すすめ、
タルーラ

妖精のピクニックにインテリア、メンタルヘルス。ウィリス姉妹の末っ子が今こそ見せる素顔とは

  • インタビュー: Erika Houle

自宅でこれに挑戦するのはおすすめしない。ただし、あなたの姓がウィリス(Willis)で母親がデミ・ムーア(Demi Moore)なら話は別だ。なにしろ坊主頭は一家の十八番。しかもパパのブルース(Bruce)がその手でイニシエーションの儀式を行うとなればなおさらだ。子ども時代を過ごしたアイダホの家で、愛する人々、そして夢の子犬軍団と共に隔離生活を送りながら、タルーラ・ウィリス(Tallulah Willis)は、こういうときは「絶好調」でなくとも無問題なのだと、頻繁にアドバイスを発信する。恐怖の土壌から共感の花を咲かせるのは、長年、彼女が強みとしてきたことだから。

オンライン ヘアカットや家族のTikTok動画が現実になる前、私は26歳の誕生日を迎えたばかりのタルーラと、ロサンゼルスのMilk Studiosで会った。染めたばかりの個性的なフレンチブルーの髪は、宇宙人の通過儀礼を思わせる。ほんのりと虚栄の香りが漂う、ある種の自己解放のしるしだ。変容していく自分自身の姿をありのまま共有することを通じて、ネット上のタルーラの居場所はレアな告解の場となっただけでなく、彼女にとって成長を記録する手段にもなった。彼女には、理想的な生き方を見せて自分を売り込む演技をひたすら続けなければというプレッシャーはない。むしろ、その傷つきやすさや垣間見せる気取らない素顔を頼りに、より多くの共感を獲得している。「私には、自分で選んだわけでもないのに、生まれたときからこの舞台が与えられていた」と彼女は言う。「でもやっと、本気でそれを受け入れようとしはじめたところなの」。つい先ごろ、タルーラは他者とのつながりへの強い思いを、自身の新しいアパレルライン、Wyllisへと昇華させた。彼女がデザインする目的は、心の健康とウェルネスについての意識を広げること。着心地のいい、古着にインスパイアされたクルーネックのは、カウチでくつろぐときにも、親友への贈り物にもふさわしい。

犬が吠え、送風機がうなり、ロビン(Robyn)が歌う「Dancing on My Own」が流れるセットのなか、レッドブルで気合を入れ、きらびやかなRick Owensのドレスをまとったタルーラが、軽やかに跳ね、くるくると回った。その姿は主演映画のモンタージュを撮影するスターさながらだ。さすが血は争えない。撮影後、Championのスウェットシャツとベビーピンクのビーニー姿に戻ると、タルーラは自宅のインテリア、家族の伝統、そして「ノー」と言う技術について語ってくれた。

エリカ・フウル(Erika Houle)

タルーラ・ウィリス(Tallulah Willis)

エリカ・フウル:アイダホでの子ども時代のことを話してくれる?

タルーラ・ウィリス:年がら年中、素っ裸で過ごしてた。服を着せられるとなると、もう大騒ぎ。毎朝、学校に行くのに下着をつけたらよくやった、みたいな。20代の初めにその家に帰ってみて、はじめて「この場所ってほんとに特別なんだ」って思った。私って自然からすごくエネルギーをもらうのね、壁のコンセントから充電するみたいに。それはああいう特別な何年間かをあの場所で過ごしたおかげ。あの日々が私の想像力を育ててくれたの。うちにすごく大きい植え込みがあってね、ある日の午後、姉のスカウトと二人で園芸用のトリマーを持ち出して、そこに横穴を作ったの。それから食料品店に行って、ポテトチップスとワカモレとサルサを買ってきて、そこに潜り込んでピクニックした。小さな妖精のおうちってことにしてね。そういうところで育ったことにすごく感謝してる。

まだそこに妖精のおうちはある?

ええ、あるわ。

その家に帰るときは、子ども時代の寝室に泊まるの?

うちの家族は部屋を交換したりしたのよね。今は「寝る部屋」っていうのがある。前はスカウトの寝室だったんだけど。そこにベッドが3台置いてあるから、休暇のときはみんなでそこで寝るの。

あなたのアイデンティティにお姉さんたちとの関係はどれくらい影響してる?

