Onyx Collectiveのニューヨークガイド
ニューヨークのエクスペリメンタル ジャズバンドの1日
- 文: Romany Williams
- 写真: Eric Chakeen

9月半ば、季節外れに暑い火曜日。ニューヨークのチャイナタウンにあるOnyx Collectiveのスタジオを出ると、真っ先に出会ったのがピーター・サザーランド (Peter Sutherland)だ。彼はSupremeの新作スニーカー発売へ向けたビジュアルを撮影中。さらに数ブロック行った所で、グレイス・アルホム(Grace Ahlbom)が友人のスケートボード風景を撮影しているのに出くわす。別に自慢したくてこんな詳細を紹介しているのではない。10人強のメンバーから成るエクスペリメンタル ジャズバンド、Onyx Collectiveのサックスのイザイア・バー(Isaiah Barr)とドラムのオースティン・ウィリアムソン(Austin Williamson)にとっては、これが日常なのだ。ニューヨークで生まれ育った彼らにとってはコミュニティがすべて。「古いニューヨークのやり方も、それなりにありがたいものさ。通りで出くわして『どうしてる?』なんて言いながら、みんなとうまくやってくんだ」 とイザイアは言う。
3年前にKNOW-WAVEのラジオに登場して以来、彼らはニューヨークのエクスペリメンタル ジャズ再生の第一線にまでのぼり詰めた。全員が才能ある若手のミュージシャンであるこのバンドはKNOW-WAVEやSupremeで楽曲を発表してきた。そして、つい先日も2枚目となるフルアルバム『Lower East Suite Part One』が公開されたばかりだ。アルバムのリリースを目前に控えていたイザイアとオースティンに話を聞き、マンハッタンのイースト ヴィレッジやロウアー イーストサイドにある彼らのお気に入りスポットを案内してもらった。

Onyxスタジオ – チャイナタウン??番地
ここは神聖な場所だ。ここは代々仲間の間で受け継がれてきた。チャイナタウンの奥まった所にある小さなショッピングセンターの足場の下。スタジオの入り口は、見逃してしまいそうな所に隠れている。階段を数段上がってアパートを通り抜けると、壁がグラフィティで覆われた裏手の中庭に出る。この場所でラットキング(Ratking)は長年ライブをしていた。夏にはバーベキュー、そして行き詰まったときにリフレッシュするには最高の場所だ。手作りの小さなスタジオで、彼らは数多くの楽曲をテープレコーダーに録音している。線路の真下にあるので、どれほど防音設備を整えても電車の音が彼らの歌の中に紛れ込む。電車の音でさらに味が出るのだと彼らは言う。


Hawaジュース バー – イースト ブロードウェー 181A番地
ここではジンジャーとウィートグラスのショットを頼んでみてほしい。お腹が空いていて何かヘルシーなものが欲しければ、アーモンドバターの入ったアサイボウルが絶対におすすめだ。このアサイボウルにはマンゴー、イチゴ、ブルーベリー、バナナが入っている。この辺りではめっきり減った、流行に無縁の、何の変哲もないジュースバーだ。


Classic Coffee Shop – へスター ストリート 56番地
「1976年以来、生粋のロウアー イーストサイド住民にコーヒーを提供:ソイミルクもフォームミルクもなし、気取りもなし」がここのスローガンだ。ラッドロー ストリートとオーチャード ストリートの間に佇む小さなコーヒーショップ。余計な物は一切なし。店で出されるのはシンプルなLay’sのポテトチップスだけだし、ここの「エッグクリーム」は最高だ。これはロウアー イーストサイド独自のドリンクで、名前にもかかわらずた卵もクリームも入っていない。ここではルイ・ジョーダン(Louis Jordan)の「Is You Is or Is You Ain’t My Baby」のようなジャズ&ブルースの名作を聴きながらドリップコーヒーを楽しめる。


The Good Company – アレン ストリート 97番地
Good Co. は彼らのクラブハウスだ。ここでOnyxは最初の商品を販売し始め、この夏も4回ライブを行なった。「ここは誰でも入れて、好きなことがさせてもらえる場所なんだ。観客はみんな友達だし、ワークショップをやるにはもってこいだ」とイザイアは言う。この店の充実した服とジンの取り揃えは要チェックだ。



Commend – フォーサイス ストリート 172番地
フォーサイス 172番地は多くの人とって思い出深い場所だ。ここがKNOW-WAVEの最初の所在地だったからだ。特別な空間なのだ。かつては壁や窓中に新聞やフライヤーが貼られていた。Onyxがファーストアルバムの大部分録音したのもここだ。KNOW-WAVEが去り、Commendがここでオープンしてもう4年が経つ。Commendは希少本や、レコード、テープなどをふんだんに取り揃えており、地域のワークショップや集会もここで開かれる。



Good Records – イースト 5thストリート 218番地
もうひとつの本当に「いい」お店が、オープンして10年になるこのGood Recordsだ。この店はジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップの素晴らしいセレクションで知られている。場合によっては地元のジャズ界の伝説的ミュージシャンからレコードのコレクションを譲り受けることもある。この素晴らしい場所は、どこに行く予定もないときに足を運び、1日かけて楽しみたい。


トンプキンズ スクエア パーク – イースト ヴィレッジ
ハーレー クリシュナの生誕の地であるトンプキンズ スクエア パークは、このわずか10.5エーカーの中にとてつもない魅力が詰まっている。イースト ヴィレッジは急激に再開発が進み小綺麗になっている。通りの反対側のスターバックスの新店舗などが嫌でも目につく。トンプキンズ スクエア パークは、かつての趣を残す最後の空間のひとつだ。瞑想が好きな人なら、落ち着いて瞑想するにはこの公園の楕円形の芝の上がもってこい。鷹の一種であるアカオノスリを観察したり、バスケットボールをプレイしたり、犬を鑑賞するにも最適だ。空いたベンチを見つけてくつろごう。


Café Mogador – セント マークス プレイス 101番地
公園の次はイースト ヴィレッジ名物のCafé Mogadorでひと休みするのもいいだろう。1983年の開店以来、このモロッコ料理のレストランは今も創業者一家によって経営されている。タジン鍋と甘いモロッコのアイスティーを注文したら、パティオに腰を据えて人間観察といこう。


- 文: Romany Williams
- 写真: Eric Chakeen