フィレンツェのメンズウェア見本市の舞台裏

洞窟のように広がるルネサンス建築で毎年1月と6月に開催されるピッティ・ウオモは、メンズウェアの見本市という名の、ちょっとしたタイムトラベルである。そして、この1月のゲストデザイナーは、時代間をまたぐリミックスという概念をまったく新しいレベルにまで引き上げた。卓越した「優美な屍骸」ゲームのように、予想外のものが次から次へと出てくるランウェイショーが、中世風の廊下をするすると流れていく。今回タッグを組み、友人同士でもある高橋盾と宮下貴裕は、『2001年宇宙の旅』を思わせる宇宙服や、胸の部分に「Computer Malfunction」や「Human Error」と書かれたUndercoverとTheSoloist.のパファージャケットなどを発表した。一方、032c初となるメンズウェア ショーは、1950年代に文化人の避難場所となっていたブラック・マウンテン・カレッジからインスピレーションを得ている。1444年から1484年に建設されたPalazzo Mediciの控えの間をマルチメディア空間へと変え、エディターや友人、家族などがモデルとして舞台に立った。032cの豪華プレゼンテーションは、歌うフーリガンやフランスのハンティング ギア、デジタル時代のマニフェストなど盛りだくさんで好評を博し、建物の周囲には長蛇の列ができ、3度にわたるアンコールが行われるほどだった。また、今回1382年から1391年に建設されたメルカンツィア宮殿内にGucci Gardenがオープンしたことも特筆に値する。ここに、ラグジュアリーとストリートウェア、プレモダンの美学を合体させるというアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)のミッションが体現している。2010年代も終わりに近づき、「Google Arts & Culture」アプリで自分のセルフィーがミケランジェロのデッサンにマッチする時代、このピッティ・ウオモは文化とはシーズン単位で考えるものではなく、世紀単位で考えるものだということを思い出させてくれる。

写真家ハンナ・サイダー(Hannah Sider)が、SSENSEのため、ピッティ・ウオモの2018年秋冬コレクションの舞台裏を撮った。