マイケル3世式 男らしいサンダルの履き方

GucciからGanryuまで、今シーズン注目のフットウェアを分析する

    男の足元について、オレはこれまで無関心だったと認めざるをえない。だが、彼らがサンダルを履いているとなると、オレの興味は一気に高まる。大抵フェザーで装飾されている帽子に次ぎ、サンダルは、最もきらびやかなメンズ ファッションのカテゴリーだ。サンダルの種類には魅力的なものが多い。ビーチサンダルは、Tバックの意味の「トング」の名で呼ばれることもあれば、ペタンペタンと音がすることから「フリップ フロップ」とも呼ばれる。ミニ サイズのサンドイッチの意味もある「スライダー」は、響きからしてかわいらしいし、「ミュール」には英語で、種族を超えた愛により生まれた動物、ラバの意味もある。オレにとって男性用サンダルは重要な心の拠り所、足元から夢中にさせてくれる、まさにハート & ソールなのだ。これでも説明が足りないなら、稀につま先とつま先の間を吹き抜ける風以上に、極上の愉悦を感じさせてくれるものはない、とでも言えばよいだろうか。少なくとも、今ここで言及しておきたいと思うものは何もない。

    とはいえ、厳密に「男のサンダル」とは何だろうか。それがどういうものであれ、支持者からも反対者からも注目を集めているようだ。「男の」サンダルに対する批判は、物陰に潜んでいるのでなければ、声高にあちこちで表明されている。作家で、何に対しても批判的なことで知られるフラン・レボウィッツ(Fran Lebowitz)は、2012年に『ザ・ストレンジャー』紙で、「いいこと、サンダルに関しては、男性用あろうが女性用であろうが、同じように反対と言わざるをえない。特に男が履くサンダルは最悪」と言っている。メンズ ファッションの象徴、トム・ブラウン(Thom Browne)は、「絶対ないとは言わないが、私はサンダルを履かない」と話しており、トム・フォード(Tom Ford)は、『ピープル』誌に「街の中でサンダルを見ると、はらわたが煮えくりかえる」と話している。ジャスティン・セロー(Justin Theroux)は、『インタビュー』誌の中でエイミー・セダリス(Amy Sedaris)に「サンダルを見ると気が滅入る」と話している。こんな発言は大したことないと思ったなら、ちなみに彼はその後、こう続けている。「男の足が露わにするものなら何であれ…」。彼の言葉は余韻を残してここで切れているが、この時、彼がどういう言葉を続けようとしたか、オレにはわかった。

    ただ、ジャスティン・セローはサンダルについて何も知らなかったのではないか、と思わずにはいられない。1960年代頃になって初めて、現代のメンズ ファッションにおける重要な位置を占めるようになったとはいえ、発掘された世界最古の履きものから見るに、実際、人類最初の靴はサンダルだったのだ。まとめて保管された大量のサンダルが発見されたのはオレゴンのど真ん中だった。なぜそれがそこにあったのか、オレには知る由もないが、多分、古代の靴フェチのものだったのだろう。あるいは、先史時代の「サンダル ハット™」のオーナーのものだったのか。あるいは、ただの昔の—いや、古代のキャリー・ブラッドショーが、一生かけて集めたものだったのかもしれない。1万3000年前のサンダルはヤマヨモギの草を編んで作られていた。それははるか昔、地球が、予期せぬ(これは断定できる)温暖化時代を経験していた時代のものだった。この温暖化は、少なくとも人間には望ましい出来事で、これによって最初の文明や農耕、牧畜、そして何よりも重大なことに、サンダルが誕生した。つまりは、サンダルは人類にとって最もクラシックなフットウェアなのである。つま先が埃っぽい? それがどうした!

    オレがサンダルを履くときは、一緒にゴールドのトゥリングと、繊細で凝った造りのチェーンのアンクレットもつける。足だってアクセサリーで飾られるべきだ。通りがかりの人がオレの流行を意識したつま先に見とれていたら、足の指をもぞもぞと動かしてやる。オレ流の足のウインクだ。どちらかというと注目されるのが好きなオレは、かかとについては、選び抜いた保湿剤で手入れしたり、さらに先を見越して、より効果の高い角質ケアをしたり、抜かりない。足の爪も短く切りそろえている。足の爪切りなんて、手の爪を切るのと同じで難しくもなんともない。そして足の指がサンダルで隠れていない場合は、デリケートな指毛を前に向けて梳かしている。ちょっとジェルをつけて後ろに流したり、結んでミニ ポニーテールにしたり、尖った雰囲気を出すために短くしたりする人もいるだろうが、そこはお好み次第だ。

