マイケル3世式
トラベル ファッションの手引き

SSENSEの公式ジェット セッターに学ぶ、
世界を股にかけて注目を集める方法

  • 文: Michael the III
  • 写真: Michael the III

旅行の世界には「お荷物検査」というものがあるが、人生のお荷物を省みる自力救済の癒しとはまったく無関係って知ってたかい? 「カスタム」ってのは、楽しい習慣じゃなくて、持ってるものを調べられる場所だって知ってたかい?「何か申し出ることはありますか?」って尋ねられても、「君の顔の形には違う髪型の方が似合うんじゃないかな」なんて答えちゃいけないって、知ってたかい? 旅は侮辱に次ぐ侮辱だ。見ず知らずの人たちの面前で眠る。公衆の洗面台で手を洗う。どこかの餓鬼の顔に涎を垂らす。それでもなおかつ、オレはある種の華やかな魅力を発散することができた。人はそれを「楽勝」と表現するかもしれない。オレは「天与の賜物」と呼ぶ。

もう、オレに刺激を受けたかな? まあ、いいさ。まだほんの序の口だから。

オレは、ギリギリになるまで荷造りしないんだ。慈善ボランティアの仕事とかオレのブランドに磨きをかけるとか、もっとやらなきゃいけないことがあるから。誰でもグズグズ先送りにするもんだし、オレも例外じゃない。そして普段以上に先延ばしするときは、快適で伸縮性のあるウェアを選ぶ。YouTubeでタップダンスを習うために費やしたオレの時間は、戻って来ないかもしれない。だが少なくとも、オレは前へ進むことを知っている。尻の筋肉を鍛えすぎて裂けた縫い目を修繕するような、そんな無駄な時間は一刻たりともない。

旅は侮辱に次ぐ侮辱だ

空港のセキュリティ検査に備えて、機内持ち込みの手荷物のいちばん上には必ず「オモチャ」を詰めておくこと。誰しも、自分のセクシャリティをつまびらかにする責任がある。必然的に政治的でもあるメッセージを発信した後は、トイレへ行って、飛行中に遂行したいことをきちんと伝達する適切な装いを整える。柔らかい帽子は、「どこまで?」とか「仕事は何?」なんて嬉しい質問に返事を返す気分じゃないとき、顔を隠すのに便利だ。お楽しみが欲しいときは、クロッグ サンダルを履いた足を通路へ突き出して、コツコツ3回音を立ててからサンダルを脱ぎ、足の指の間にカーネーションを挟んだ後、好きな色のバンダナで固定する。これで送信完了。後は、トイレで待つだけだ。でも、オレも大抵そうだけど、美容のために睡眠を選ぶ場合は、ゆったりとした服とそれに適した帽子を選ぼう。実は右隣にハンサムがいて、おまけに左足には薄いブルーグリーンのハンカチが巻いてあったけど、オレは寝ることを選んだ。寛容力がなさそうだったし、正直に言うと、ちょっと自己中みたいだったから。

空港のセキュリティ検査に備えて、機内持ち込みの手荷物のいちばん上には必ず「オモチャ」を詰めておくこと。誰しも、自分のセクシャリティをつまびらかにする責任がある。必然的に政治的でもあるメッセージを発信した後は、トイレへ行って、飛行中に遂行したいことをきちんと伝達する適切な装いを整える。柔らかい帽子は、「どこまで?」とか「仕事は何?」なんて嬉しい質問に返事を返す気分じゃないとき、顔を隠すのに便利だ。お楽しみが欲しいときは、クロッグ サンダルを履いた足を通路へ突き出して、コツコツ3回音を立ててからサンダルを脱ぎ、足の指の間にカーネーションを挟んだ後、好きな色のバンダナで固定する。これで送信完了。後は、トイレで待つだけだ。でも、オレも大抵そうだけど、美容のために睡眠を選ぶ場合は、ゆったりとした服とそれに適した帽子を選ぼう。実は右隣にハンサムがいて、おまけに左足には薄いブルーグリーンのハンカチが巻いてあったけど、オレは寝ることを選んだ。寛容力がなさそうだったし、正直に言うと、ちょっと自己中みたいだったから。

着用アイテム 帽子(Gucci)

着用アイテム サングラス(Kuboraum)

着用アイテム シャツ(Saint Laurent)

