Lil Yachtyは無限、無謀、そして浮遊的

アトランタのラッパーが直感に従う重要性を語る

  • インタビュー: Max Mohenu
  • 写真: Brent Goldsmith

誰もがアトランタから来た小さなボートについて話している。そして、Lil Yachty(リル・ヨッティ)について少し調べれば、それがどうしてなのかすぐにわかる。ビーズを編みこんだ三つ編みヘアと、カラフルな洋服の組み合わせが人目を引く19歳のラッパーは、酒も飲まない真面目なライフスタイルを体現し、ボートに対する強い関心は、今やアーティストとしての哲学に姿を変えている。豊潤なパーソナリティと表現すればいいだろう。1年の間に、ヒップホップ界で最も話題になった若手のひとりとして頭角を現し、EP盤「Summer Songs」から2曲のヒットを記録、活発な客演やリミックスが注目を集め、Yeezusのモデルをこなし、誰もが憧れる雑誌「XXL」の大人気企画「XXL Freshmen」の2016年版にも選ばれた。Yachtyの音楽は、戦略もなく、お決まりの手法もなく、直観を頼りに鳴り響く。アメリカの人気アニメ「Rugrats(ラグラッツ)」のフリップされたインストで1分間ラップしたかと思えば、次には普通のトラップのビートでラップする。90年代リバイバリズムとカジュアル ブランドNauticaへの特別な親近感を風変わりにブレンドしたスタイルにおいても、彼はアーキタイプを避ける。唯一の例外? それは、グリルを光らせること。もちろんインタビュー中は外されていたが。Yachtyのアプローチは、ラップ界の保守派の一部から怒りをかった。Yachtyがラップを格下げしているという言葉さえ聞かれる。しかし、Yachtyが関心を持つのは、自分自身であること、ポジティブな考えを広めること、自分が面白いと感じる仕事でひと儲けすることだけだ。

Max Mohenu(マックス・モヘヌ)が、トロントでLil Yachtyと話した。Lil Yachtyが着ているのは、Balenciaga、YEEZY Season 2Craig Green

マックス・モヘヌ(Max Mohenu)

リル・ヨッティ(Lil Yachty)

マックス・モヘヌ: あなたのスタイルは、他のサザン・ヒップヒップのラッパーと、どう違うと思いますか?

リル・ヨッティ: そうだね、僕は人とは違ってると思う。だから、当然、音もスタイルも他のサザン・ラップのラッパーと違うんだ。わからないけど。ただ自分らしくしているだけだよ。

サザン・ヒップホップには、スタイルや美学に対する決まり事があるんでしょうか?

サザン・ヒップホップのラッパーに、決まり事とか、特定のスタイルなんてないよ。今は、とりあえずない。もし「スタイル」と呼べる物があるとするなら、90年代のスタイルじゃないかな。

南部では、ビーズを編みこんだ三つ編みがファッションのトレンドなんですか?

いや。べつに南部じゃないよ。どこで始まったのか知らないけど。ラッパーのHurricane Chris(ハリケーン・クリス)が昔やっていたと思う。彼はニューオリンズ出身じゃなかったかな? 確かじゃないけど。

過去のエディトリアルを見ていて、あなたの服装とビーズがマッチしているのに気付きました。合わせてみたいと思う特定の色のヘアビーズとか、色のパターンがあるんですか?

おかしいね。前はビーズと服を合わせていたんだけど、髪の毛が長くなると、だんだん大変になってね。好みは特にないな。今は透明のビーズだから、もっと簡単だ。

いちばん出番の多いアクセサリーは何ですか?

グリルだな。でも、今は持ってないんだ。グリルを付けて喋ると、みんなが変だって言うから。

昔の人でも今の人でもいいんだけど、音楽の世界で、もっとも象徴的なスタイルを持ったミュージシャンと言えば、誰を思い浮かべますか?

Kurt Cobain(カート・コバーン)やPublic Enemy(パブリック・エナミー)、ASAP Rocky(エイサップ・ロッキー)あたりだな。僕はKriss Kross(クリス・クロス)が気に入ってる。前後ろに着るスタイルは、ほんとにカッコいいよ。Theophilus London(テオフィラス・ロンドン)もすごく魅力がある。彼のスタイルは、ほんとにイカしているよ。

他には?

ひとつ、Kid Cudi(キッド・カディ)がやって、僕もずっとやりたかったことが、クロップトップ。でも、あれをやるには体を鍛えないとね。新しいところでは、Tyler, the Creator(タイラー・ザ・クリエイター)のカラフルな色! ここんとこ、彼はめちゃくちゃイカしてるよね。大好きだぜ、タイラー。ミュージシャンじゃないけど、俳優のMartin Lawrence(マーティン・ローレンス) の昔のスタイルも外せないね。

Lil Boat Sailing Clubの服装のこだわりを説明するとしたら、絶対に欠かせないスタイルは何ですか?

