持続可能なスニーカー マニア、ショーン・ワザーズプーン
Round Two創設者、Nikeとのコラボ、ヴィーガンでトレンドを作る男
- 文: Olivia Whittick
- 写真: Sean Maung

この記事は、「環境と共存するファッション」特集の一環として書かれたものです。
ぽかぽかとした春の日曜日、メルローズ アベニューには気怠い午後の光が差し込み、のんびりとウィンドウ ショッピングする人たちが通りを埋めている。私はRound Twoのある一角に近づいていく。ショーン・ワザーズプーン(Sean Wotherspoon)が、幅広い人気を集める一連のショップをオープンしたこの一角では、人々のペースが変わる。ブランドのビンテージ ショップに入ると、賑やかな熱気が伝わってくる。人々は店内を歩き回っては、笑い声をあげ、熱弁をふるい、互いの服を褒め合い、ビンテージのNBAのT シャツや、O・J・シンプソン(O.J. Simpson)裁判の記念品を手に取っている。
私は、通りの向かいにあるグッズ ストアでショーンと会った。この店もメルローズのショップ群のひとつで、他にビンテージ ショップと「メイン ストア」がある。会って間もなく、私は、これほどポジティブな人には会ったことがないと思い始めていた。よく「良い感じのノリ」と言うが、実際、これほど曖昧に使われることの多い言葉もそうないだろう。その点、ショーンは人の良さを全身から発散しており、それは、まるでHouse of Intuitionで売られているクリスタルの発する光のようだ。
ショーンは、2013年にバージニア州リッチモンドでビンテージの服を集め始めた。彼のコレクションが増えるにつれ、コレクションに対する要求も高まっていった。個人コレクションは、保管用の倉庫を要するまでに増え、最終的に、それは小さな店になった。これがRound Twoの第1号店だ。今やアメリカ全土に5店舗を構え、現在もその数は増え続けている。年間売り上げは推定2000万ドル以上に達するほどで、ショーンはリサイクルで着実に生計を立てている。そのような中、ショーンは、植物を中心とした暮らしを掲げ、ファッション リーダーでもアニマル フリーで行けることを示しながら、環境に優しいサステナビリティの教義の普及にも努めている。「世界に借りを返すこと」。自らの戦略を振り返って、ショーンは言う。「それが俺のやろうとしてきたことだ。自分のやっていることが悪影響を与えていると気づいたら、俺たちにできる最善のことは、そんなやり方を捨て去る方法を見つけることだ」。今回ショーンは、どのようにして彼がバランスをはかっているのかについて聞かせてくれた。

オリビア・ウィティック(Olivia Whittick)
ショーン・ワザーズプーン(Sean Wotherspoon)
オリビア・ウィティック:どういう経緯でビンテージやリセールの世界に?
ショーン・ワザーズプーン:高校のとき、ずっとアウトレット モールで働いてたんだ。俺たちが好きだったのは、いつもPoloの新作やPolo Olympicの新作でね。ビンテージの店や古着屋もほとんどなかったし、俺たちが特に興味のあるものでもなかった。バージニア州リッチモンドに引っ越してから、ビンテージ ショップの存在を知った。カッコいいPoloの置いてある古着屋がたくさんあったんだけど、それがビンテージで、90年代や80年代のオリジナルだった。すっかりハマったよ。
そこからどのようにRound Twoに発展したのですか?
俺はどうにもモノを集めたり溜め込んでしまう癖があって、自分の趣味を続けるためにも、置き場所を作るためにも、モノを売る必要があると気づいたんだ。最初は、ビジネスにしたいなんて、思ってもいなかった。それが、少しずつリッチモンドでビジネスになっていった。最初は自分のクローゼットからFacebookページみたいになって、そこからレンタル倉庫になって、そのレンタル倉庫が小さなショップに姿を変えた。
つまり、ただ個人的趣味に必要なことをやっていくうちに、成り行きでこうなっただけと。
そう。そして、結果的には、それが、俺たちがリセールの世界に足を踏み入れるのに、正当な手段となった。

