マイケル3世式、オフィス ファッションの手引き
インスタグラム セレブが伝授する、オフィス ライフのサバイバルガイド
- 文: Michael the III
- 写真: Michael the III

イニシャルを刺繍したアンダーウェアは、職業的成功の証だろうか? 寝室の外側で幸せは見つかるか? 正直に暮らしながら、同時に、ビヨンセの「フォーメーション ワールド ツアー」のVIPチケットを購入することは可能か? 去年の夏、バックパックを背負ってオプラ・ウィンフリーの裏庭を横断しながら、オレが沈思熟考した疑問である。年が明けて、2017年を迎えた。そして、答が見つかった。オレたちが好んで自称するように、オレもまた社会に出て体で稼ぐ労働者である。それなりにふさわしい、職業に適した、そして誘惑的なオフィス ファッションを学習してきた。それを諸君に伝授する。さあ、始めよう。

午前10時44分。初めての出勤日というのに、すでに数時間の遅刻。出鼻からしくじったという見方もあるだろう。しかし、これはちゃんとした理由があるファッショナブルな遅刻だ。クルクル旋回しながらオフィスに入ったら、ハイキックして見せよう。これで君の第一印象が決まる。オフィス デビューを飾るオーバーサイズの大胆なアンサンブルは、「ヘイ、仲間たち、アタシは今日から出勤よ。コーヒーはブラック。履歴書は100%嘘偽りなし。あなたたちに会えて嬉しいわ!」を絶対確実に発信する。もちろん、真実ではない。コーヒーには砂糖を小さじ7杯入れるし、Excelの使い方なんて何ひとつわからない。それに、いい意味で元カレを思い出させる同僚がいて、実はちょっとばかり動揺してる。

午前11時01分。さて、コートを脱いで、机の上を整えて、ヘッドフォンをソケットに差し込む。と思いきや、ソケットを間違えて、3分53秒のあいだ、オープン コンセプトのオフィスの隅々までポーラ・アブドゥルが大音量で鳴り響く。実に生産的なスタートだ。しかし、そろそろ、本気で仕事に取りかからなくては。今日はやることが山ほどあるし、LinkedInの職業プロフィールの使う新しい写真だって、自分で撮らなきゃ誰が撮る?
オフィスでは、1日中いついかなるときも、発生する多種多様な仕事をこなさなきゃいけない。それを受け入れよう。新しい君の誕生だ! 仕事を依頼されたら、必ず「5分以内に片付けるわ」と答えること。そして、ストレスをインスピレーションの源にしよう。疲労困憊した社員には不朽の魅力がある。オレが見るところ、それを演出するにはふんだんにアクセサリーをつけるのがベストな方法だ。「家を出る前にもう一度鏡を見て、アクセサリーを13個追加すること」。確か、ココ・シャネル(Coco Chanel) の言葉だと思う。


午後12時14分。どうやら、オフィス内で噂が飛び交っているらしい。君の噂ならいいんだが。そうなら、そのうち角部屋のエグゼクティブ デスクに座ることも夢ではない。1時間半、印象的に仕事をこなした当然の評価だ。もし君の噂でない場合は、再度皆の注意を引き付ける手を講じなくてはならない。オレは衣装を変えることを提案する。引き裂いたスカートみたいな露出の大きいアイテム、あるいはシークインをあしらったフェドラの上にトップ ハットをかぶる方法なんかがお勧めだ。
午後12時17分。素っ気ない同僚が噂の中味を教えてくれる。オフィスに相応しくない格好をしてるヤツがひとりいて、ほとんど全員が同じ意見なんだそうだ。ということは、残念ながら、君の噂ではなかったということ。君の噂ではありえない。間違いなく、君のスタイルは職場の道徳観を最大限に尊重している。