Kanye(カニエ・ウエスト)をいつも着られたら、ほんといいんだけどね(笑)。カニエが初めて出て来た頃のこと、覚えてる? いつもスーツだったんだ。すごくカッコ良かったよ。いつか、僕もああなるんだ。今は、まだちびっこギャングみたいな恰好だけど。別に意識してたわけじゃないんだ。ただ、こうなったってこと。まるで悪ガキ集団だ。ミュージックビデオを作る時には、スタイルがあるんだ。「All In」のビデオを作った時は、白と赤で統一した。すごくカッコ良かった。ツアーで、LAでプレイした時は、全員にLakers(レイカーズ)のジャージを買ったんだ。まるでバスケットのスターティング メンバーみたいだったけど、チームだってことを示したくてね。全員で揃いの服を着るのが好きだから。カッコいいと思うんだ。

歳を取って振り返った時に、Lil Boat(リル・ボート)/Lil Yachtyのどのイメージを後世に残したいですか?

Nautica Competitionの復活、ビーズを編んだ赤い髪、ポジティブな姿勢。ポジティブな考えや愛を広めたってことで、記憶にとどめてもらいたい。

ヒップホップのファッションで性別の違いがなくなっているのは、文化にとって重要なことでしょうか?

必ずしも重要ではないよ。単に、今はそうだ、っていうだけだから。ファッションは変わってきたし、人もそれほどとやかく言わない。今でも批判したり嫌ったりする古い世代はいるけど、その世代が歳を取れば、批判なんてなくなる。自由になる。誰も気にしなくなるよ。

性別の境界を押し広げるスタイルを、試してみる気はありますか?

時々はね。僕に合うかどうか、それと僕が好きかどうかに依るよ。他の誰かのようになるためにやったりはしないけどね。

Young Thug(ヤング・サグ)を真似るために、ドレスを着たりすることは、絶対しない。全身レザーとか、ブラックネイルとか、ゴスとか、ロックスターのスタイルもね。そういうのは僕じゃないんだ。僕は目をちゃんと見開いて、最初から批判したりしないで、全てをオープンに受け止める。上手くいくものは、上手くいくんだ。

Kanye Westと会った感想を聞かせてください。

Kanye Westは、ほんとにクールだよ。すごく良い感じ。彼のことを難しい人間だと思ってる人が多いみたいだけど、ほんとに優しいよ。

YEEZY Season 3を経験したことで、あなたも同じような帝国を作りたいなという思いになりましたか?

どちらとも言えないな。洋服のラインはやりたいよ。でもインスピレーションという点では、今は、Tyler, the Creatorの方が強いね。Tylerとはもっと長く話したことがあるし、お互いにもっと若いしね。だから、彼の方がもっと近く感じる。とても頭が切れるんだ。

そんなに若くしてあなたが成功できたのは、何が要因でしょうか?

えっと、それはとんでもない学校に通ったおかげで、学校が嫌いだってわかったから。誰かがドロップアウトしたって話はしょっちゅう耳にしたけど、自分がそうなるなんて考えもしなかった。ところが、次は自分の番だったわけだ。みんなが過去に戻って、9ヶ月前の僕がどれだけ普通だったか見られればいいのに、と思うよ。このビルの外にいるキッズたちと全く同じだった。今は、4万ドルの時計をして、ジュエリーをいっぱい着けて、ここに座ってるけどね。僕にできることは、謙虚な気持ちを忘れずに、神に感謝することだけだ。

以前のインタビューで、年寄りになる前に大金持ちになりたいと言ってましたね。どうやって実現しますか?

他のこともやるだけだよ。不動産も手に入れたいし、たぶんどこかのタイミングでレストランもやりたいね。わかんない。ただ、何か違うことをやるつもりさ。

ラップ業界で高い評価を受けているCoach K(コーチ・ケー)のようなマネージャーがいることで、ビジネスの面では安心ですか?

いい加減年を喰ってるんだから、賢いはずだよ(笑)。彼は、僕がちゃんと話を聞く数少ない人間のひとりなんだ。

学校や仕事で、あなたと似たような変化を経験している若者に、何かアドバイスはありますか?

僕のように何かをやろうとしているなら、ずっとクリエイティブであり続けろって言いたいね。結局、新しいものを作り出せるかどうかなんだ。だから、自分自身に目を光らせてないといけない。そして世界の注目を集める次の一手を考えるんだ。また彼のことだけど、Tylerがちょうど良い例だよ。彼は虫を食ったんだよ! 首も吊ったんだ。とにかく頑張ったんだ。

アトランタのラップ シーンは、クラブ カルチャーとパーティに根ざしていますが、そうしたことと繋がっているのは重要ですか? それとも斬新な新しいことをやる方が重要でしょうか?

