ヴェロニカがひとり過ごすパリの昼下がり

昼間のモンマルトルの自由放任主義の魅力を、ベネディクト・ブリンクとユージェニー・ダランが捉える

  • 写真: Benedict Brink / Lock Artists
  • スタイリング: Eugenie Dalland

「Phantom Ladies Over Paris(パリを駆ける幻の女たち)」。これが、パリの魔法の世界を舞台に延々とループを繰り返すドタバタ劇、『 セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974) の原題につけられた副題だ。監督は、フランスのヌーヴェルヴァーグの草分け的存在、ジャック・リヴェット(Jacques Rivette)である。名前に違わず、この副題は映画の幻のタイトルのような働きをしている。不気味な字幕が示唆する、『不思議の国のアリス』的な幻覚を見ているかのような物語。これは本質的に、ふたりの女性が主演の2本の映画である。映画の中の映画。現実と非現実。その結末は、監督とふたりの主演女優の言うところの、甘美な放棄、倦怠、急速に発展する新たな関係、私たちが没頭できるような幾層にも折り重なった世界を作り出してしまう好奇心、そして究極の逃避である。

SSENSEエディトリアルのため、フォトグラファーのベネディクト・ブリンク(Benedict Brink)とスタイリストのユージェニー・ダラン(Eugenie Dalland)が、リヴェットの『 セリーヌとジュリーは舟でゆく』に登場するパリ18区へと繰り出し、私たちがただ時間をつぶすために自らの思考の殻に閉じこもったり、空想世界をでっち上げてそれに合ったドレスを選んだりするとき、どんなシーンが見られるかをカメラで捉えた。現実離れした気だるさを少し感じる。シンクに溜まった皿はそのままに、ピルエット アンデオールとピルエット アンデダンの練習をする。あるいは、床の上で意識が朦朧とする中で死体のふりをする。

誰にも見られていないとき、私たちは何をするのだろうか。もっと言えば、誰かに見られている「ふり」をしているとき、私たちは何をするのだろうか。

モデル着用アイテム:ドレス(Calvin Klein 205W39NYC)ベルト(Isabel Marant) 冒頭の画像 モデル着用アイテム:セーター(The Elder Statesman)ブリーフ(la fille d’O)

モデル着用アイテム:トレンチ コート(Prada)スニーカー(Marni)

  • 写真: Benedict Brink / Lock Artists
  • 写真アシスタント: Alexey Blagutin
  • スタイリング: Eugenie Dalland
  • スタイリング アシスタント: Claire Merie
  • モデル: Veronica / Viva Model Management
  • キャスティング ディレクター: Clare Rhodes / Casting by Us