ファッションの夜と昼
二分化の崩壊から実現する、ファッションの流動
- 文: Olivia Whittick
- 写真: Magdalena Kmiecik

ライフスタイル マガジンは、移行に伴うストレスを緩和するために、シンプルな解決策を提示する。お決まりのキャッチ コピーを繰り返し、昼間のスタイルにひとつひねりを加えれば夜のスタイルに早変わりすると言う。例えば、フラット シューズをハイ ヒールに変える、ヌードカラーの口紅を大胆な色に変える。主張のあるアイテムを取り入れれば瞬く間に変身、というわけだ。
しかし、その主張は、私たちの生活を取り囲むより大きな複雑さを無視している。仕事と遊びは別物という文化の前提は、すでにほぼ完全に崩壊した。おまけに、これほどテクノロジーに依存する現在、はたして昼と夜は以前のように明確な両極なのだろうか? 仕事は遊びであり、昼は夜であり、街は決して眠らない。それにもかかわらず、私たちにはそれなりの装いが要求される。
仕事と遊びは別物という文化の前提は、ほぼ完全に崩壊した。
テクノロジーに依存する現在、はたして昼と夜は
以前のように明確な両極だろうか?

「ムーンライト」という言葉は、どちらかといえばこっそりやる夜のアルバイトを意味する。夜の帳の下で、私たちは全くの別人になれる。そして、夜明けと共に「普段の」自分に戻る。昼間は、プロフェッショナルで、控えめで、「ノーマルな」特定の振る舞いが暗に期待される。だが、夜は獣を解き放つことができる。私たちは、光と闇のように相対する二面性で成り立っている。誰の中にも、ジキル博士とハイド氏がいる。そして、ふたつのアイデンティティは、ほんの些細な変装で切り替わる。
クラーク・ケントは、メガネを外してスーパーマンにり、メガネをかけて元の自分に戻る。昼モード
から夜モードへの移行には、コスチュームの要素が関わる。オフィスからクラブへ向かう途中、電話ボックスやトイレの個室の中で素早く変身する。影に表現の場を与え、いちばん不敵な自分へ進化する。アフターダーク サングラスをかけ、ケープの代わりに、お洒落で軽やかなチュールのドレスをまとう。ストリートで、単調という名の悪魔を調教して、スーパーヒーローへ変容する。
仕事は遊び、昼は夜、街は決して眠らない。
それにもかかわらず、それなりの装いが要求される

あなたが都会で暮らす若者なら、多分、時間をふたつに分けているだろう。生活費を稼ぐ昼と、パーティでバランスをとる夜。昼モードと夜モードが移行する時間は、あなたの慎ましいアパートにたったひとつしかない窓より小さいかもしれない。もし洒落たバーを飲み歩くことが仕事のうちなら、ふたつのモードはほとんど区別できない。肌色のストッキングと矯正用とはわからないパンプスで、カクテル アワーを上手く乗り切れるだろうか? 昼と夜、仕事と余暇。すべてが混ざり合う長い1日であるなら、わざわざカクテル アワーのために着替えることに、どれほどの意味があるだろう。
二分化が崩壊すれば、私たちの二面性を捨てるチャンスがやって来る。二分化が破綻して、時間と活動がひとつの大きな混合になれるなら、アイデンティティの流動も可能になる。夜の服を昼に着て、夜明けまで働き、日没まで眠ろう。カジュアルなビジネス ウェアでナイトクラブへ繰り出し、シルクのスリップで月曜日の会議に出席しよう。体制からの解放は、流動する能力、超人になる能力に他ならない。






- 文: Olivia Whittick
- 写真: Magdalena Kmiecik
- スタイリング: Zu SB
- モデル: Sara Hiromi / Midland
- ヘア&メイクアップ: David Colvin
- ヘア&メイクアップ: Kim Weber
- キャスティング: Wojtek Szaulinski
- 写真: Tim Hoffman
- 写真: Final Touch