リセール市場って面白いですよね。現在は、奇妙な交差点を象徴してる。熱狂的なトレンドを引き起こすものでありながら、同時に再利用であるという意味では、従来の市場とは完全に異なっています。
それまで知らなかったことを教えてくれるし、表現のひとつでもある。今、起きていることを嫌いになるのは簡単だ。でも同じように、それを受け入れて、自分になじむ場所を見つけるのも簡単なんだ。
なぜ今、リセールはこれほど人気が出てきているのだと思いますか。『フォーブス』の記事で読んだのですが、そのうちリセール市場がリテール市場を上回ると予想されていました。
Round Twoはリセールだと言われるけど、俺はそれが嫌なんだよね。だって、俺たちが焦点を当てているのはモノを転売することじゃないから。店を始めたときも、「お、もっと高い値段で売れるものがあるぞ」って思ってたわけじゃない。いつだって、「俺たちは確かに、カッコいいものを持ってる。今までこんなモノを見たことのない人に、これを提供したい」と思ってやってきた。人が発見するのを眺めて楽しんでるんだよ。これは転売以上のものだ。それより、ずっとずっと意味がある。
今でも自分で積極的に古着を買いに行きますか?
あちこちに旅行することが多いから、別の会社との仕事があるときは、ありとあらゆるフリーマーケットや古着屋や、ビンテージ ショップに行くよ。
覚えている中で、これまででいちばんの掘り出し物、「大当たり」は?
いつでも話すのは、Tommyの帽子だね。Tommy Hilfigerが手がけたレーシング チーム、Lotusの帽子。20セントくらいで手に入れたんだけど、同じようなものが1000ドルか、それ以上で売れた。他の人はそれほど良いとは思わないようなモノなら、もっと見つけてる。でも俺自身は、「スッゲー!」って感じだよ。2週間前に100%コットンの90年代のNikeの短パンを見つけたんだけど、完璧な色落ち具合で、スウッシュの刺繍が入ってて。買った日からすでに何日も続けて穿いてて、6回は穿いてる。
完璧なダメージ具合と。
そう。ポケットのついた白無地のシャツに合わせると、完璧だ。

人々は、自分が着ているものや、その歴史について詳細に知ることに、以前よりはるかに関心がある気がするんですが、以前から重要なことだったのでしょうか?
いや、これまで重要だったことはないね。俺はNikeにいつも言ってたけど、消費者はかつてないほど考えるようになってる。背後に物語がない、何ら重要性がない、そんな商品は誰も欲しくないんだ。皆がこうした物語を求めているのは、素晴らしいことだと思う。
あなたが見つけたTommy Lotusの帽子がそうですが、おそらく、物語に由来する価値を理解できる人は、ごく一部だと思うのですが。
アイテムの歴史であれ、どこかの基金を支援するものであれ、何らかの大義があるものであれ、今の消費者たちは、こうした物語を良しとしている。そして見ての通り、数多くのブランドがそこに流れ込んでいる。それを嫌がる人がいるのも知ってるよ。「サステナビリティを利用しようとしている」と言ってね。でも俺は、「すばらしい、利用させてやれ」と思う。彼らが植物を中心とした取り組みにお金をつぎ込んでるなら、いいじゃないか。それが求めていたことだろ?
それに人々は、エシカルな意識の高いブランドの支持することに、とても盛り上がっているように見えます。
あまり敷居を高くしないようにするのが重要なんだ。人々にその選択肢を選んで、試してもらえるように。
リセールやヴィーガン スニーカーがカッコいいものになったことや、サステナビリティの敷居が下がった点については、あなたの役割は大きいように思います。
俺もそう思いたいよ。頑張ってるから。ブランドと仕事をするときは、自分のメッセージをはっきり伝えてる。気づいたのは、出てくるレザー製品の数がかなり減ったことだ。Nikeとadidasについて言えば、100%イタリア製レザーの商品に、もはやほとんど焦点を当ててない。本当に新たな領域に乗り出し始めてる。
すごくたくさんの植物由来の新素材がありますしね。
メッシュも未来の素材だし、パイナップル レザーなんて、嘘みたいだろ。こういうものが実現するするのを見るのは最高だ。

