メゾンMに漂う影

Maison Margielaが醸し出すヌワールのムード

  • 写真: Thomas McCarty
  • スタイリング: Olivia Whittick

1946年、ニーノ・フランクは、アメリカの犯罪映画を指す造語として「フィルム ヌワール」という言葉を作り出した。この語の正確な定義は掴みどころがなく、はっきりしない一方で、映画のもつムードは明確だ。つまり、ヌワールはジャンルであると同時に、雰囲気そのものを指すのである。

ヌワールの映画の主な登場人物は、私立探偵、嘘をつく女、そして事件に巻き込まれる被害者といったところだろうか。場合によっては、そもそも中心人物が存在しない。人物の存在感は、その不在を通して描かれる。キャロル・リードによる1949年の映画、『第三の男』がその典型だ。オーソン・ウェルズ演じるハリー・ライムは最終幕になるまでその姿を一切現さない。正体のわからない人物と影を通して描かれるヌワール フィルムは、謎めいた人物や裏の顔をもつ人々を描くにはもってこいだ。脱構築のテクニックがジャンルの特徴でもある。

この詩をささげるのに、その創設者が謎多き男として有名なMaison Margielaより適したブランドが他にあるだろうか。ハンガーラックに掛けられたジャケットが、人の影を作る。残されたのはその痕跡だけで、正体はわからない。ここでは闇もまた、登場人物だ。証拠はほどけた1本の白い糸。一部始終を知る手がかりだ。そしてそこから、常識を覆すような動機が明らかになる。

冒頭の画像 モデル着用アイテム:ブーツ(Maison Margiela)コート(Maison Margiela)イヤリング(Maison Margiela) 画像のアイテム:ブーツ(Maison Margiela)

  • 写真: Thomas McCarty
  • スタイリング: Olivia Whittick
  • モデル: Melodie / Dulcedo
  • ヘア&メイクアップ: Ashley Diablo / Teamm Management
  • 制作: Alexandra Zbikowski
  • 制作アシスタント: Tatyana Ofter
  • アート ディレクション: Durga Chew-Bose, Olivia Whittick