Alexander McQueenの残忍な重力
ロンドン・ベースのブランドによるプラットフォームスニーカーが、美しさ、残忍さ、そして日常、その間にあるスペクトルを接近させる
- 文: Ben Perdue
- 写真: Haw-lin Services

新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話
ブルータリズムの、太く無愛想な線がモダン・デザインを支配している。さらに今では、日常生活の中でも重い物やバカでかい物の方へ、重力によって引きつけられていることに気がつく。組み立て方式で作られる車にも同じことが言える。形が作られるというよりも、そこに無理矢理存在させられているかのようだ。また、荒削りな空間にも同じことが言える。貯蔵庫のようなレンガ作りの中で、誰もが安全にアートを消費できる、あの新しいテート・モダンの建物はその一例だ。
しかし、これらの先の丸いハッチバック車やコンクリートの一枚岩を別にすると、同じブルータリストが好むミニマルな巨大化であっても、Alexander McQueenのプラットフォームスニーカーの場合は、メンズであれウィメンズであれ、それがいかに靴を刺激しているかよくわかる。反ロマン主義に起源を持ち、彼らはエレガンスを探し求めて力の果てまで落ちていくことを期待されるブランドである。プラットフォームスニーカーは、女性のために確立されたアイテムであり、今でも男性は想定外である。もちろん、それはこのスニーカーの魅力をより高めるに過ぎない。ユースカルチャーの多くの怒れる若い男たちは、何十年にもわたって頑丈なソールのある、クリーパーズシューズ、コンバットブーツや他の超マッチョな靴でドカドカと歩いてきたというのに、なんという歴史の皮肉だろうか。
このモチーフに対してAlexander McQueenの回答は、シンプルを極めたエレガントなランチに、モッシュ用の靴で入り込むことだ。Common Projectsやadidas Originalのような人気のブランドと同じミニマルなスタイルを持ちながら、この靴はボリュームをめいいっぱいまで引き伸ばしている。装飾的な要素としては、1本のミシン目、パッドの詰まったシュータンにゴールドのロゴ、踵の黒いパネルがあるのみ。ここではソールがスターであり、丸さを強調するために分厚く横へと広げられている。高さを足して厚みを増すことで、シンプルなテニスシューズのシルエットがふくれ上がるのだ。クリエイティブダイレクター、Sarah Burtonは、冷酷な物から何か異様な物を作り出せる腕を見せることで、前任者が残した遺産を充分に理解していることを示す。McQueenでの引き継ぎを終え、彼女のデザイン方針について言葉を交しているとき、彼女はジャーナリストのSusannah Frankelにこのように話したことがある。「権限と保護。ここで仕事をしていると、常にそれをAlexanderのもとに戻さないといけないのです」。
- 文: Ben Perdue
- 写真: Haw-lin Services