それは私が私であることの大事な柱のひとつになってる。姉たちとの関係は、お互いに対する言葉遣いまで含めて、すごく思いやりにあふれてて素敵なの。ふたりがいなかったら私は私じゃないと思う。

家族の中で、あなたはどんな役回りなの?

お互いのサポート役という意味では、しょっちゅう立場が入れ替わってるかな。ずっと同じじゃなくて。それぞれがぐるぐる交代しながら、盛り上げ役になったり、ジョークを言ったり、間に入ってもめ事をうまくおさめたり。いろんな役割があるの。私たちのユーモアのセンスはすごく特別だから。

伝統は大事にするほう?

うちの家族の一番大事な伝統は、毎年クリスマスにおそろいのパジャマをもらうやつかな。全員で家族写真をとって、そのパジャマを着て寝て、翌日は1日パジャマで過ごす。あとみんな、犬を買うわね。誰もやめられないの。そうそう、昨日の夜、姉たちとママの家にいたんだけど、「Lineage of Females(女系家族)」っていうグループチャットがあるわ。

着用アイテム:ロング ドレス(Edit)

ファッションの感性もお姉さんたちの影響を受けてる?

それはたぶん、母の影響のほうが強いかな。ロサンゼルスに引っ越した頃、母はクローゼットにぎっしりハイヒールを持ってたんだけど、1足、私が履けるのがあって。コルクと透明なルーサイトでできた靴だった。それを穿いて、布を売ってるお店に行ってブルーグリーンのシルクを買ってきて、ギリシャ風のドレープドレスみたいにちびでぺたんこな身体に巻いてみたことがある。早く大人になりたかった。3年生の頃、私の美の理想は『セックス アンド ザ シティー』のサマンサだったわ。

あなたにとってのグラマラスな魅力の基準は誰?

母ね。昔から、本当に魅力的な人だとずっと思ってきた。最近の彼女の定番は、オーバーオールかジーンズにだぼだぼセーターなんだから笑っちゃうけど。でも、ぱっとスイッチが切り替わるの。母はちょうどファッション ウィークのためにヨーロッパに行って『ハーパーズ・バザー』のガラに出たんだけど、信じられないくらい綺麗だった。超かっこいいポニーテールのエクステをつけてね。「さすが、期待を裏切らないわ」って思った。記憶にある限り、いつもそんな感じ。

あなたにとって最高に「イット」なスタイルとか、カバーストーリーはある?

ありすぎて数えきれない。でもいつも「ワオ、最高!」ってなるのがアカデミー賞授賞式の衣装ね。そうだ、あの刺繍のついたライラック色のドレス。胸をぐっと思いきり押し上げて、髪をマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)風にカールさせた母は、永遠のアイコンって感じだった。

そういうスタイルは受け継げるものだと思う?

もちろん。でも、自分が心地よくいられるものも、同じようにすばらしいと思ってる。「似合うか似合わないか」っていう二者択一な考え方は好きじゃない。3日前に髪をブルーに染めたんだけど、もうそれについていろいろ悩んでるところ。

なぜ?

うまく自分のものにできるかどうかはわからないけど、ファッションのボキャブラリーから「それは無理」を消し去るためにチャレンジするのが好きだから。

今、自分のことをファッションデザイナーだと思ってるf?

ちょっと声が震えちゃうけど、そうね、私はファッションデザイナーです、アパレルラインをデザインしましたって言えるかな。ようやく自分にしっくりする肩書というか役割だと思ってる。

新しいラインのWyllisでは、メンタルヘルスに対する意識の啓発を大きなテーマにしてるけど、それはあなたにとってどんな意味を持つのかしら。

やらずにはいられなかったの。私は心の問題ですごく苦しんできたし、すごく感情豊かな人間だっていう幸運もあったから。私、完全に孤独だと感じてた時期があってね。実際に周りに人がいなかったわけじゃなかったんだけど。でもそれをどう言葉で表現していいかわからなかった。そういうなかで、ちゃんと自分の足で立つことができて、ちょっとだけそこから浮上したとき、こんなふうに感じているのは自分だけじゃないことがわかったの。

収益の一部を寄付する団体はどうやって選んだの?

