絵文字代わりになるバッグ

Fendiが放つ表情豊かなモンスターは、ファッションにやましい快楽など 存在しないことを思い出させてくれる

  • 文: Reva Ochuba
  • 写真: Haw-lin Services

新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話

FendiのMonster Eyes(モンスター アイズ)バックパックは、「creature(生き物)」という言葉が、実のところ「create(作る)」と「culture(文化)」の混成語であることを明らかにしてくれる。このバッグは、今や言葉の要らない言語として、現代人の交流に欠くことのできない絵文字から発展したものだ。微笑みを浮かべた猫や、憂鬱そうな葉っぱや、淫らな茄子は、実際に沸き起こる感情を抜きにして、経験への標準的な反応を喚起する。感情が乖離したこの表現は、グローバルなコミュニケーションの基本的な構成要素となり、ごく私的な表現がインスタグラム上で流行となり、それがファッション現象になった。

Fendiの2013年秋冬コレクションで発表された「Bag Bugs(バッグ バグズ)」から派生した小さなクリーチャーたちは、今や豪華なモンスターへと進化を遂げた。毛皮やハンドバッグを扱う小さな工場から世界的ファッションブランドへの成長を支えた信条に、Fendiはどこまでも忠実であり続けている。弾力のあるグレインレザー、機能的なメッシュ素材のパディング、シルバーのハードウェアを用いた高級ブランドに相応しい質の高い職人技は、デザインを損なったことなどただの一度もない。

Monsterバックパックが、なんらかの特定の感情に由来するものだったら、それは敢えて挑発や侮辱を受ける人の感情を表現しているだろう。このバッグの厚顔無恥な表情から、昔からお決まりの天使と悪魔の対話が思い起こされる。両肩にそれぞれが立ち、どちらに溺れさせるか、人間を説得しようと対立する。このバッグは、ためらうことなく左肩の悪魔に報い、デカダンスの大胆を礼賛し、ノートパソコンの重荷を担ったり、空港で検査を受けたり、貨物室にに投げ込まれたりする任務を喜んで引き受ける。私たちは皆、罪人であり、ファッションにやましい快楽など存在しないのだ。

  • 文: Reva Ochuba
  • 写真: Haw-lin Services