Eytysのストックホルム ガイド
ブランド創設者のマックス・シラーとジョナサン・ハーシュフェルドが、スウェーデンの首都を案内する
- 写真: John Scarisbrick

ストックホルムと聞いて思い浮かぶイメージは、一般的に、家具のデザイン、一風変わった建築、町全体に漂う上品で華麗な雰囲気だ。しかしそこには、逸脱した歪みも存在する。夏には陽光が居座り、冬ともなれば、観光客は消え失せて街は闇の底に沈む。ストックホルムで誕生したブランドEytysのDNAにも、そんな二極性が流れている。Eytysを有名にしたのは、サブカルチャー的コンセプトを奔放に並置したフットウェアだ。例えば、プラットフォーム スタイルの山歩き用ブーツ。創設者のマックス・シラー(Max Schiller)とジョナサン・ハーシュフェルド(Jonathan Hirschfeld)は、ティーンエージャーだった頃、イサーク・グルネワルト(Isaac Grunewald)が描いた表現主義的フレスコ画の周囲に建築されたマクドナルドで出会った。これぞリミックス精神の証でなくて、何だろう? 秋分の日を過ぎてすぐのある1日、シラーとハーシュフェルドが、彼らのドッペルゲンガーみたいなEytysショップの店員ノラ&オリビアと一緒に、ストックホルムの至宝を巡る庶民的なツアーへ案内してくれた。

モデル(右):スニーカー(Eytys)
名物
Sturehof
街で最高のレストラン! 僕らの大のお気に入りだけど、それは僕らの両親、そのまた両親の代からさ。ストックホルムにしてはとても珍しく、夜中の1時まで食事ができて、バーは2時まで営業。お薦めはクネッケブレードっていうスウェーデンの乾パン。それに、燻製のたらことホイップクリームを混ぜたのが付いてくるんだ。「5品コース」もお薦めだな。スウェーデン料理の中で一番美味しい5品だよ(ケバブ ピザは出てこないけどね)。先ず、グラブラックスっていうサーモンのマリネ。次に、マヨネーズで和えたエビをバター トーストに載せたスカーゲンローラ、それから2種類のニシン料理、最後にスウェーデンならではのマスタード付きパテ。ビールとキンキンに冷やしたアクアヴィットのショットを飲みながら、味わってくれよ。

ふたりの思い出
ニーブローガータン18番地のマクドナルド
ここのマクドナルドには、1938年にイサーク・グルネワルトが描いた巨大な壁画がある。ストックホルムの中でも高級なエリアで、マクドナルドができたのはずっと後になってから。通りの向かい側にはユダヤ人のコミュニティ センターがあって、僕らが子供の頃には、ティーンエージャーのパーティをよく開いてた。13歳以上じゃないと入れなかったけどね。実は、僕たちが初めて出会ったもそこ。ふたりとも、中に入れろって警備員と口論してたんだ。それ以来ずっと友達で、後には同じ高校に通うようになった。

眺望
Kaknästornet
ストックホルムでいちばんクールな建物。60年代に建築されたブルータリズム様式のテレビ塔で、最上階にかなりひどいレストランがある。とりあえず見晴らしが良いから、行ってみる価値があるよ。最低のレストラン体験をネタにしてもいいしね。すごく美しい建物で、街のどこからでも見える。たいていの人は目障りだと思ってるけど、建築として、素晴らしい建物だと僕らは思う。

沈没船
ヴァーサ博物館
17世紀に、スウェーデン国王のグスタフ2世アドルフ(Gustavus Adolphus)が、国の威信をかけて、世界最大で世界最悪の戦艦を建造した。手に入る限りのオーク材をオランダから輸入して、巨大な戦艦を完成させたけど、あんまり大量の大砲や飾りを積み込んだせいで、完全にバランスが崩れて、航海できないほどの重量になったんだ。だから進水後30分であえなく沈没。何百人もの乗組員が命を失った。50年代にひとりの男がストックホルム沖で沈んでる戦艦を発見して、15年掛かりで引き揚げる方法を考えたんだ。海底36メートルの泥の中でほとんど原型のままだったというから、すごいよね。今は博物館が作られて、船のまわりを歩いて見ることができるよ。以前は実際に乗船できたんだけど、今は腐敗が進んでるから見るだけ。未来の世代のために、保存する方法を一生懸命に考えてるそうだ。

