永遠のジェーン・オースティン

現代のヒロインを構想する

  • 写真: Rebecca Storm
  • スタイリング: Olivia Whittick

2世紀以上前、13歳にもならないジェーン・オースティンは、彼女が生きた時代の文学や社会の慣習をパロディーにして、小説や詩や、現実世界には程遠い、女性の権利や地位の向上をテーマにした物語を書き始めた。その過程の中で、人々に最も愛されると同時に、当時においても現代においても誤った解釈がなされることとなる一連の作品が生まれた。SSENSEは、オースティンの文化的貢献をたたえ、四輪駆動車を運転して田舎へ行ったり、家の脇にある庭で求婚者たちとメッセージをやり取りしたりするような、現代のヒロインの姿を構想する。

2017年初頭、ケンブリッジ大学英語科中退の、保守系ネットメディア「ブライトバート」の元記者で、差別的な発言が売りのマイロ・ヤノプルスが、「ビクトリア朝時代の小説家」を引用しようとして、「ブスな女は、美人な女よりも、フェミニストになる可能性が圧倒的に高い。これは世間一般に認められた真理である」と発言した。おそらくこの摂政時代の作家の小説など一度も手にしたことがないであろうヤノプルスは、どういうわけか、オースティンへの言及がふさわしいと考えたようだ。彼の発言が皮肉なのは、オースティンがビクトリア時代の小説家ではない(彼女はビクトリア女王が登場する前に亡くなっている)こと以上に、一般的には、彼女が同時代の女性の悲惨な地位に対しては批判的な、フェミニストの原点を象徴する人物と考えられている点だ。だが少し検索すれば、多くのオルタナ右翼のライターが、ヘイトを吐く際にオースティンを引用していることがわかる。 奇妙にも、彼らは「何もかもがもっとシンプルだった時代」、つまり誰も人種差別の前に立ちはだからず、結婚が神聖なものとして意味があり、女性がもっと従順な(つまり完全に夫に依存していた)時代の象徴としてオースティンを思い描いているのだ。

先月、イギリス中央銀行はオースティンに敬意を評し、彼女の肖像画の10ポンド紙幣を発行した。イギリスで現在流通している通貨では、女王を除けば、オースティンが唯一の女性である。使用された作家の肖像は、古い手描きの肖像画を元にエアブラシで加工したものなのだが、紙幣の顔は原画より柔和で女性的になっている。頰には丸みがつけられ、元のしかめ面にできた皺は取り除かれた。このため、ファンからは「かわいすぎる」という声が上がっている。とうに亡くなっており、型にはまったセックスシンボルからは程遠いジェーンですら、この手のセックスシンボル化は免れないのだ。

とはいえ、オースティン像が歪められるのは初めてではない。彼女の作品には、他人の手によるおびただしい数の改作や脚色があるが、彼女の作家としてのレガシーは、往々にしてそれらをもとに評価されている。これが彼女の作品が愛されると同時に広く誤解されている所以でもあるが。この先も意外なファンが現れては作品に強く共感し続ける限り、彼女が世界に残した足跡は消えることがないだろう。強い女性キャラクターとしてたたえられようが、上流社会の幼稚な男性と夫向けの男性を見分けるという果てしない闘いのためにたたえられようが、あるいは完全に間違った彼女の政治的イメージをたたえられようが、オースティンはすべて受け止めるのだ。

  • 写真: Rebecca Storm
  • スタイリング: Olivia Whittick
  • ヘア&メイクアップ: Laurie Deraps / Teamm Management
  • モデル: Alix Van der Donckt-Ferrand
  • 制作: Alexandra Zbikowski
  • 制作アシスタント: Erika Robichaud-Martel