勘違いしないで欲しいけど、どんな音楽だって重要だと思う。ただ僕は、ああいうふうに音楽を作ってはいないんだ。僕はティーンエージャーのために作ってる。誰かと付き合っていたり、別れたばかりだったり、それか、幸せで満足してるティーンエージャー。物語りのスタイルが好きなら、それもクールだけど、僕のはだいたいティーンエージャーの感情がテーマなんだ。おう、それだそれだ! そいつを次のアルバムのタイトルにしよう。

Teenage aティーンエージャーの感情??

たぶんね(笑)。ぴったりだと思う。

人が、あなたの歌の歌詞を真に受けたりしたことはありますか?

「1 Night」の一件はおかしかったね。女の子と一緒の写真をアップする度に、「でもワイフはいらないって言ってたじゃないか」ってなるんだ。どうして、みんなこんなにシリアスに考えるのか、正直わからないよ。

シリアスなラップはつまらないというあなたの発言に対して、年上のラッパーや批評家はどう思っているんでしょうか?

僕と、Hot 97(ニューヨークのラジオ局)でDJやってる僕の友だちのEbro(エブロ・ダーデン)は、四六時中ツイッターをやっているんだ。で、そのことはいつも冗談の種にしてる。全然気にしてないね。僕はこれで金を稼いでるんだから。
誰もが僕のことを好きになるわけないし、僕の曲を聞くわけでもない。僕のラップに意味があるなんて、僕は言ったこともないし。僕はただ楽しんでいるだけなんだ。僕が楽しんでる限り、僕の家族や友達も楽しんでるし、ファンの子たちも上機嫌だよ。僕が気にかけるのはそれだけだ。

ふざけてツイートしたことにキレる人には、どう対処するんですか?

ごめんって言うよ。別に謝ってかまわない。そんなに深刻に受け止めないね。

ツイッターでの論争を、かなり楽しんでるみたいですね。

まあ、そうだね(笑)。そんなに真剣でもないけどね。

写真家のPetra Collins(ペトラ・コリンズ)との仕事はどうでしたか?したか?

彼女は素晴らしいよ。とてもクリエイティブ。「ザット'70sショー(アメリカのテレビコメディドラマ)」みたいな、ヒッピーの雰囲気があるんだ。ほんとにカッコいい。

「Keep Sailing」では、あなたのアトランタの生活を彼女が撮影しましたね。彼女の手法は好きでしたか?

ほんとにクールだった。南部を代表するつもりはないけど、彼女は僕のストーリーを正直に撮ってくれたよ。

他の女性とのコラボレーションという点で考えると、Yachtyの夢のコラボは誰になりますか?

Kehlani(ケラー二)、Rihanna(リアーナ)、Beyoncé(ビヨンセ)。みんな大物だってわかっているけど、聞かれたから答えただけだよ。

カナダに滞在してみてどうでしたか?

そうだね、トロントとバンクーバーは全然違う。ペトラは確かトロント出身だよね? トロントは大好きだよ。トロントは素晴らしい。バンクーバーもいいけど、トロントは素晴らしいよ。住んでもいいくらいだ。

ここに来てから、どこかトロントの気になるスポットに出かける時間はありましたか?

ないんだ。1日中OVOスタジオで、新しい曲の録音をしていたから。

ということは、時間のある時には、新しい曲を録音しているんですか?

そうだね。ここに部屋を借りて、ずっと仕事してるんだ。40(フォーティ、トロントのプロデューサー)と親友のDrake(ドレイク)には、ツアーで留守中、いつも仕事場を使わせてくれて感謝しているよ。

新しい音楽についても話してもらえますか?

まだ充分な時間がなくて、何も完成できてないんだ。気が狂うほど、ずっとツアーをしてるから。昨日は、かなり久しぶりにスタジオに入れたんだ。

スケジュールのせいで、自由な時間を見つけるのは難しいですか?

そうだね。今はツアーの最中だし、これが終わったらまた3週間、今度はRae Sremmurd(レイ・シュリマー)とのツアーがある。楽しみにしているよ。そのツアーがなければ、新しいレコード作りで缶詰状態になってたと思うよ。

ツアーに友達も連れて行くというのは、どんな感じですか?

僕は家にいるような感じが好きだから、友達を連れて来たんだ。でも、ほんのわずかの仲間だよ。さすがに全員を連れて来ることはできなかった。アメリカなら15人位で移動してるよ。

ショーの後のパーティは、とかく乱痴気騒ぎになりますか?

うーん、まず、僕はクラブが嫌いなんだ。全く好きじゃない。酒も飲まないし、タバコも吸わない。だからクラブは落ち着かないんだ。退屈だよ。ずっとじろじろ見られるしね。

  • インタビュー: Max Mohenu
  • 写真: Brent Goldsmith
  • スタイリング: Saam Emme
  • ヘア&メイクアップ: Chanel Croker / DNS