ダイアナ・ゴードンがやって来る
遠くの場所でマット + カットに撮影されたミュージシャンが、あなたの家へ
- 文: Ana Cecilia Alvarez
- 写真: Mat+Kat

アーティストであり批評家でもあるジョン・バージャー(John Berger)は、1972年に『Ways of Seeing』を制作し、1冊の本にまとめた。主題は、写真やビデオによるヨーロッパ絵画の複製だった。BBCで放映されたドキュメンタリー シリーズでは、複製されたダ・ヴィンチ(DaVinci)やボッティチェリ(Botticelli)の作品が、金箔を貼った額縁や所蔵する個人の鑑賞室から解き放たれて、次から次に溢れ出る。「あなたがテレビの画面でこれらの画像を目にしている今」と、バージャーは視聴者に語りかける。「画像の周囲にはあなたの部屋の壁紙があり、向かい側には窓があり、下にはカーペットがあります。この同じ瞬間に、同じ画像が他の数多くのテレビ画面に現れ、それぞれがさまざまに異なる物体、色彩、音に囲まれているのです」

Diana 着用アイテム:スカート(Supriya Lele) 冒頭の画像のアイテム:ピアス(Alighieri)
この文章を囲んでいる写真は、先ずこのウェウページのレイアウトによって構築されているが、ある意味で、文章の言葉によっても構築される。さらに、あなたが見ている画面の輪郭、あなたが使っているデバイスの形状、あなたのベッドやキッチンやソファのライン、もっと目を凝らせばあなたの指の指紋にも囲まれている。バージャーは言う。「視覚イメージは、常に、見る人の捉え方を反映した形として現れます」。ウィルスが侵入できる多数の開孔部と接触面を備えた私たちの体を含め、具象であることがますます大きな負担に感じられる今、愛する人々の姿も自分から半径2メートル足らずの範囲を超えた世界も、画像でしか目にできないことが多い。スワイプし、クリックし、文字通り手のひらに抱える、触覚の欠落した体験だ。かつて人々は、崇拝の場所に彫られた像や、美術館の壁に掛けられた絵画や、映画館の銀幕上の映像を見るために足を運んだ。だが隔離生活が長引く現在では、画像のほうが移動し、増殖し、私たちの眼前に現れる。訪れてくるのは画像だけということも珍しくない。そして、元来の文脈を離れた画像は、私たちの環境という個人的な文脈に置き換えられる。バージャーが語ったように、「画像がやって来るのです。あなたが見に行くのではありません」
そういうわけで、フォトグラファー デュオのマット + カット(Mat + Kat)とモデルになったミュージシャンのダイアナ・ゴードン(Diana Gordon)が、彼らの家からあなたの家へやって来る。

着用アイテム:ピアス(Y/Project)

着用アイテム:ロング ドレス(Jacquemus)


着用アイテム:スカート(Supriya Lele).
- 文: Ana Cecilia Alvarez
- 写真: Mat+Kat
- セット デザイン: Tim Ferro
- スタイリング: Ben Perreira
- モデル: Diana Gordon
- 制作: Kendall Thompson
- キャスティング: Julien Pineault
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: July 31, 2020