都会に生息する両生人類
Saturdays NYCと、
サーフ系ストリート ライフの
クリエイティブなパワー
- インタビュー: Thomas Bettridge
- 写真: Alessandro Simonetti

2009年のオープン以来、ニューヨーク シティのクロスビー ストリートにあるSaturdays NYC旗艦店は、スケーター、銀行マン、中心街で働くプロフェッショナルたちが集うコーヒー ショップ兼ブティックである。ブランド創設者のモーガン・コレット(Morgan Collett)とコリン・タンストール(Colin Tunstall)は、時には凍てつくような寒さの中、決まって出勤前のとんでもない時刻にいろんな場所でサーフィンするが、ショップから地下鉄の俗称「 Aトレイン」で17駅のロッカウェイ ビーチは、そのうちのひとつ。波を追いかけるふたりは、今や成長を続けるメンズウェア ブランドを担って、アメリカのビーチ文化を原動力としたデザインから、幾度となく旅行で訪れている日本で出会った新しいシルエットや染色技術へと視野を広げている。コレットとタンストールにとって、サーフィンはムードボード上のコンセプトではなく、創造のプロセスを推進するエンジンそのものだ。都市のカオスを放出する安全弁であると同時に、Acne Studiosのジョニー・ヨハンソン(Jonny Johansson)など、友人たちに共通するインスピレーションの源泉である。
朝が訪れたニューヨークで、コレットとタンストール、そしてフォトグラファーのアレサンドロ・シモネッティ(Alessandro Simonetti)が、ロッカウェイ ビーチ周辺からリッジウッドにあるSaturdaysの倉庫、そしてニューヨーク市街の中心にあるストアを案内してくれた。




「僕は出版の仕事をするためにニューヨークへ来たし、モーガンはファッション業界で働くためにやって来た。だけどふたりとも、海に入って波に乗る情熱を持ち続けてたんだ。朝と週末にね。ブランドを立ち上げた8年前にはあまり知られてないことだったけど、ニューヨーク シティに住みながら僕たちと同じことをしてる仲間はすごく多いんだよ。都会は感覚の負担が大き過ぎるから、脱都会が必要な人はたくさんいる」
コリン・タンストール
「僕は南カリフォルニアで育ったから、文字通り、パドルで湾を渡って、通りを横切るだけで、海でサーフィンできたんだ。それが僕の過ごした子供時代。ニューヨークへ来たときは、そんなに近くに海があるなんて思いもかけなかったから、感激したよ。ニューヨークは、活気があって、多彩で、チャンスがいっぱいの街だ。毎日街で頑張って、いい波が来るときは海でサーフィンできる。それがいいんだよ。2つの世界が繋がれることが、僕にはいちばん大事なんだ」
モーガン・コレット


「ブランドをスタートさせた当初は、沢山のブランドが春夏コレクションの添えものにサーフィンを使うやり方が理解できなかった。でも今は、8年前にはなかった方法で、ファッションがサーフィン文化に関わってる」
コリン・タンストール
「Acne Studiosのジョニー・ヨハンソンは親友なんだ。ジョニーにとって、サーフィンしてるときと仕事が切り離せないことは、見てて分かるだろ? ニューヨークの美術館でアートを目にするのと同じように、サーフィンにインスパイアされるんだ」
モーガン・コレット




「Saturdaysをやろうと思ったとき、仲間が集まるスペースというアイデアがいつも頭にあったんだ。クロスビー ストリートの物件を見たときは、即決。裏庭があったからだよ。みんながやって来て、なんとなくたむろして、エンジョイできる場所に、欠かせない要素になるだろうと思った。いろんなタイプの人が来てるのを見ると、すごくハッピーだよ。スケーター、サーファー、ハイエンド ファッションの業界人、ウォール ストリートの金融関係。なぜか、みんながうまく混ざり合って、リラックスしてる」
コリン・タンストール
「僕たちが目指すのは、目的と意味のあることをやること。コミュニティを作って、次のコレクションのインスピレーションを探すときは、特にね。予算を守ることなんか、まったく頭にない。『いけるって気がするから、やってみよう』ってノリだ」
モーガン・コレット




- インタビュー: Thomas Bettridge
- 写真: Alessandro Simonetti