合いを付けるんですか?

それは自分でも分かってる。古い服を作れたらいいんだけどな。パタゴニア社の本を読んで「本当に変わらなきゃ」と思ったんだ。環境意識を持って100%地球に優しくありたいなら、新しい服じゃなくて古着を買うべきだって書いてあった。素晴らしい本だよ。新しくビジネスを始める人には、必ず読んで欲しいね。

今は、誰か若いスケーターのスポンサーになっていますか? 応援したいスケーターはいますか?

マックス・パルマー(Max Palmer)が917に乗ってる。すごく物静かやつなんだけど、展覧会もやったんだ。俺はちょうど留守にしてたから、見に行けなかったけど、彼の作品にみんなすごく印象を受けたと思うよ。それに、全部彫刻仕立てで、すごく意外だったし。

スポンサーになるときは、スケーターに何を求めるんですか?

917を始めたとき、スケートパークでたむろしているキッドたちは、必ずしも上手くはなかった。スケートボードは、何もかも、洗練され過ぎた時代があったんだ。だから、完成されていないキッドをスポンサーするほうが面白かった。今はみんな、間違いなく上手い。俺としては、互いに友達同士のキッドたちを起用したかった。いがみ合ったり競争してるキッドたちを起用するより、そのほうがずっとリアルだから。友達のグループを使って、何が起こるか、見てみたかったんだ。

スケートボードは洗練され過ぎた時代があったから、完成されていないキッドをスポンサーするほうが面白かった

現在、スケートの世界は前ほど洗練されていませんか?

そう思うよ。自分のブランドを始めることも、はるかに一般的になったしね。

スケートが新しいファッション文化の中心になることに、関心を持っていますか?

単に、今がそういう時代なんだと思う。スケートは、今でも文化と呼べる数少ないもののひとつだ。音楽はもう、本当の意味の文化じゃない。どこかに登録したら、誰でも音楽ライブラリーを持てる。写真もそう。携帯にカメラが付いてるんだから、誰でも写真家だ。全部が横並びになって、ちょっと地に落ちた感じだからな。その点、スケートボードには、単純に一括りにできない何かがある。往々にして美化される、はみ出し者の青春みたいな雰囲気があるんだ。憧れの神秘みたいな...。ま、これも俺の自惚れだけど。

スケートボードには、何か共有の信念みたいなものが要るようですね。

今のスケーターは、例えばニューヨークにいる仲間は、俺より若いんだけど、みんなYou Tubeを通して知り合ったんだ。それって、すごく面白いし、クールなことだ。それぞれがアップロードした映像をきっかけにして、メッセージをやり取りするようになる。遅かれ早かれネットでのやりとりから飛び出して、互いの家で寝泊まりして、友達になったんだ。

若者ならではの創意あふれるアイデアって、素晴らしいですね!

今のスケーターたちは、世界中で、助け合ってる。俺には当てはまらないけどね。俺は「クソ食らえ。オマエなんかとは一緒にいたくもない。知るかよ!」っていう感じだったから。

あなたも純真なスケート少年だったでしょう?

いや、全然。

でも、18歳のときに、ロサンゼルスからニューヨークまでスケート旅行しましたよね。

ジェイソン・ディル(Jason Dill)に相談したのを覚えてるよ。すごいプロのスケーター。FacebookかMyspaceで、ほんの気まぐれに「ニューヨークへ行きたいです」ってメッセージを送ったら、チケットを買ってくれたんだ。俺はニューヨークへ飛んで、何人か、当時のスケート界で有名だった人たちに紹介された。確か、2005年だったな。そこからいろんなことが始まったと思う。ちょうど、ダン・コレン(Dan Colen)その他が、彗星の如く登場してきた頃だ。少人数のグループだったけど、すごくエネルギーがあったんだ。その場にいられたことで、すごく助けられたね。

スケートのおかげで飛行機のチケットが手に入ったことを、どう思いますか?

どうかな。ジェイソンのすごくいいところは、とにかく気前がいいとこなんだ。面倒見がいいし、人との出会いが好きなんだと思う。そういう人って、よくいるよな。

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