    昨今というか、今シーズンは(オレはファッションのシーズンを基準に時間を考える)、とりわけ「メンズ向け」として、刺激的な要素の詰まった厚底サンダルが多く見られた。たとえば、Gucciのブラック Tinsel サンダルは、シルエット、スポーツ風ストラップ、カラー、素材、そのどれもがスニーカーを思わせる。ただし、この生足の見えるカットアウトが、スニーカーより断然セクシーだ。Fumito Ganryuの、「透明チューブ」のような素材でできた優美なサンダルもある。そして、頑丈でギザギザとしたソールに、ソフトな色合いを合わせたDries Van Notenのようなサンダルもある。足を包み込む、すべすべとした黒一色のRick Owensのサンダルには気品が漂う。求めているのは風通しだけというなら、Eytysのサンダルだ。厚底に目立つストラップ、スタッドと、このサンダルはブランドを代表する特徴的な要素をすべて備えている。部分的に、覆われている部分が若干少なくなっているだけだ。オレよりも控えめな人には、Maison Margielaの、エナメルレザーを使ったフルカバー サンダルがある。カラーは白と黒があり、ジョージ王子の報道並みに隅々までカバーされている。非常にエレガントなサンダルなので、ケーリー・グラント(Cary Grant)が、1935年に撮影されたあの有名な写真の中で履いているところを想像する人もいるだろう。噂の「ルームメイト」、ランドルフ・スコット(Randolph Scott)と一緒に写った、満面の笑顔と快活さ溢れる、例の写真だ。

    それにしても、自分自身を始め、2019年に生きる誰かを、本来の意味で「メンズの流行」の裁定者と考えるのは、恐れ多いことだ。母親のチューブトップを着ていた、あのかわいい少年に一体何が起きたのか。気をつけないと、彼は今にも、暇になるとバスケットボールのランク付けをして、カフスボタンに一家言持つようになるだろう。そしてある日突然、彼は見知らぬ部屋で、眠ったままアンクル ソックスを片付け始め、流さないタイプのヒゲ用コンディショナーについてブツブツ言う自分の声で、ようやく目を覚ます。その目には月の光がおぼろげに輝いている。彼は『エスクァイア』派か、それとも『GQ』派か? そもそも違いはあるのか? それもすぐにわかるだろう。

    それでもなお、男のサンダルというものが存在するなら (オレは現に存在すると思うが)、そこにはまた、男らしいサンダルの履き方が存在するに違いないという思い込みがあるということだ。オレは、そのようなものは存在しないと思っているのだが。

    「男らしく」サンダルを履くには、最低でも1足のサンダルを所有していなければならない。人間であることも役立つはずだ。人間でない場合も、「男らしく」サンダルを履くことは可能なはずだが、それにはより困難が伴うだろう。魚の場合は、ほぼ不可能だ。いずれにせよ、すべてのサンダルが防水というわけではない。大型の鳥なら履けるかもしれない。なので、これからは空から降ってくるクロッグ サンダルには要注意だ。もし君がトサカのあるサルや、その他の霊長類なら、「男らしく」サンダルを履くのに何ら問題はないだろう。だがデザイン上、最も成功の確率が高いのはホモサピエンスのはずだ。気に入った詩を鏡の前で朗読しながら自分の顔をつねってみるか、単純に本人確認のための証明書をチェックして、自分が人間であることと、サンダルを履く準備が整ったことを確認したら、靴紐でも、バックルでも、ストラップでもリボンでも、何でもいいので必要な手段で、サンダルを自分の足に固定しよう。これらが付いていない薄っぺらな革1枚では、とてもサンダルとは言えない。バカだな、「男のサンダル」じゃなきゃダメだ。最後に、それなりの時間、サンダルを履いていなければならない。とりあえず1分以上は必要とだけ言っておこう。これで、「男らしく履くサンダル」は完成だ。

    ここまでくれば、他にもこれに匹敵するサンダルの履き方があることに、君は気づいているかもしれない。「女らしい」サンダルの履き方、「子どもらしい」サンダルの履き方、「男でも女でもないノンバイナリーらしい」サンダルの履き方、「美術教師らしい」サンダルの履き方、「早春らしい」サンダルの履き方、「ジムのシャワーでうつった水虫のせいで夏っぽく見えない」サンダルの履き方などなど、挙げていけばきりがない。

    先に挙げた批評家たちの発言からもわかるように、カテゴリーとして、メンズ サンダルは嫌悪の対象とみなされることが多い。場合によっては、それも妥当かもしれない。だがほとんどの場合、それはその人の足の状態に対する意見や、さらに愚かなことには、その人の男らしさに対する意見でしかない。以前、ジェイ・Z(Jay-Z)がサンダルを履いているのを見たDMXが「サグはサンダルなんか履かない…、俺は家の中でだって履かねえよ」と宣言していたが、残念なことだ。オレが通うカフェの、38歳で完全にゲイのバリスタは、「もし付き合っている男がサンダルなんか履いていたら、そのサンダルは切り刻んでやる」と言っていた。いい彼氏じゃないか。しかも、こんなことをいう当人は、オレの名前を「ゲスのマイケル (マイケル・ザ・タード)」だと思っているのだから、そろそろオレは自分でコーヒーを入れる時かもしれない。

    男のサンダルとは、あらゆるタイプの開放感のある靴で、長さが20cmから45cm程度のものをいう。これが男の足に適したサイズのはず、ということか。男の足でも、女性用サンダルがぴったり合うかもしれないし、自分は男でも女でもないと感じていても、男のサンダルを履くことはできる。ルールなどない。ただし、足の爪は切っておくように。

    Michael the IIIはモントリオールを拠点に活動するライター兼フォトグラファー。『Gayletter』、『Document Journal』、『THEFINEPRINT』など多数に執筆している

    • 文: Michael the III
    • 翻訳: Kanako Noda