ファッションは監視、監視はテクノロジー
ウェアラブル テクノロジーが暗示する、暗黒未来のスタイル
- 文: Julia Cooper
- 写真: Myles Hall

アプリを45分間使用、通知を90回受信、時間を85回チェック、音楽を聞きながら30分間ワークアウト。この場合、バッテリーの駆動時間は18時間になる。常温を17度~22度に維持すれば、ウェアラブル機器の寿命は最大限まで伸びる。つまり、バッテリーの寿命と人間の寿命は全く同じだ。腕時計からドローンを手配して、Amazonから歯磨き粉を配達させる。フィットネス アプリは、広漠たる存在の虚無感を紛らわせる。アメリカ国家安全保障局は、メタデータの収集をミクロデータの追跡に変える。装着は途切れることのない監視を実現する。

着古したジーンズを履く。AirPodsをいじって、耳の穴に落ち着かせる。どちらもとても快適で、自分の手足のように馴染んでいるから、身に着けていることも忘れてしまう。快適性を追い求める設計は、人間サイボーグに関するいかなる理論より、歴史が古い。リーバイ・ストラウス(Levi Strauss)は、1953年、ゴールドラッシュと特許を追いかけた男に創設された。どちらの場合も、未来は新しい素材の中にあったのだ。AirPodの重さはひとつ4グラム。両方合わせて8グラム。

Fitbitが告げる。歩行数は5,498歩、消費カロリーは825カロリー、睡眠時間は6時間、うち身動きしたのは8分のみ。Fitbitは、あなたの体調は良好と判断する。Fitbitはあなたの健康データを収集して、おそらく後日、それをあなたの保険会社に売り、保険会社はあなたの保険料を吊り上げる。それでも、自分の努力が注目されるのはいい気分だ。もう、決してひとりじゃない。Fitbitが切れ目なく放射する電磁場の流れが、常にあなたを周回する。緩やかな、だが着実な有毒性。




イーロン・マスク(Elon Musk)の考えでは、いつの日か人類はロボットの飼い猫になる。しかし、マスクの思考は逆方向だったかもしれない。人工知能が人類を時代遅れにするのではなく、おそらく、現在まで人類の中で休眠していたサイボーグ化への衝動を表出させるのだろう。眠りに就く前、シャワーを浴びる間、もはや装着技術が外されることはないだろう。ウェアラブル デバイスは第二の肌となるだろう。単に手元にあるとか、トレンドだというだけではない。ひとつひとつの動作、ひとつひとつの思考まで自動化し、記録し、分析し、最適化する付属物だ。脆弱性は、すっぽりと酸化スズインジウムに包まれる。当然、尖った角などなくて、GPS付き。



プライバシーという名目で指紋を提供するのは、ちょっとばかり奇妙な感じだ。だがスクリーンとほぼ同じ大きさまで拡大され、灰色で表示された親指の指紋の輪郭が、徐々に赤い線の渦巻きに変化して、自分の肌の上の線と合致するのをあなたは目の当たりにした。iPhoneは、あなたの体のデータを記録した後、細かく振動して飛び跳ねた。あなたと知り合えて、喜んでいる。Appleが拡大し続ける生体認証情報のデータベースは、あなたの身体を彼らのテクノロジーと結び付ける。おそらく、データはハッキングされるだろう。あるいは、第三者に漏洩するだろう。それは、あなたの国の政府かもしれない。あなたの皮膚の稜線が残す印は、闇ウェブで売買される。

- 文: Julia Cooper
- 写真: Myles Hall
- スタイリング: Felix Leblhuber
- モデル: Kye Howell / The Society