インフルエンサーなんて、お断り
ブログで注目を集めるスパイシー・マヨの経歴
- インタビュー: Erika Houle
- 写真: Brad Ogbonna


Yaminah着用アイテム:ドレス(MSGM)、イヤリング(JW Anderson) 冒頭の画像:着用アイテム:ドレス(MSGM)、イヤリング(JW Anderson)、イヤリング(Maison Margiela)
ヤミナー・マヨ(Yaminah Mayo)は、名乗っているニックネームそのものだ。そう、スパイシー。ブランチに平気でおへそが出るようなクロップ トップを着ていくし、オレンジ色が好きだし、自分の好きなようにスケジュールを決める。
ブルックリンのどこにいようと、ためらうことなく彫像のようなポーズを決めるし、アメリカの現在の政治情勢を「スシみたいに生になってる!」なんて表現する。受けを狙わないユーモアのセンスとそばかすの散った(まさに文字通り)光り輝くような顔を持つ25歳のブロガーは、フォローされるためではなく、リアルに存在する。
マヨは、「現代のインフルエンサー」という座におとなしく坐っている気はない。儲かることは魅力だが、商品を売るつもりはない。あれやこれやと触手を延ばしてくるブランドの只中で、 自分の個人的な責任を認識している。「私がやりたいこととぴったり一致しないことは、やらないの」とマヨは言う。マヨが目指すのは、そんなことじゃなくて、自分と同じような考え方をもった女性たちのコミュニティを育てて、自分の価値観や信念を反映した環境を作り出すことだ。現在、昼間は、ニューヨークのウィメンズ クラブ「The Wing」の受付として働いている。夜は、ソーシャル メディアで前向きな肯定を実践し、文化に関する考察を発散する。ファッションに対する影響力は、プラットフォームの基盤に過ぎない。「その時その時で、私の最高の生活を表現してるだけよ」
わずかここ数年で、マヨはiTunesポッドキャスト「Girl on the Glo」の司会をつとめ、Mansur Gavrielの顔となり、プライベート ブログ「Spicy Mayo」の発言で評判を高めた。今回は、そんなマヨの1日を見せてほしいと依頼したのだが、自然な流れで、はるかにそれ以上を彼女は分かち合ってくれた。マヨに、苦痛だった学生生活からソランジュの名における誓いまで、現在までの道のりを聞いた。
学業への無関心を打開する
ボストンは大規模な学究都市なの。以前は私もハーバード大学医学校とボストン大学医学部の講座をとってたわ。あそこじゃ、みんなそうするのよ。すごくクールだったけど、圧倒されるところもあった。みんないつも成績を上げることを目指してるのに、私ときたら、教室に座って「こんなこと、どうだっていい」と思ってたから。ある時期になると、喩えじゃなくて本当に列車に乗って、1日中、駅の間を行ったり来たりしてた。学校に居たくなかったんだもの。ノースイースタン大学にも1年通ったけど、やっぱり続かなかった。当時のボーイフレンドが浮気ばかりしてたから、課題をやる代わりに、彼の監視で忙しかったのよ。結局、嫌になって学校はやめたわ。
チャンスを作り出す
ボストン国際映画祭でボランティアをしてるとき、レイク・ベル(Lake Bell)を見かけたの。「How to Make It in America」がキャンセルされたばっかりだったら、彼女のそばへ行って、「あなたの番組が大好きだったから、すごく残念です。私、ライター志望だし」って言って、メールアドレスと電話番号を書いた紙切れを渡したの。かなり厚かましかったわね。でも、その2週間ほど後に、「Nurse Jackie」を手がけてたプロデューサーからメールが来たのよ。実際はそれほどのことじゃなかったんだけど、私としては一大事。会いに行ったら、「来週の金曜日に来てくれるかな。そしたらスタジオを案内するから」って。言われたとおりに出直して、舞台裏のコスチューム デザイナーに紹介されたわ。部屋の入口に立って「どうも。私、インターンなんです。やることがあったら言ってください」って感じ。返事は「明日の朝7時に来て」(笑)。あの仕事はシーズンが終わるまで続けたわ。それでね、特別にセキュリティが厳しい日があったの。ミシェル・オバマが来てたから。シークレット サービスだってお遊びでやってるわけじゃないから、私みたいな立場じゃ実際に見ることはできなかったけど、彼女と同じ建物の中にいるっていうだけで十分だったわ。月曜日の夜にバスに乗って、2晩泊まれる場所を考えて、セットへ行って、くたくたに疲れて、ろくに食事も取れず、半分眠りながら衣装を運んで...。誰にも認めてもらえない、非正規のインターン。ママの意見は「とにかく、ニューヨークへ行っちゃいなさい」
ニューヨークで何とかやっていく
ニューヨークへ移ったのは2014年。テレビでやってた「Girls」で、ハナが鏡を見ながら「私はニューヨークに住んでるんだもの。それだけで魅力的なはずよね?」って言うシーン、知ってる? あれって、私が人生で体験した最大の真実。本当に、「私、今日ウンチしたよ」って言うと、「うわぁ。ニューヨークでウンチするってどんな感じ?」。ゆくゆくはファッション関係の仕事をするために、なにかクリエイティブな業界に入りたいと考えてたから、Opening Ceremonyで仕事をみつけた。3回トライしたあげく、やっと採用されたんだけど。私、何かを欲しいと思ったら、絶対に手に入れたいから。あそこで高級なクライアントに接触するようになったわ。ミランダ・ジュライ(Miranda July)が本のサイン会へ着ていく服を選ぶのを手伝ったけど、その時は、彼女が誰なのか、知らなかった。「最近、本を書いたの」てミランダが言ってるたのに、私はただ「このKenzoにしますか? どうしますか?」。「Broad City」に出演してたアビ・ジェイコブソン(Abbi Jacobson)も来店したことがあるわ。私、彼女が着てたセーターをコスビー セーターって言っちゃったのよ。当時、ビル・コスビーはセクハラで訴えられて大変だったのに。自分でも「まずかったな」と思った。 アンドレ・レオン・タリー(Andre Leon Talley)は2言しか喋らなかったわね。私の方は「私はファッションそのもの」って態度。あのショップはクールな場所だったわ。肝が据わっていても、嫌な人間になる必要はないってことを教えてくれた。一線を越えなくても、自分の意見を主張できるってことも。時には一線を越える必要に迫られる時もあるけど、いつもじゃない。
肝が据わっていても、嫌な人間になる必要はない。一線を越えなくても、自分の意見を主張できる
ニックネームを名乗る
「Mikey’s Burger」って名前のハンバーガー ショップがあるの。仕事が終わった後、仲間とゴシップしてた溜まり場。職場で何が起きてるか、だれがクビになりそうか、その理由は何か...。その店にはスパイシーなマヨネーズが置いてあって、私はそれをチーズ フライにつけて食べるのが大好きだったのよ。メチャメチャいっぱいつけてね。 だもんで、誰かが「はいはい、スパイシー・マヨね!」って。名前を考えてたとき、面白くて、いつまでも使えて、わざとらしくないのがいいなと思ってたの。ファッションは好きだけど、自分なりの視点でファッションを語りたい。「これがわたしのお気に入りのシャツよ。大好きなピンクだから」みたいな、ありきたりな感じじゃなくてね。

