海賊素材のオリジナル
スカルとクロスボーンは不朽のモチーフ
- 文: Ben Perdue
- 写真: Rebecca Storm
時は1700年、カーボベルデ諸島沖でフランスの海賊と小競り合いになったイギリス人船長が「クロスボーン(交差した骨)」と「スカル(髑髏)」の目撃を書き残した。今まさに攻撃を仕掛けようとする海賊が掲げる旗「ジョリー ロジャー」に関する最古の記録である。以来、海賊旗は反逆を意味する。メッセージは至ってシンプル。降伏か、死か。しかし、それはまた、生き急ぎ、若くして散り、一切の情け容赦を持ち合わせなかった者たち、すなわちマガジン032cが「荒海の近世パンクス」と形容する海賊たちの友愛旗でもあった。さすがに現代では直截な暴力や死と結び付くことはないものの、現代カルチャーにおいてなお、髑髏と交差した骨は自由と反逆の表象であり、象徴としてのパワーはいささかも失われていない。
旗の意味するところが展開するにつれ、海賊行為そのものに対する一般的なイメージも変化した。略奪や強奪行為は鳴りを潜め、権威に対する残忍性の薄い挑発や、被害者の曖昧な犯罪行為が浮上してきた。インターネットの自由やデジタル界の住人たちの人権を要求し、ヨーロッパの反緊縮運動に同調する政治団体、ドイツ海賊党は、まさに海賊のスピリットを呼び覚ます。反著作権の姿勢を公言する悪名高いビットトレントのサイト、パイレーツベイ(The Pirate Bay)もまた然り。ロゴのガレオン船には、髑髏をカセットテープに置き換えた海賊旗が翻る。
メタル、パンク、ヒップホップはすべて、音楽による反乱を掲げて、スカルとクロスボーンの下に結集してきた。しかし、海賊と海賊旗をもっとも目に見える形で使ってきたのはファッション界だ。1981年にユニセックスな海賊がモチーフのコレクションでデビューしたヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)とマルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)から、Powell Peralta(スケートボードのパイオニア ブランド)の伝説的なボーンズ・ブリゲード・チームのスケートウェア、今やAlexander McQueenのシグネチャとなったスカル柄まで、海の男たちの反逆精神は遊び心やロマンスの要素で緩和されてきた。
1日24時間絶えず監視される規制過剰な日常で、官僚社会への不満を表明するンボルはかつてないほど魅力的だ。海賊旗は、マストで翻っていようがいまいが、いまだに私たちの血をたぎらせる威力を発揮する。

スカルとクロスボーンは、長年ロックに登場してきたお馴染みのイメージだ。Givenchyのバックパックは、英国のメタルバンド、アイアン メイデンのアートワークに必ず顔を出すマスコット キャラクター「エディ」を連想させる。さらに、アイアン メイデンのグラフィックを忠実に再現した、角ばったフォントも登場している。80年代メタルの古典スタイルは、長髪の反逆児を過去に捨て去り、リュクスなスポーツバッグに反抗的なエッジを効かせている。


「士気が上がるまで、鞭打ちを続けるぞ」。イギリス海軍武装船の悪名高きブライ船長が発したとされるこのセリフは、皮肉にも、今日の反緊縮運動に武装を呼びかける言葉に聞こえる。先ごろ「032c」マガジンが組んだコレクションは、英領ヴァージン諸島への旅にインスパイアされている。何を隠そう、1700年代には海賊の避難所、現在は税金亡命者たちを匿う場所。国家に対して、今なお、道徳的には疑問の余地がある抵抗を継続する島だ。

Alexander McQueen
シルバー スカル & クロス ボーン リング
ブラックを背景に、スワロフスキーのクリスタルに縁取られ、両サイドに可憐な花柄を配したスカルとクロスボーンのリングは、海賊のシンボルと歴史的なコスチュームの組み合わせだ。目にする度、決して免れることのない我々の運命を思い出させるラグジュアリーな死の備忘録である。

Palm Angels
オフホワイト & ブラック スカル ケープ
軍艦や商船での苛酷で孤独な暮らしは、往々にして、人を海賊に変えた。捕らえられる結末を想像してもなお、もっとましな、もっと自由な生の可能性がそこにはあった。航海は同時に、多様な生き方との接触も意味した。Palm Angelのフード付きポンチョに登場したドレッドヘアのスカルのごとく、海賊魂は大海のみならず文化も渡る。

Giuseppe Zanotti
ブラック スエード スカル ハート ローファー
本物の海賊は暴力的な辛い生活を強いられたが、映画や物語に描かれたロマンティシズムは、ヴィヴィアン・ウェストウッドからアレクサンダー・マックイーンに至るデザイナーに影響を与えて来た。Giuseppe Zanottiのドレス スリッパでは、高貴なコスチュームと髑髏が渾然一体と現れた。
- 文: Ben Perdue
- 写真: Rebecca Storm