アンチ ファッション

衣服で示す反プログラミングのガイド

  • 文: Adam Wray
  • 写真: Rebecca Storm

ファッションは、あらゆる方角からプレッシャーをかけてくる。長年にわたって広告が発してきたメッセージや、周囲のプレッシャーや、メディアからの刷り込みで増強されたプレッシャーが、体と同じくらい思考にも作用する。自分の体はあるべき形でない、けっして完成しない手持ちの洋服コレクションが自己実現を妨げる、と固く信じて疑わない。広告やソーシャル メディアが幻想を売りつけていることを充分承知しながらも、時間、エネルギー、金、快適を犠牲にして、動き続けるターゲットを追いかける。欲望を可視化した風景としてのファッションに引き寄せられると同じだけ、私たちは予め決められたアイデンティティ市場でのショッピングを放棄したいと切望する。今や、衣服をまとう行為に対処する新たな方法を考案しなくてはならない。

そこで、4つのアイデアを提案しよう。

生まれたときの装い

なぜ洋服をデザインしたいのかと質問されたカニエ・ウェスト(Kanye West)は、自明の理を返した。洋服に関心があるのは、裸でいるのが違法だから。もちろん、だからこそ裸体には有無を言わせぬ引力があるのだ。公共の場で裸体をさらすことは、タブーであり非実際的でもある。しかし、非論理的な帰結をはるかに超えたレベルまでミニマリズムを推し進める、究極の行為でもある。カニエの主張を証明しよう。もし何かが本当に重要なら、排除こそ、それを強化する最善の方法だ。裸になって、ヴィンテージで露出的なAlexander McQueenのランウェイ ルックに共感しよう。自分で自分を教育しよう。

記号のスクランブル

第一次世界大戦中、イギリス海軍は、目を錯覚させる軍艦の塗装方法「ダズル迷彩」を考案した。この迷彩柄は船を隠すのではなく、船の進行方向の判断を混乱させてへ敵の砲火を逃れることを意図した。これは、想像する以上に使いやすい技術である。私たちは常に、身に着ける衣服によって規定され分類される。しかし、この力学を反転させ、一貫しない物語を巧妙に作り出して、私たち自身に都合よく利用することができる。例えば、オーバーサイズのジョギング パンツにかっちりしたジャケットとネクタイを組み合わせれば、あなたの雇用形態に関する魅力的な曖昧性が高まる。複数の時代を参照して、それらが交互に往復するタイムラインを作ろう。情報のオーバーロードで、判断を跳ね返そう。矛盾の上に矛盾を積み上げて、騒音の中に信号を埋没させよう。

ベーシックへの献身

シリコンバレーを埋め尽くすヘザー グレーのTシャツのせいで、単一的な服装は不評を買った。しかし、私たちの多くは、未だに「一度決めて、後は迷わない」服装というアイデアを夢想する。ポイントは、諦めではなく、献身の形態としてベーシックを捉えることだ。ゆったりした衣類の快適な着心地に、細心の注意を払ってみよう。ベージュが織り成すシンフォニーに我を忘れよう。ミニマリストの彫刻家やオリンピックの飛び込みの選手のごとき精確さで、次回のTシャツ購入に臨もう。配慮はおのずと現れる。そして、ディテールの配慮はセクシーだ。

レイヤーの中へ逃げる

現代の文化生産時代を代表する2つの行為は「別目的での再利用」と「階層化」だ。近代的フォトモンタージュの登場によってアートは永遠に変容し、あらゆる創造の分野は過度な引用が横溢する場となった。私たちがこれらの手法に惹かれる理由のひとつは、コピー&ペーストが方程式にもたらす偶然の要素だ。その結果、私たちはふたつの異なるオリジナルが衝突して生じる矛盾やゆらぎを受け入れざるを得ない。さしあたり、衣服を身に着ける行為を、不適切な配置、転置、置換として受け入れよう。

  • 文: Adam Wray
  • 写真: Rebecca Storm
  • モデル: Stephanie Kristin / Another Species
  • ヘア&メイクアップ: Hair and Makeup: Ronnie Tremblay / Teamm Management