New Icons: SSENSE 限定 Vetements Flame Boots

パリのデザイン集団がグラムロックを讃えるユーモア溢れる一面を披露

  • 撮影: Jonas Lindstroem

「恋人に求める条件は?」と尋ねられれば、誰しも冗談めかしながら、バラエティに富んだ条件を際限なく並べ立てるでしょう。とはいえ、ほぼ例外なく誰もが挙げる条件があります。それは「一緒にいて楽しい人がいい!」というもの。ユーモアのセンスが一致するということは、最も大切な価値観が一致していることに他なりません。それはファッションのセンスにも当てはまります。お互いのファッションをリスペクトし合えるカップルは、魂に多くの共通点があるはず。つまり恋の相性は、ユーモアとファッションの相性に依存しているのです。

恋を育むうえで、ユーモアのセンスが重要な役割を果たすように、ファッション アイテムも重要な役割を果たします。ファッション アイテムと言えば、シューズは不可欠の要素。そしてユーモアは、Vetements の Demna Gvasalia が師事した Martin Margiela が掲げるキー コンセプトの一つです。Vetements のデザインには、このコンセプトが色濃く受け継がれています。ハイ ファッションの DHL シャツから、ライトヒールなソック ブーツ、さらにリバーシブルのボマー ジャケットに至るまで、コレクション全体にスラップスティック的なユーモアのエッセンスが込められています。しかし、破壊的なユーモアの魅力が最も表現されているのが、SSENSE が限定販売するこのプラットフォーム ブーツです。アイコンとなる円柱状のヒールには、師に対する Gvasalia のオマージュが感じられます。また、ブーツのサイドには、まるで燃えさかる大地の上を歩くかのように、レッド、オレンジ、イエローで表現された炎のアップリケがあしらわれています。地獄のフランボワイヤン様式を体現するこのブーツは、究極のユーモアであり、グラム ロックの頂点です。

かつてのギャング カルチャーが過去の物となりつつある今、Vetements のユーモアはオーセンティックなギャング ファッションに根ざしています。今日では、かつてミュージシャンやバイカーたちに独占されていたサブカルチャー的なアイテムが急速に解体され、さまざまなコスチュームへと姿を変えつつあります。1990 年代初頭にグランジが登場すると、グラム ロックは直ちにカルチャー シーンの底辺に埋没しました。この忘れ去られようとしているカルチャーの復権を目指し、ベルベット、フリル、シークインを最高品質の仕立てで駆使する Vetements の努力は、古き良き時代の空気を呼び起こします。人の外見が変わったとしても、その人の本質は変わりません。かつて愛したアイテムをワードローブに加える醍醐味の一つは、そのアイテムと共に当時の熱狂が心の中に蘇ることです。

  • 文: Bianca Heuser
  • 撮影: Jonas Lindstroem
  • スタイリング: Marc Goehring