今はNational Alliance on Mental Illnessと協力してる。提携するチャリティ団体にはすごく注意してる。ちゃんとしてるところじゃないとね。人にお金を払ってくださいとお願いするなら、私のことを信頼してもらいたいの。

つい最近、26歳になったのよね。大人になったと感じる?

感じる。25になったときはたぶん、これまででも一番と言っていいくらい落ち込んでた。それが、この1年間で成長して、仕事をして前に進んで、自分を認めてあげられるようになったおかげで、自分でいることになじめるようになってきた。なんていうか、いるべきところにつま先だけ突っ込んだみたいに。私にとって最大の問題は、自分の決断をすごく疑っちゃうこと。お酒を断ってそろそろ6年になるけど、いまだに「私は悪いことをした悪い子なんだ」って自分を責める自分がいる。今は自分自身を信じられるように、一生懸命努力してるところ。

ほかに、大人になったと感じることは?

インテリアに興味が出てきたこと。前だったらおしゃべりするなら靴か男の子の話題だったのに、今の私は「テーブルランナーが欲しいな」だもの。壁紙を見るとわくわくするの。モフモフのベビーたちがいるから、あの子たちのママとしての責任もある。しっかりしないとね! 何よりも大きな変化は、きっちり区切りをつけて、自分のために誠実に生きるようになったこと。他人のためじゃなくてね。これは長い間、私の足かせだったから。ノーの言い方を覚えることだってそう。感じよく「今晩は出かけられないの」って言えばいいのよね。

自宅はどんな雰囲気を目指してるの?

ちょっと変だけど、家にあるものは何でも、丸くて柔らかいのが好き。私がどういう人間なのかってことと、私の居場所が一致するよう、いろいろ意識してる。こじんまりして、居心地がよくて、色鮮やかで、ミスマッチで、ちょっとキッチュ。ちょうど、泳いでる魚の巨大な油絵を買ったところ。とってもいいの、いかにもマイアミって感じで。それからこの間はブックエンドを買った。なんか「私がブックエンドを探す日が来るなんて」って我ながらびっくり。でも最高にかっこいいの見つけちゃった! ばかでかい鼻の形なの。身体のパーツをヘンテコにデフォルメしたアートが大好き。

インスピレーションを仕入れるのはどこ?

Etsyね。何を探してるときでも、見てると心が休らぐから。このあいだなんて、ケープを見てたわ。

ケープ?

私だってケープを作りたくなるかもよ?

今、ベッドサイドテーブルには何が載ってる?

抗うつ剤、ボーイフレンドからの誕生日カード、ちっちゃいブリキのメリーゴーラウンド、それと昨日の夜食べてたプレッツェルの袋かな。

あなたのベッドの下を覗いたらありそうなものは?

埃の塊。

犬の毛?

犬の毛ね、うん。

ちょっとした自分へのご褒美で気に入っていることは?

バスタブでお湯に浸かってヘルシーなドリンクを飲むのが大好き。お風呂でKevitaを飲みながら、めちゃくちゃ面白いSFファンタジーロマンス小説を読むの。お香をちょっと炊いてね。それだけ。

2020年の初めに、今年は自分に恋をする年だとツイートしていたけれど、それについては何を意識してきた?

自分を好きになるためにやってきた中で一番よかったのは、私を愛してくれる周りの人たちの話を聞くようにしたこと。その人たちは昔からずっと変わらなくて、私を思ってくれる気持ちも変わってない。でも支えてくれるその人たちの気持ちを受け入れられるように、私のほうが変わったの。

着用アイテム:ブレザー(Y/Project)帽子(Y's)

Erika HouleはSSENSEのエディターである。モントリオール在住

  • インタビュー: Erika Houle
  • スタイリング: Jessica Willis
  • ヘア: Nikki Providence / Forward Artists
  • メイクアップ: Kali Kennedy / Forward Artists
  • 協力: Linus、Touchi
  • 翻訳: Atsuko Saisho
  • Date: April 27, 2020