OAMCは正道を歩む
SupremeとCarhartt WIPを経験したビジネス パートナーが、ミラノとパリで取り組む新たな基準
- インタビュー: Gloria Cardona
- 写真: Angelo Baque

パリとミラノを拠点として2014年にスタートしたOAMCは、創意に富んだメンズウェアで瞬く間に悪名を馳せたブランドである。すなわち、伝統的な高水準の職人技を守りながら、ヒップホップとミリタリーの融合をグローバルなレンズで濾過したスタイル。デザイナーのルーク・メイヤー(Luke Meier)のビジネス パートナーはアルノー・ファー(Arnaud Faeh)だ。創設者の2人は、いずれも立派な経歴の持ち主である。メイヤーはSupremeのヘッド デザイナーだったし、ファーはCarhartt WIPのクリエイティブ ディレクターだった。こうした土台があるにもかかわらず、メイヤーは新しい挑戦が「ラグジュアリー ストリートウェア」として分類されることを危惧する。「現代が仲間同士で派閥を作ることで幅を利かせる時代だってことは知っている。けど、僕たちはレッテルを貼られないように用心してるんだ」
OAMCが表現するもの、そして仲間集団の意見に耳を傾ける大切さを理解するために、グロリア・カルドナ(Gloria Cardona)がルーク・メイヤーと対話した。

グロリア・カルドナ(Gloria Cardona)
ルーク・メイヤー(Luke Meier)
グロリア・カルドナ:OAMCはまだ比較的新しいブランドですが、メンズウェアに対する新しいアプローチがかなり噂になってます。まだ知らない人のために、ブランドの説明をお願いします。
ルーク・メイヤー:OAMCは、僕のとてもパーソナルなプロジェクトなんだ。僕たちの顧客も、いろいろな意味で、かなり僕に似てる人たちだろうと思う。ブランドを始める前、完全なストリートウェアと現在のいわゆるラグジュアリーのあいだにギャップがあることに、アルノーと僕は気付いてた。そのギャップが本当に埋まったことはないんだ。スタイル的にも美学的にも、ストリートウェアとラグジュアリーのあいだには、僕をインスパイアするものが何もなかった。だから、丁寧に作られていて、なおかつ自分に響くものが欲しかったわけ。
デザインするときに、頭に浮かぶ特定のミューズがいますか?
まあね。OAMCはかなり自伝的なブランドなんだ。どんなものを着たいか、何に興味があるか、アルノーと僕は色々なことを沢山話すから、デザインはいつもすごく個人的なところへ戻って来る。僕の友達には素晴らしいスタイルやセンスの人が多いから、特定のデザインを気に入ってもらえるかどうか、考えることも多いよ。だけど、仮想の人物とかセレブリティを思い浮かべることは、絶対ないね。


個人的な体験がデザインに反映された例は?
OAMCは、基本的に僕の興味を表現する手段なんだ。標高8000メートルの山頂を目指す人に必要な衝動について考えたり、マサイ族がイギリスのタータンチェックを使ってライオンを遠ざけることを思い出したり。どっちも、いつだったか、ブランドに取り入れたコンセプトだよ。


OAMCを始める前はSupremeのクリエイティブ ディレクターでしたね。その経験で、いちばん勉強になったことは?
SupremeやSupremeの内側のことは、よく聞かれる。僕があそこで学んだのは、自分がクールだと思うことをやれってこと。トレンドとかマーケットが指図する方向なんかは、無視しろってこと。自分が本当に好きなことをやってるときは、ある種の真実、誰にも真似できない何かが伝わるんだ。Supreme時代、大切にしてたのは親しい仲間の意見だけ。「これは東京かパリで人気になるかもしれない。だからやろう」なんて、まったく考えなかったね。絶対、仲間のサークルから外れなかった。
OAMCはパリとミラノを拠点にしています。2つの都市を選んだ理由は?
パリは僕たちがデザインする場所で、ミラノは開発や製造の場所。多分、僕たちの商品の90%はイタリア製だよ。
でも、ショーはパリですね。どうしてですか?
パリのほうが、既存の大手ブランドとOAMCの対比をはっきり示せるから。特に、有名ブランドと同じ日に僕たちのコレクションを見せるチャンスがあるときはね。もちろんミラノにも伝統ブランドや有力ブランドがあるけど、パリでショーを開くことはずっと僕の夢だったし。
自分が本当に好きなことをやってるときは、ある種の真実、誰にも真似できない何かが伝わる

OAMCはストリートウェアと有名ブランドのギャップを埋めるという話でしたが、あなたたちのデザインは全部、ValentinoやTom Fordと同じ製造拠点で作っていますね。
僕たちは手抜きなんてしないよ。僕たちがやってることはすべて、今名前が出たどちらのブランドにも引けを取らない。スタイルの点では、「ストリートウェア」のレッテルは遠慮したいね。最近は「ストリートウェア」って言葉が使われ過ぎだから。やたら「ラグジュアリー ストリートウェア」って言葉を使う人もいるけどけど、ちょっと不足だな。ストリートウェアの初期のショーン・ステューシー(Shawn Stussy)に使うなら分かるけど。彼はおそらく、どのハイブランドのクリエイティブ ディレクターよりも教養があって頭がいいし、センスもトップクラスだ。僕たちのブランドも、新しいことをやってるブランドとして受け止めて欲しい。ただのグラフィックやナイロン ジャケットを作ったりはしないけど、退屈なものも作らない。
いつか自分のショップをオープンしたいそうですね。OAMCのショップが最初に登場するのは、どの都市でしょうか?
核になる場所から始めないといけないから、おそらくパリが最初だろう。組織全体に近いほどいい。だから、先ず本拠地で成功してから、他の場所へ進出することが大切だ。

顧客体験の視点から、ショップが新たに与えるものは何ですか?
みんな「時代精神」なんて言葉を使うのが好きだけど、自分の全世界を見せることができて初めて、そんな話をする資格があると思う。コレクション全体の雰囲気を感じてもらえることが重要なんだ。外側からはまだ見えていないレイヤーが沢山あるから。皆が皆、細部にまで徹底的に理解する必要はないけど、顧客にはそういう選択肢も用意したい。通りすがりの人が僕たちのショールームに入ってみたら、きっと驚くと思うよ。

- インタビュー: Gloria Cardona
- 写真: Angelo Baque
- モデル: Kevin Baque