キノコとレイブ
リッル ヤーンスの森
リッル ヤーンスの森は、かつて王様の狩猟の場だったけど、今は街の中心にある。だから地下鉄でキノコ採りに行けるんだ。最高のメディテーションだろ。森の中の隠れたところにクールな給水塔があって、僕たちが住んでた界隈のキッズは、たいていそこで初めてのマリファナを経験したもんさ。野外パーティがあって、夏にはレイヴも外でやるんだ。1年のうち3ヵ月は太陽が完全に沈まなくて、すごくいいよ。昼間みたいじゃないけど、暗くもない。森の中に入っていくと、ベースの音も近所に届かないし、警察がやって来ることも滅多にない。

スウェーデン ピザ
Gröne Riddaren
Gröne Riddarenは「緑の騎士」って意味。スウェーデンには独自のピザの伝統があって、みんなしょっちゅう、キャベツのサラダ(キャベツとビネガーと黒胡椒)、ケバブの肉、ベアルネーズ ソースをトッピングしたピザを食べてるんだ。いちばん一般的なピザだから、どこででも、誰にでも、聞いてみるといいよ。みんな知ってるし、みんな食べてる。ここは場所が良くて、街でいちばんの高級なエリアだから、余計に意外なんだ。

モデル(左):スニーカー(Eytys)/モデル(右):スニーカー(Eytys)
32番
Sawadee Kungshallen
Sawadeeは、陳腐なフードコートの中にあるタイ料理レストランだけど、味は間違いないから、行かない手はないさ。タイの人たち専用の秘密のメニューがあるけど、僕らには見せてくれない。メニューの32番はこの街で食べられる最高のタイ料理。とても酸っぱくて辛いスープに、ライスのヌードル、魚肉団子、豚のひき肉、ピーナッツが入ってる。

モデル(右):スニーカー(Eytys)

モデル(左):スニーカー(Eytys)/モデル(右):ブーツ(Eytys)
完璧な夕べ
Treat / Babette
先ず、キッズが偽のIDで潜り込んでる、街でいちばん安いバーでビールを飲む。その後、すぐ隣にある僕たちのお気に入りのレストランで食事するといいよ。Treatにはスロットマシンがあって、ボタンを押すだけで小金を稼げるかもしれない。アルコールを目当てに街中からキッズが集まってくるから、雑多な人間が混ざり合ってる。Babetteは庶民の宝だな。街でいちばんのワインが飲めるし、料理はほんとに美味しいし、値段は良心的だし、眺めも良い。僕たちも、いつも最後はここで締めくくる。友達のカーステン・ヘラー(Carsten Höller)は専用のテーブルを持ってるくらいさ。客はみんな知り合いだから、プライベートのパーティみたいなんだ。地中海のテイストも入ったスカンジナビア料理で、メニューは日替わり。レベルは高いよ。(音楽はうるさいし、いつもごった返しているから)ミシュランガイドの星なんて欲しがらないだろうけど、味はミシュランガイドの星付きレストランに引けを取らない。

モデル(左):スニーカー(Eytys)/モデル(右):スニーカー(Eytys)
宣伝
Eytysの街、ストックホルム
僕たちが子供の頃、ここはスケート ショップやストリートウェアの店が並んでる通りだった。おもしろいだろ。ここにはそういう伝統があったってことだ。僕らが10歳の頃、スケート シューズやワークウェアのDickiesがあるのはここだけだった。Eytysのショップは、BurberryとかPradaとか、高級ショップがあるエリアの端っこだけど、それでいいんだ。Eytysは高級な環境にはそぐわないけど、このエリアの人の自然な流れには入りたかったから。
- 写真: John Scarisbrick
- モデル: Nora (Iris) Svenson、Olivia Bergman