ミーティング、それは他の部門からの多岐にわたる出席者に君を披露する最高の場。お色直しの後、新しいスタイルをまだ目にしていない人も多い。身分の低いのインターンであれば、オレみたいに最高にホットなスタイルで出現しても、ミーティングに呼ばれることは多くないだろう。でも、そんなことで挫けるな。今や、立派なキャリア ガール。周囲の視線を集める存在にならなきゃいけない。有効な戦略としては、予定時刻の前に会議室へ入って、出席者が集まるのを待つ。時間厳守に見えるし、それより何より、職場でセクシーなセルフィーを撮影するプライバシーを確保しつつ、室内を背景に撮影できることに意味がある。会議室のテーブルに長々と寝そべった姿を見れば、どれほどプロフェッショナルか、ファロワーたちも納得するというものだ。くれぐれも、君の上司をタグ付けすることと、会社にハッシュタグを付け忘れないように。

さて、君は仕事に気を配っている。しかし、オフィスは単なる工場ではない、家族だ。ランチタイムこそ、君をデスクに縛り付ける足枷をはずして、君の存在を同僚の生活に印象づけるべく、努力に励むときだ。これには、一分の隙もないディテールへの配慮が要求される。例えば、トミーはちょっとした面白い逸話を話した。何についてだったか、それは君の記憶にない。バーブは山羊が大好きだと言った。何者か知らないけどお偉いさんらしい誰かが、どうしてもランチの前に片付かなきゃいけない仕事があると言った。そういう個々の情報に対して君にできることは大してないが、君の私的なスタイルで各人を驚嘆させることは可能だ。恐れることなく、あらゆることを自分自身と関連付けて受け止めよう。

午後2時36分になった。再度、デスクに向かっている。わずか2時間のランチタイムだったけど、休憩してリフレッシュできた気分だ。同僚たちは君と同じ気分ではないらしい。怖い目で睨んでるし、プライベートについて尋ねても答えてくれないし、沈黙を守るように要求する。きっと疲れてるんだろう。こういう状態では明るい前途を期待できないので、オレとしては、早急に違う部署へ異動することを勧める。不機嫌ほど生産性を損なうものはないからな。


君がオレの助言に従ってるなら、「ビジネス カジュアル」という言葉をしょっちゅう耳にするはずだ。「マイケル、もうちょっとビジネス カジュアルな格好にできないかな?」とか「みんなビジネス カジュアルなのに、君だけはこれから一風呂浴びそうな格好だ」とか、大体こういう文脈だ。言っておくが、オレが例のバブルTバックで出社したのはたった1度だけだ。いずれにしても「ビジネス カジュアル」とは何を意味するか。オレ自身、それをまだ解釈していないと言わざるを得ないのは遺憾だが、英文学を捨てて、もっと実際に役に立つ、ルネッサンス期のホモエロティック ポーズを専攻した経歴だからあしからず。ただし、「ビジネス カジュアル」が「ビジネスはカジュアル」を暗示しているのは間違いない。つまり、着たいものを着る、やりたいことをやる、Grindrを見る、ランチを2回食べる、デスクでサーモンを食う、ウォーター クーラー(および、その周辺で交わされる噂話)に合わせてタップ ダンスする、パーティーを開く、ちっちゃいネコ用のちっちゃい帽子のブランドを立ち上げる。すべてOK。大まかに言えば、自分の家にいるときとおなじように行動すればいいわけだ。

午後5時。たっぷり1日の仕事を終えた、多かれ少なかれ。いまだにこの「オフィス」がどうまわっているのか不明だが、君は自分自身について多くを学んだ。退社時の君は、出社時の君より向上し、円熟している。オフィス ウェアにインスパイアされたハイ ファッション、そして東洋と西洋、メンズとウィメンズ、オードリー・ヘップバーンとシルベスター・スタローンをミックスしたスタイルの12着で成功を収めた君は、会社人生を全うする自信がある。だが、考えてみろ。これから一生毎日12着ってのは、えらく金がかかる。果たして、会社員にそんな金があるか? すぐにでも退職して、その金を使わずにすませるほうが賢いぜ。

- 文: Michael the III
- 写真: Michael the III
- スタイリング: Michael the III
- モデル: Michael the III
- ヘア&メイクアップ: Michael the III