私はあなたを映す鏡になる

New Icons: 両刃の現代ナルシシズムを体現する、Mykita x Bernhard Willhem バイザー「ダイスケ」

  • 文: Zoma Crum-Tesfa
  • 写真: Kenta Cobayashi

新たに登場したアイコンが語る、
今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話

ナルキッソスが川面に映った自分を見て恋に落ちたということは、同時に、川がナルキッソスの瞳に映った川自身を見て恋をしたとも言えないだろうか。小説家パオロ・コエーリョ(Paulo Coelho)はそう考えた。今日、私たちを取り巻く電子世界の光景には、そんな合わせ鏡のような接点が多様に存在している。最も端的な代表は、ビデオ会議画面の片隅に表示されているとつい見てしまう自分と相手の映像だろう。自分自身と他者の両方を見たいという衝動の抗い難い引力! それと同じ衝動が、私たち一人ひとりのファッション意識にも侵入している。今や私たちは「どう見るか」と「どう見られるか」を同時に考えなくてはいけない。Mykita x Bernhard Willhemが「ダイスケ」と名付けた片面ミラーのバイザーは、そのような両方向からのアクセスを可能にする。あなたの友人や恋人あるいは単に通りすがりの人は、虹色の輝きを発する曲面のレンズ越しに、あなたの顔と彼ら自身の顔を目にする。あなたとあなたを見る人が半分ずつの合体は、透明性の欠如ではない。喜ぶべき贈り物だ。あらゆるものを映し出そう。ただし、思いやりの気持ちを忘れずに。なにせ世知辛い時代だから。

MykitaのMYLOWレンズは思慮深い寛容を反映する。まったく重さを感じさせず、顔の前にただ浮遊しているかのような「ダイスケ」は、半公共空間でプライバシーも与えてくれる。ロサンゼルスからドバイ、北京からニューヨーク、その他時に日が沈まない北極越えの長距離フライトには最適。これらのレッド アイならぬレインボー アイのフライトには、まともなヘッドギアが必要だ。一か所に長時間押し込められて落ち着かない他の乗客から半ば隠れながら、充足された自分だけの時間に浸ることができる。まさにラッパーが夢見る状況、つまり豪勢な人生だ。大物であることは、世界中を飛び回る金持ちであることよりはるかに大きな意味を持つ。凄まじい自己管理への取り組みだ。全身くまなくローションを塗り、鍛え上げ、脂肪を削ぎ落とし、美しく磨き立てた身体は、威圧的で隙のない構えを見せる。ミラー グラスのRay Banをかけた警察官の不穏な雰囲気にかなり近い。目が心の窓であるならば、憎悪や挑発からも守るべきではないだろうか。同時に頬骨にも気を配り、有害な直射日光から守ればいいではないか。時に、目を覆うだけでは十分でない。

  • 文: Zoma Crum-Tesfa
  • 写真: Kenta Cobayashi