着用アイテム:Tシャツ(Marques Almeida)

着用アイテム:ローファー(Gucci)、バッグ(Loewe)、スカート(Carven)
ソランジュを見習う
私の最大のインスピレーションであるソランジュがTumblrで書いてたブログは、私にとっては『タイムズ』紙の日曜版と同じだったわ。日曜日以外の日は、読まないでとっておくの。日曜になると、お茶を入れて、腰を落ち着けて、ひとつずつ読んでいく。 それでソランジュの友達のことも知るようになったわ。メリーナ・マツーカス(Melina Matsoukas)は、私がハイスクール時代に大好きだったミュージック ビデオを撮った人だし、今はすごく好きな「Insecure」の監督をしてる。ソランジュは私のしていることに影響を与えてるけど、ソランジュを通して知った沢山の人達も、同じくらい私の仕事に影響を与えてる。ソランジュは自分に妥協を許さない。それも、今、私が自分の人生で見習おうとしてることよ。「私たちの商品を届けますから、一緒に仕事をしませんか。ただし、謝礼はないです」って言ってくる人達がいるのよ。基本的に私はその人達のためにマーケティングをするのに、それはないでしょ。実は今週、私のエージェントとも、そういう話をしなきゃいけなかったの。私は煙草を吸わないのに、電子煙草のキャスティングに応募させられたの。約束はちゃんと守ったけど、そんな仕事はしたくないから、最高にひどいビデオを送っといたわ。
ファッションは好きだけど、自分なりの視点でファッションを語りたい。「これがわたしのお気に入りのシャツよ。大好きなピンクだから」みたいな、ありきたりな感じじゃなくてね
コミュニティを作る
私のブログは率直なブログにしたい。あれこれ、手を加えたくない。嘘をついてる気分はすごく嫌なの。私が着てる服をすすめることもしない。私がやりたいのは、モノを売るより、コミュニティを作ること。コミュニティを中心に据えて、コミュニティに焦点を合わせたイベントを作り始めるのが目標よ。「私はインフルエンサー」とは正反対。「インフルエンサー」って言葉、つくづく嫌だわ。人に影響を及ぼして、その人がやりたくないことをやらせるなんて、私はしたくないもの。別にそれが悪いってわけじゃないけど、人の役に立ってないんだったら意味がないでしょ?
- インタビュー: Erika Houle
- 写真: Brad Ogbonna
- スタイリング: Yaminah Mayo