ビッグ データ時代のBalenciaga

心理マッピングに抵抗する

  • 文: Olivia Whittick
  • 写真: Tim Gutt

2014年、心理学者のマイケル・コジンスキー博士はケンブリッジ大学サイコメトリクス センターと共同で、Facebookでの活動とスマートフォンのデータに基づいた数学的なプロファイリング システムを開発した。これを利用すると、もっとも身近な最愛の人よりはるかに正確に、赤の他人があなたを理解する

クリックする度、ダブルタップする毎、あなたのもっとも隠れた姿の詳細な特徴を浮かび上がらせる広範な質問票に、無意識の回答が記入されていく。これらの心理統計は、あなたの欲求、恐怖、深夜のGoogle検索をトラッキングして、あなたの人格的特徴を突き止める。インスタグラムでフォローしているコメディアンによって、銃規制に関する立ち位置が推論されることだってありうるのだ。

精神分析にデータが駆使される現代において、あなたの内なる思考はパブリック ドメインだ。アルゴリズムは、瞬く間に、人間を複雑な分類区分に振り分ける。「プリティ ブライド」のようなロマンティック コメディが好きな心気症のペストリー シェフ、髪が薄くなりつつあることを気に病んでいる刀剣収集家の歯科矯正医、大規模イベント「バーニング マン 2017」のチケットを入手しているなりすまし症候群のライフスタイル ブロガー、等々。

企業はデジタルの破片を貪り、製品やサービスを欲しがっている人々に真っ直ぐターゲットを定める。ちなみにターゲットは、自分がそんな製品やサービスを欲しがっていることさえ知らない。将来を知りたければ、心理統計予言に頼ることだ。

モデル着用アイテム: ドレス(Balenciaga)

モデル着用アイテム:Tシャツ(Balenciaga)イヤリング(Balenciaga)

モデル着用アイテム: ブーツ(Balenciaga)フーディ(Balenciaga)

ビッグ データの前には、あらゆる人間が基本に還元される。すべての動きはトラッキングされて、最後は類型に収まる。それほどまでに予測可能な存在であることは失望だ。コンピューターさえあなたに退屈して、入力し終わる前にさっさと文章を完成する。

ラウンジから回転扉を見張っている、浮気なミセス・ロビンソン。裏ではハッカー集団「アノニマス」のメンバーとして秘密裏に活動する、戸別訪問のロビイスト。父親が開発した最新物件に居座っている、家出ティーンエイジャー。果たしてそれは現実か? それともファッショナブルな計略か? 予測不可能を体現しよう。微妙なニュアンスのアイロニーを駆使すれば、アルゴリズムに抵抗できる。

そんな複雑性を装うには、Balenciagaが最高だ。インターネットが太刀打ちできない不可思議な存在になることこそ、唯一の防衛なのだ。そしてBalenciagaは、あらゆる定義の企てから無頓着に身をかわす。それは企業としての文化か、あるいは現代への批判か? 職務として「不可解であること」が記載されているなら、着るべきものはBalenciagaをおいて他にない。

画像のアイテム;ミュール(Balenciaga)

モデル着用アイテム: ドレス(Balenciaga)イヤリング(Balenciaga)

モデル着用アイテム: コート(Balenciaga)タイツ(Balenciaga)

  • 文: Olivia Whittick
  • 写真: Tim Gutt
  • スタイリング: Michele Rafferty
  • セット デザイン: Chris Melgram
  • キャスティング ディレクター: Sarah Bunter / Bunter Casting
  • ヘア: Selena Middleton (Organic Colour Systems使用)
  • メイクアップ: Carolyn Gallyer / CLM
  • モデル: Louis / Wilhelmina、Thomas / Savalas、Luca / PRM、Zen / The Hive、Martina、David
  • 撮影アシスタント: Ho Haitran、Steve Hardman
  • ファッション アシスタント: Lilly Ellis
  • セット アシスタント: Alex Lloyd、Rosie Scott
  • キャスティング アシスタント: Zee
  • ヘア アシスタント: Ferral
  • メイクアップ アシスタント: Cassandra Maxwell、Dolma
  • 現場プロデューサー: Michel Bewley