New Icons: Yohji Yamamotoの折り紙に対するアンチテーゼ

Yohji Yamamoto が2016 年の春夏コレクションで発表した茶色の紙袋がオフィスのドレス コードを破壊

  • 撮影: Brent Goldsmith

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新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話

テイラーリングのフロンティアを 40 年にわたり開拓してきた Yohji Yamamoto は、驚異的なパイオニア スピリットの持ち主として、未だ守りに入ることなく、未知の領域への挑戦を続けています。新しい試みに果敢に挑戦する Yamamoto の天衣無縫な性格は、過去数十年にわたり、常に固定観念を打ち破る触媒の役割を果たしてきました。2016 年の春夏メンズウェア コレクションをパリで発表した後、Yamamoto は Vogue の取材に対し、「これほどタイトなスーツに挑戦したのは初めてです。実に興味深く、また困難な体験でした。なぜなら真剣に取り組まないと、単なる真面目なビジネスマンのスーツになってしまうからです」と告白しています。タイトなスーツに初挑戦した Yamamoto は、その英知で停滞する市場に新風を吹き込みました。「真面目にならないように真剣に取り組んだ」という彼の言葉は、けだし名言です。

シグネチャーである「黒い制服」を前面に押し出したスタイルを継承しつつも、ツーピースのスーツをグリーンのジャカードで仕立て、ブレザーに抽象表現主義のショルダー パネルをあしらい、シャツの胸元に犬を散歩させる骸骨を書き殴った Yamamoto は、ブリーフケースの概念も塗り替えました。ブリーフケースに対する彼の回答は、なんと茶色の紙袋です。「Your Junk Email Box(あなたの迷惑メール ボックス)」と書き殴られた紙袋は、悪びれぬ態度を主張していますが、実用的でもあります。ビールのボトルが入っているとしか思えぬ紙袋は、高価に見えないぶん、鍵の付いたアタッシェケースよりも貴重品を守る役に立ちそうです。トロイの木馬のようなこの紙袋は、繊細な仕立てとシルエットに対するオマージュであると同時に、決して遊び心を失わないデザイナーの象徴です。Yamamoto が再び示したように、完璧に仕立てられた漆黒の装いは、「私を見るのは構わないが、あなたに構っている暇はない」と宣言するのに最適です。分別のある服装とクールな服装は必ずしも一致しません。レザーが紙よりも「洗練されている」という固定観念も、普遍的な常識ではありません。価値観の異なる人々から寄せられる批判的な視線は、すべて迷惑メール フォルダに放り込んでしまえばいい。実にクールな主張です。

もちろん、彼の試みすべてが業界初というわけではありません。どれほどラグジュアリーから逸脱したコンセプトであっても、何らかの前例は存在するものです。この場合は、Jil Sander が 2012 年のメンズ秋冬コレクションで発表した、サイドにブランド ロゴをプリントした茶色の紙袋、Vasari Bag です。とはいえ、Sander の試みと Yamamoto の試みを安易に結び付けるべきではありません。Sander のスマートな Vasari Bag は概念論への叙情歌でした。しかし Yamamoto の紙袋はしわくちゃで、袋の中から感情が溢れ出ています。この紙袋は全力でこだわりを主張しており、自分に注目しろと周囲に叫んでいます。それは繊細な折り紙へのアンチテーゼであり、機械による製造過程で付けられた折り目や切れ目さえも、人の手と欲求で塗り潰されています。この紙袋は、Yamamoto の来たるべきスタイルに対する想いを予言するものであり、2016 年の秋冬コレクションで発表されたベースボール キャップにベスト マッチするアイテムです。そのキャップに書かれていたスローガンは、「Corporate Motherfucker(社畜)」です。

  • 文: Zoma Crum-Tesfa
  • 撮影: Brent Goldsmith
  • スタイリング: SSENSE