これまでに手がけたブランドとのコラボレーションについて聞かせてください。言うまでもなく、Nikeとコラボレーションしたコーデュロイのエアマックス1/97で、あなたのことを知った人が多いと思うのですが。
俺のNikeの靴は完全にヴィーガンなんだ。100%植物由来の靴で、その点を特に強調した。参加させてもらったコンサルティングの会議では、俺は毎回、「レザーをなくしてみよう。レザーの代わりに別のものを使おう。リサイクル レザーの使用だって避けよう」と話した。今、Guessと一緒にスニーカーを作っているけれど、それも完全にヴィーガンだ。全部メッシュだよ。それから、お揃いのトラックスーツも作ってる。ブランドが俺と一緒にやるというなら、植物由来の素材を使ったプロジェクトでないとダメなんだ。俺にとっての褒賞は、実際にこのメッセージを前面に出せるということと、ブランド側を強制的にそれに参加させられる点にある。
こうしたブランドがあなたを求めるのは、今現在、サステナビリティが非常にトレンディなせいだと思いますか?
声をかけてきたブランドは、ほぼすべて、靴を作って欲しいと頼んできた。ブランド側は絶対に、「これをカッコよくするの手伝ってるんだろ。うちのこれをカッコよくするのも手伝ってくれよ」という感じで、接触してきてると思うよ。俺が一緒に仕事がしたいと思うような共通の価値観をブランドが持っていて、植物由来のヴィーガン製品に少しでも良い影響があるように、ブランドのプラットフォームを使える方法がわかれば、俺は真剣にやる。
植物由来の製品を基本にした生活を始めてどのくらいに?
6年目くらいかな。当初、数ヶ月間はベジタリアンだった。それから、やるなら徹底してやらなきゃダメだと気づいた。フィアンセがこういうのにすごく力を入れててね。彼女が俺に知識を与えてくれ、おかげで、なぜそれが良い選択なのか気づくことができた。
あまり敷居を高くしないようにするのが重要なんだ。人々にその選択肢を選んで、試してもらえるように
お子さんもビーガンで育てているんですか?
うん、生まれたときからだ。息子もたくさんのビンテージの服を着てる。新しい服なんて買ってやったことないな。
私もビンテージの服の1着あたりのコストを考えると、すごく楽しくなります。1着あたり数セントですからね。
本当に楽しいよね! 俺の着る服の組み合わせで、たぶんスニーカーは100〜200ドルするけど、ショーツはラグハウスで買って5ドル、シャツもラグハウスで16ドル、みたいなのがいくつかある。それを写真に撮ってInstagramにアップすると、皆が「くそ、いつかこんな服が着れたらな」みたいな反応なんだ。
若い子たちが、自分の服がどのくらいの値段がするか得点を計算する動画がありますが、あれは何なんでしょうね。「君の服はいくら?」ってやつです。
ああ、あれね。見たことある。合計を数えるやつだろ。俺もやってみたいよ。「靴:100ドル、パンツ5ドル、シャツ16ドル!」ってね。
若い人たちが、あそこまで極端に即物的なのを見ると、不安な気持ちになります。持続可能なファッション業界とは、一体どんなものでしょうか。
理想のシナリオで言えば、持続可能なファッション業界というのは抑制と均衡が働くようなものだ。完全な透明性もある。完璧な世界が実現可能だとは思わないけれど、80%くらいならできるはず。植物由来の商品を提供する。しなくちゃダメだ。ブランドを多角化しようよ。その方が儲かるのに、やらないなんて、まったく道理に合わない。

これだと、本当にブランドに強制できるのは消費者のような気がします。
消費者はあらゆるものをコントロールできる。その力は紛れもないものだ。だからブランドは大慌てで何かサステナブルなことをしようとしてる。それが現に起きていることだよ。誰もが借りを返さなければと気づいている。俺たちは地球には借りがある。手遅れになる前に、自然に対して負っている払うべきものを支払わなきゃ。
ブランドが、たとえ個人や政治、感情のレベルでは気にかけていないとしても、金銭的には間違いなく気にかけているはずですからね。
感情的に気にかけさせることができないなら、金銭的に気にかけさせればいい。それがやるべきことだよ。
Olivia WhittickはSSENSEのエディターであり、「Editorial Magazine」のマネージング・エディターも務める
- 文: Olivia Whittick
- 写真: Sean Maung
- Date: July 25, 2019