レキシー・スミスのパン作り講座
アーティストとしても活躍するベイカーが、放置レシピを伝授
- 画像提供: Lexie Smith

隔離生活が始まって最初の数週間は、イーストと小麦粉が品薄になった。だがイーストが発酵してブクブクと泡立っている魅力的な写真がソーシャルメディアに登場し始めると、たちまち悲嘆の声が続いた。パン作りは思い通りに運ばず、「受けを狙って、フォロワーやいいね!の数を増やすための策略に違いない」と糾弾された。だがおそらく、私たちが渇望しているのは注目より繋がりだ。あるいは、ベイカーであり、アーティストであり、@bread_on_earthのオーナーでもあるレキシ-・スミス(Lexie Smyth)が推測するように、「商品市場とは別の場所で、必要なものを作り、流通し、消費する能力を再評価したい」と強く望んでいるのだろう。「私たちはそういう過程からすっかり切り離されてしまって、自立や自活の点で、多くの人々は緊急と言えるほどに無力だわ。抱え込んだ富を守る門番に、救いは期待できないしね」。現在のような非常時に、パンを作って自分の食を賄うことは政治的な意味を帯びる。同時に「生活の手段、慰め、安心感」も与えてくれる、とレキシ-は言う。あらゆることが覚束ない状況では、これまで粗末にしてきたモノや材料を活かすことがエネルギーの源ともなりえるのだ。さあ、レキシ-が教えてくれるパン作りに挑戦してみよう。
フラット ブレッドの
放置レシピ

家の基礎工事で流し込むコンクリートみたいに、大きくて平べったいパン
準備するのは、以下の材料と大きめのボウル:
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長らく冷蔵庫の片隅で忘れられていたサワードウ スターター 200g(これが発酵の種になる。私のは全粒ライ麦)
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強力粉または中力粉 300g
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全粒粉 150g(スペルト小麦、全粒小麦、一粒小麦、その他手に入るもの)
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水 385g(スターターが冷たいので、少し温めた水)
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焼き芋 約160g(オーブンに一晩入れっ放しにすると、糖分がキャラメル状になって、潰しやすい)*
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塩 11g
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オリーブ オイル 40g
*私のやり方は、サツマイモにナイフを数回突き刺して切り込みを入れた後、トレイにのせて、260°Cに余熱したオーブンへ入れる。数分後にオーブンを止め、一晩そのまま入れっ放し。そのあいだ私はベッドで熟睡だけど、これでまったく問題なし


次のステップ:
サワードウ スターター、小麦粉と全粒粉、水、焼き芋をボウルに入れ、濡らした手で混ぜる(片手で混ぜて、片手はきれいなままのほうが、後始末が簡単)。全部をよく潰して混ぜ合わせる。指の間からニュルニュルと出てくるようになったらOK。ラップかタオルで覆って、15分放置。

15分経ったら、塩を追加。今度は両手を水で濡らし、関節で押し込む要領で塩を混ぜ込んだ後、全体を1分混ぜる。自然にちぎれるので、わざとちぎらないように優しく混ぜること。混ぜ終わったら、ボウルの側面から手を滑らせ、全体をひっくり返す、ボールの側面に付着しているドウを無駄にしないように、きれいにこそげとって、ドウの真ん中へ。少しオリーブ オイルを塗り、ラップかタオルで覆って、15分放置。

手のひらにオリーブ オイルを注いで、両手を擦り合わせ、全体によく馴染ませる。ボウルの手前からドウを持ち上げ、引き延ばすようにして、中央へ折り畳む。必要に応じてオリーブ オイルを補給しながら、ボウルを90度ずつ回転して同じ手順を3回繰り返す。最後に、全体をひっくり返す(これで、底の滑らかな面が上になる。グニャグニャして手に負えないときは、そのままでも大丈夫)。少しオリーブ オイルを塗り、ラップかタオルで覆って、15分放置。
もう一度手にオイルをつけて、前と同じ要領でドウを30秒折り畳む。あるいは、ドウを引き延ばして折り畳みさえすれば、どんな方法でも構わない。ただし、ちぎらないように注意。手をシャベル代わりにしてドウを下から持ち上げ、上方向へ引っ張って、下方向へ折り畳み、下側へたくし込むようにすれば、上手くいく。この手順を2~3回繰り返し、ボウルを回転しながら同様にする。全方向が終わるころには、もっと見栄えのいい滑らかな塊になっているはず。最後にもう一度、今度はドウの周囲に少し溜まる程度までオリーブ オイルを補充。そのままの状態で、ラップかタオルで覆って、1時間放置。

およそ33 × 23センチの長方形のベーキング トレイにクッキング シートを敷き、全面が艶々と光る程度にオリーブ オイルを塗る。手にオイルを塗り、ドウの円周を下側へ巻き込むようにして、張りを持たせる。ドウを持ち上げて、トレイへ移す(持ち上げられないときは、ボウルから流し込む)。できるだけ、ボウルに入っていたときの上面がトレイでも上面になるように。2~3分休ませた後、トレイに塗ったオイルをドウの上面に塗り、オイルを塗った指でドウを焼き型の四辺へ向けて、優しく押しのばす。全体に広げたら、ラップで覆い、冷蔵庫に入れて18時間程度放置。
翌日:
冷蔵庫から取り出す。そのままで、触らないこと。ちゃんと見なくてもいいくらい。そして、さらに1時間放置。
220°Cに予熱したオーブンへ入れて、30分放置。
ドウがまどろむように膨らんで、トレイを軽く揺らすとドウがまだぶるぶる揺れ動くときにオーブンから取り出して、もう少しオリーブ オイルを垂らし、塩を振り、眠りの邪魔をする。つまり、オイルを塗ったナイフなどで、しっかりと窪みをつけていく。遠慮せず、膨らんだお腹の中で鳴き声をあげる可哀想な魂まで突き通すつもりで、しっかり下まで窪ませること。

オーブンへ戻し、20分放置。焼き型の向きを変え、さらに10分、あるいは、ドウの内部までしっかり火が通り、上面にゴールデン ブラウンの焼き色がつくまで焼き上げる。
最後に:
例えば、オイルを塗ったバターナイフを置き忘れて、パンに焼き込んでしまったとしよう。ラッキーなことに、このパンはとっても柔らかいので、バターナイフで切り分けることができるし、焼き具合を確かめるのにもってこいの道具にもなる。食べられるほど冷めたら、簡単に取り出せるから、心配しなくても大丈夫。

- 画像提供: Lexie Smith
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: May 29, 2020