D’heygereとZ世代のダダイズム

アクセサリーとオブジェのためのレッスン

    「ミズ・ディジェールは言った。花は私が買ってくるわ」。(そして、花を持ち運ぶためのジュエリーをデザインした。)

    パリを拠点に活躍するベルギー生まれのデザイナー、ステファニー・ディジェール(Stephanie D’heygere)。これまでMaison MargielaDiorY/Projectのジュエリー部門でキャリアを積んできた彼女が、ありふれた日常を讃える、美しいオブジェの数々を作り出す。彼女の世界では、美のために実用性が犠牲になることは決してない。フォルムは見事なまでに機能と衝突し、ときにはそれを黙認しさえする。こうして誕生したのが、思いがけない印象のラグジュアリーだ。身につければ気持ちが華やぎ、常に「話の種」と呼ばれるのがふさわしいアイテム。ルイス・キャロル(Lewis Carroll)的なバランスで遊ぶアイテム。かの有名なダリの晩餐会で、誰かがつけていそうなアイテムだ。

    デザイナーの名を冠し、昨年のパリ ファッション ウィークでデビューを果たしたD’heygereは、シュルレアリスムとロマンスの要素に、類似した要素や突飛な要素を結びつける。彼女のデザインは着ける者に働きかける。収集癖のある現代人のために作られたオブジェなのだ。ピアスは花瓶やシガレット ホルダーを兼ねている。なんなら、ラブレターやTo Doリスト、クリーニングの預かり伝票などを巻いて入れてもいいだろう。ベルトはただのベルトではない。ジーンズに白のTシャツだけでは新鮮味に欠ける気がするときは、こうしてトロンプ ルイユを追加できる。ベルトにはポケットがついているので、これをつけると手ぶらで出かけたくなる。ストラップ付きの口紅用ホルダーはネックレスにもなり、あるいは逆に、ネックレスが口紅用ホルダーになる。また、チャームのついたネックレスは、日中に口紅が取れていないか確認するための、鏡ケースの役割も兼ねている。ペンはキーホルダーであり、そのペンはBicの伝統の4色ボールペンであり、しかもプレゼントだ。箱に入って売られている。

    D’heygereのアクセサリーは、購入したものは何でもInstagramに投稿せずにおれない、記録衝動に取り憑かれた世代にはうってつけであり、この世代を狙って作られている。つまり、これらのオブジェは、こうした衝動に合わせてデザインされており、このような衝動にもとづいて作られているということだ。バケット ハットはハンドバッグに作り直される。リングケースはイヤリングだ。ウェストポーチにはキャリー ハンドルがついている。何もかもが「外出用」でありながらも、私的であり、非常に思慮に富んでいる。何もかもが抽象的であるか、あるいは逆に限定的なたったひとつの用途に特化しているか、あるいはまったく別の、何か不条理なものだ。(笑)のジュエリー。すべて兼用可。コンマリがデュシャンと出会ってしまったかのように。

    画像のアイテム:キーチェーン(D'heygere) 冒頭の画像のアイテム:ピアス(D'heygere)ピアス(D'heygere)