032c Resist で友情を育み、常識を破る

DJのペギー・グーと032cデザイナーのマリア・コッホは、阿吽の呼吸で語り合う

写真: Thomas Lohr
スタイリング: Marc Goehring
モデル: Peggy Gou

ふたりの人間が出会って、プライベートな話や夢、好きなことへと、とめどなく会話が弾んでいく。めったにあることではない。だが、ペギー・グー(Peggy Gou)とマリア・コッホ(Maria Koch)が初めて顔を合わせたとき、一目惚れならぬ一目友情が実際にありえることが証明された。韓国出身のペギー・グーは、ベルリンのナイトクラブ「ベルクハイン」でのライブセットと最近リリースしたEP「Once」によって、クラブとフェスティバルに欠かせない顔になったDJだ。そんなグーに長い間熱烈な憧れを抱いてきた032c Apparelのデザイナー、コッホは、遠くから憧れているだけの状態に終止符を打とうと決めた。そして、たった1度電話で話しただけで、グーはコッホの独創性に強く惹かれた。グーが032cのSSENSE限定コレクション「Resist」を身に着けたときから、夏のロマンスが美しく花開いた。

グーとコッホがそれぞれに活動している業界は、以前にも増して、互いに交差する機会が増している。そのうえ、音楽とファッションに対する関心、熱心なファン集団など、ふたりにはほぼすべてが共通している(グーは「Nike」ガールを自認し、コッホは「adidas」好きだが、こんな違いはものの数に入らない)。032c Apparelの創設者でありクリエイティブディレクターでもあるコッホは、過去数年、最も人気の高いアパレルブランドと肩をならべるようになるまでの成長を統括してきた。一方、プロデューサーとしての腕がますます評価されつつあったグーは、自分の内なる声に耳を傾けてクラブでプレイするようになり、2016年に初のレコードをリリースして以来、世界中で急速にファンを獲得している。

ようやくグーとコッホが対面した機会に032cのエヴァ・ケリー(Eva Kelly)が同席し、ペット、フライト中の怪しい過ごし方、仕事に関する理念を語り合うふたりの対話に耳を傾けた。その後、032cのコレクションの中でも最高にロマン溢れる「Resist」を着用したグーを、フォトグラファーのトーマス・ローア(Thomas Lohr)が撮影した。

Peggy Gou

Maria Koch

ペギー・グー(Peggy Gou)：犬を飼ってるんでしょ？

マリア・コッホ(Maria Koch)：ええ、トースティ。トム・フォードが監督した『シングルマン』に、直毛のフォックステリアが出てくるの。そしてコリン・ファース(Colin Firth)演じる主人公が、その犬の耳の後ろの匂いを嗅いで「フォックステリアは、いつだって、トーストみたいな匂いがする」って言う。そこから、トースティって名前をつけたのよ。いつでも、すごくハッピーな子。

私、犬を残して出かけるときの悲しさに、耐えられないと思うわ。

すごく淋しそうなのよね。

だからDJは犬を飼っちゃいけない、って言われるんだわ。

あなたの場合、基本的に、毎晩違う国でDJする生活でしょう？そういうライフスタイルを楽しんでる？それとも、ちょっとスピードを落としたいと思ったりする？

私はワーカホリックなのよ。何もやることがないときだって、何かすることを見つける。この夏はすごく忙しいの。でも、燃え尽きたりしないように、夏のあとに2～3か月休みをとるつもりではいるわ。何に対しても、それに合ったエネルギーを持つことが必要よね。あなたはどうなの？ 032cのペースは大変じゃない？ファッションはそれでなくてもスピードが速い業界だけど、032cは、もっと速いペースでコレクションを発表してるでしょ？

私の場合、業界のスピードというより、その時々に何が適しているかを感じることが基本なの。032cは大体6か月毎に新しいカプセルコレクションを発表していて、その合間に単体のアイテムも出してる。例えば「Resist」コレクションは、丁度いいと思うタイミングでプロデュースできたわ。適当な時期なんてものを待つ必要がないから、その点はとても自由よ。それに、「Resist」コレクションは自由がテーマなの。やるべきだと期待されることを拒絶して、物事の自然な展開に任せる。そこには力強さとロマンスがあると思うから…。あなたはいつもツアーに出ているから、一体、スタジオで仕事をする時間はあるのかしら？

Peggy Gou 着用アイテム：Tシャツ(032c)、カーゴパンツ(032c)、ベルト(032c)

私の部屋の中がスタジオだもの。ベルリンにいるときなんて、文字通り、ずっと家にいるわ。私の場合、あちこち移動してないときがお休みよ。

本当に、あなたの移動の量には脱帽だわ。何か、旅の秘訣はあるの？

韓国には、コンプレッションソックスっていう特別なソックスがあって、圧力で脚の血行を良くしてくれるの。メイクアップはなし。フェイスミストを使って、なるべくたくさん水を飲むようにしてる。長時間のフライトだとどうしてもアルコールを飲みたくなるけど、飲んじゃうと、あとでものすごく気分が悪くなる。

私は、飛行機でアルコールを飲むと、煙草を吸いたくなる。実は、機内での喫煙法を教えてくれるビデオも見たことがあるわ。

トイレの水を流すタイミングで、煙を吐き出すのよ。

(笑)難しいわね！ところで、ベルリンへ移る前は、ロンドンのファッション雑誌で仕事をしていたでしょ？今後、また、ファッションへ戻ることがあると思う？

ベルリンへ越してきたときは、私の音楽を本気で受け止めて欲しかったから、ドレスアップすることを敢えて止めたの。DJをするときは、白か黒のTシャツにしてた。でも、しばらくしたら「こんなの嫌。私はお洒落をしたい」と思い始めたわ。もうすぐブランドも立ち上げるし、コラボもするわよ。私はフルタイムでDJをしてるけど、自分をDJだとは定義しない。

じゃあ、仕事を聞かれたらどう答えるの？アーティスト？