エスケープ アーティスト

新進ラッパーの070シェイクが、
ニュージャージーと21世紀のデートを語る

  • インタビュー: Katrina Lainsbury
  • 写真: @rayscorruptedmind

070シェイクにとって、インタビューを受けるのはまだ新しい経験だ。実は、今回が初めて。しかし、19歳のラッパーが言葉の使い方に長けているのは、なんら驚くことではない。ニュージャージー州ノースバーゲン出身のシェイクは、ソウルフルでメロディックで歌うようなラップをSoundCloudでシェアして、注目を集め始めた。ソーシャル メディアのインフルエンサーからエージェントのボスに転身したYesJulzの後押しを得て、ニュージャージーの郵便番号の070にちなんで名付けた070クルーとシェイクは、今や世界展開を視野に入れ、シェイクが初めてヘッドライナーを務める北米ツアーを準備中だ。シェイクは野心に正直である。インスタグラムのプロフィールには「なぜ私たちがここにいるのか、それを思い出してもらうために」、ツアー グッズには「Shake The World」(シェイク ザ ワールド。世界を揺り動かそう)と書いてある。

可能な限り幅広い観衆を獲得すべく、シェイクはもう音楽の次の手を考えている。ニューヨークの新進ブランドGypsy Sportの2017年秋冬ショーでランウェイを歩いたばかりだし、演技の仕事も進行中だ。カトリーナ・レインズバリー(Katrina Lainsbury)が電話インタビューをしたときも、キャスティングコールから戻る途上のロサンゼルスにいた。

カトリナ・レインズバリー(Katrina Lainsbury)

070 Shake

あなたの名前には、どんなストーリーがあるんですか?

ハイスクールで私と友達が「シェイク ウィーブ」という演劇をしてから、みんな私をシェイクと呼び始めたわ。それと、ニュージャージーは私の人生に大きな影響を与えてるから、070シェイクって名乗ったの。070はニュージャージーの郵便番号。私のグループはみんな同じエリアの出身だから、みんなの名前の前に070を付けたかったの。

音楽の存在が大きくなり始めたのは、いつ頃ですか?

1年ぐらい前。

ある日突然、「よし、音楽やるわ」という感じですか?

まさに、そう。YouTubeに「ドレイク(Drake)のタイプのビート」って入れて、自分の詩を書き溜めてたノートを取り出して、ビートに合わせて詩を繰り返したの。流れに任せて。

最近は、詩に興味がある若者って、あまりいませんけど。

学校にいた頃、たくさん詩を書いたわ。先生の言っていることをノートに書いてるふりして。頭の中に詰まってたフラストレーションや考えから逃避する方法だったの。吐き出そう、逃げようと思ったら、書くしかなかった。ドラッグと同じよ。何かテーマがあったら、何ページも何ページも、書くことがなくなるまで書き続けるの。書き留めた言葉を使って何かしなきゃいけない、っていつも思ってた。

書いているときは、リスナーのつもりになる。「今私が言っていることは、私に影響を及ぼすかな? リスナーだったら、今自分が書いていることと同じ気持ちになるかな?」って。私は柔な人間じゃないわ。だから、私の心に触れるものなら人の心にも触れられる、って気付いたの。永遠に生き残ろうと思ったら、長く続くものを作らないとね。それには愛情と感情が必要よ。

永遠に生き残ろうと
思ったら、
長く続くものを
作らないとね。
それには
愛情と感情が必要よ

ニュージャージーで育つのは、どんな感じでしたか?

楽しかったわ。道を歩いてると、家族同然の人たちに出くわすのよ。外にいても、家にいるようなもんだった。一緒にバスケットボールをしてた女の子たちと仲が良くて、いつも「じゃ、この時間に80丁目ね」って感じ。80丁目のパーク コートがいちばん良いバスケットボール コートだったから、みんなそこに集合よ。音楽をかけて、インストのビートでフリースタイルを始めたり。

音楽でどんなメッセージを伝えたいですか?

考えよう、っていうのが私のメッセージ。考えるように教えられた以上に考えること。そうしないと、ろくでもないサイクルは止まらない。みんなが「何だって自分のやりたいことをやる。こんなことをやるためにここにいるわけじゃない」っていうふうにならないと、絶対このサイクルは終わらない。私たちは、やろうと思えば何でもできるってことを、みんなに見せたいの。迷路から脱出するのよ。

私がやってるのは、つまるところ、周囲の人のためになることをしましょう、っていう原点へ戻ることよ。見返りを期待しないで、心にもっている愛からやるの。

現在ドナルド・トランプが巻き起こしている状況を、どう思いますか?

エキサイトしてるわ。良い大統領なんて、ずっといなかったんだから。良い政府だと思ってたかもしれないけど、そんなものもなかった。私たちは今までずっと、単に満足するか、眠ってたのよ。トランプみたいな人間が現れて、みんなを叩き起こさないと、誰も気が付かない。そしたらようやくみんな頭にきて、「クソッ。やってやろうじゃないか」って気になる。自由や団結に備えるには、目が覚めるショッキングな要素が必要なのよ。それが、人を団結させる。ようやく、みんなの本心が現れるわ。もう悪魔が顔を隠すことはできない。私たちがマスクを剥がすから。ゲイに対する批判やその他の色んな批判を支持して、心に愛がない人は、化けの皮がはがれるわ。どっちにつくか、みんな、決断を迫られる。

人気が出てきているとき、誰かと付き合うのはどんな感じですか?

はは(笑)。彼女はクールだし、理解のある人よ。でも、今の状況に慣れようとしてるところ。知り合ったとき、まだ私にはクレイジーなファンがいなかったの。だから、女の子たちが私をキュートとか言うのに、慣れようとしてる。でも、どうだっていいのよ、そんなこと。彼女も成長するし、私も彼女と一緒に成長するって分かってるから。

時々、「ああもう、高校時代にインスタグラムがあったら、きっと私、死んでいたわ」って思うんです。

この前、クルーのメンバーに言ってたの。誰かを好きになったら、電話がないほうがずっといいねって。そしたら、次の日に会って話すのを待たないといけないから、話すことがいっぱいあるでしょ。今は、一緒にいないときでもメッセージを送るから、会っても話すことがなくて、間がもたない。話したいことは全部iMessageで送っちゃって、何も残ってないのよ。

全体的に、テクノロジーのせいで私たちの生活サイクルは完全に混乱してますね。

そうよ! リラックスして落ち着けるはずだったのにね。テクノロジーは生活を向上して、寛がせてくれるはずだったのに、私たちはここにいる理由すら分からなくなってる。

最後に何か言いたいことは?

アイ ラブ ユー(笑)。

  • インタビュー: Katrina Lainsbury
  • 写真: @rayscorruptedmind