さて目的地に到着して、現地の人たちを眩惑するときがきた。ここで、国に残してきた元カレたち、遠く離れていても気配りの必要な愛すべき崇拝者たちを忘れてはいけない。時間の余裕をもってパリの街を練り歩いた後は、彼らがいなくてどれだけ楽しんでるかをオリジナルの絵葉書にして送ろう。いわばSnapchatの原型だ。とことん自分の姿を強調すること。現実的になろう。今更エッフェル塔を見たいなんて奴なんかいないさ。見たいのは、エッフェル塔へ行ってるオレの姿だ。

そもそもオレは
この船のキャプテンか?
そんなことはどうだっていい。
ともかくオレはそう見える

もっとも古い手段で旅するのも悪くない。そう、船だ! オレの場合は豪華客船! 社交的に(同時に禁欲的に)飛び回るオレみたいな人間が長旅に出るには、大海原のロマンスを引き寄せるにふさわしいアンサンブルを持参すべきだろう。普通オレは、自分を偽るようなことは絶対しない。だけど、背に腹は変えられないし、キャプテンなくして海が勝手にクルージングしてくれるわけでもない。だけど、そもそもオレはこの船のキャプテンか? そんなことはどうだっていい。ともかくオレはこの船のキャプテンに見える。もし航海が突然アガサ・クリスティの小説のようになったら、ニセモノのキャプテンも魅力的な登場人物のひとりだ。服装を使った戦略にわずかな幸運があれば、オレのように、出会いに恵まれるかもしれない。可愛いくて、獣医の遺産の相続人で、獅子座がアセンダントの乙女座。オレにぴったり。3日後に別れるときは「絵葉書を送るよ」って言ったんだ。

飛行船やホバークラフト、宇宙船やバンパー カー、おまけにふたり乗り自転車みたいなイノベーションの世界で、列車の旅は全く(文字通りではないが)徒歩旅行に等しい。実際には、列車はとても平穏な旅行手段だ。ただし、正しい乗り場に辿り着ければの話だ。どっちへ向かえばいいかと駅を彷徨う時間を最大限に快適に過ごすために、オレは通気性のあるものを着たい。例えば、下着なしで、素肌にニット。レンズがバラ色のサングラスはストレスを隠してくれるし、ストレスの軽減にも役に立つ。本物のお荷物がある場合は、誰かの肩を叩いて、お荷物を指して「オレのベイビーを見ててくれる?」と頼む。上手くいくかもしれないし、いかないかもしれない。でも、上手くいく可能性はある。そうやって列車に乗って、隣り合った乗客の座席の下まで足を伸ばして、快適に腰を据えてみれば、オレはカイロ発香港行き列車の乗客だった。「どうやって?」と聞かれても困る。とにかく、そうだったんだから。

香港に着いた後は、Instagramで何ヶ月もチャットしてたチワワに会える時間があった。疑問を感じてる人には教えるけど、最初にDMを送ってきたのは向こうの方。その後、飛行機で最終目的地のローマへ飛んで、数週間滞在して、このガイドのためにメモをまとめた。帰りのフライトでは、大したことは起こらなかった。ただ赤ワインを飲み過ぎちゃって、満席で逃げ場のない観客を前に、「セル ブロック タンゴ」をきっちり最初から最後まで披露した。そんなパフォーマンスを演じた後の服装は、絶対、謎っぽくなきゃダメ。できるだけ時差ボケの現実を隠すこと。手荷物受取所で2番目に好きな元カレの庭師に出くわすのは必至だし、世間が庭師について言ってることは正しい。すなわち、種を扱う人間は噂話を撒き散らす。さて、人混みから抜け出したら、重ね着を1枚ずつ脱ぎ捨てながら、人生の太陽の元へ、愛する我が家へ戻ろう。

いい香りが漂う神聖な寝室に落ち着いたら、旅のあいだに起こったすべての出来事を思い返してみてもいい。オレが自宅に戻って、今は誰が船のキャプテンをやってるんだろう? あのハンサムは、結局、飛行機で欲しがってたものを手に入れたかな? 持って帰ったGucciのローリング バッグは、11個だったっけ? 12個だったっけ? 次はどこへ行こう? アマレットをすすりながら、いちばん近くにある鏡を凝視めれば、安堵が訪れる。そういう疑問には答えなくても、旅行の間ずっと、オレがすごく素敵だったことに疑問の余地はないから。

着用アイテム ジャケット(Balenciaga)

  • 文: Michael the III
  • 写真: Michael the III
  • モデル: Michael the III
  • スタイリング: Michael the III
  • ヘア&メイクアップ: Michael the III