サングラスとネイル

美しい鎧の可能性

  • 文: Emily Segal
  • 撮影: Brent Goldsmith

衣服を「鎧」と呼ぶのは、よくある決まり文句にすぎない。実際のところ、私たちの体のもっとも傷つきやすい部位を保護するのは、サングラスとネイルなのだから。爪床や指先、角膜や網膜。これらの部位が埃や細片に侵されると、失明することもあるし、携帯でメッセージを打てなくなることもある。

ネイルは、指紋がある指先を補強し、人間進化の利点を強化する。サングラスは、「心の窓」を隠して、覗き魔が私たちの魂を覗き見することを妨げる。
だが、サングラスとネイルには、単に保護以上の共通点がある。どちらも人を遠ざけ、同時に招き寄せる。あらゆるものを鋭利に変えつつ、触れることを躊躇わせる。共に、アクセサリーと身体改造の中間領域に属する。

10のサングラスに10のネイルを合わせてみた。あなたをずっとずっと強くしてくれる10組のペアを、ご覧にかけよう。

  1. Ann Demeulemeesterと邪悪な黒曜石のブラック

南カリフォルニアでは、ダーク レンズのサングラスが定番。そんなギャングにお似合いのサングラスに、ベルギー流のちょっとした意地悪を付け足すと、侵入を拒むバイザーもしくは遮蔽物になった。尖った黒いネイルで、威嚇は完璧。少しばかり人を怖がらせたいときは、尖った漆黒のネイルが最高に効果的だ。


  1. Damir Domaと空中浮遊

どちらも建設現場の足場のようなサングラスとネイル。レンズとフレームの間に作られた空白部分は、いわば会話中の「…」に相当する。言葉にならないことほど、注意を引きつける。まさに、派手な見せびらかしや過剰な密度からの解放だ。


  1. Dolce & Gabbanaと散りばめたパール

小粒のパールは腐ることのないキャビア! まとめてあしらっても、ラインストーンほど華美じゃないし、貴金属ほど陳腐でもない。一連のパールは昔から女性らしさの象徴だけど、指先と目の周囲にあしらえば、セクシーで、エキセントリックで、神秘的に表情を変える。


  1. Gucciとキラキラ輝く
    ラインストーン

このGucciのメガネは素晴らしい矛盾だ。顔を覆ってしまうほど大きいのに、隠す代わりに明るく輝かせる。ラインストーンを散りばめて、最高に純粋な楽天性。あたかも、化粧台の照明を顔面に携帯しているかの如し。レンズが透明なので、目立ち過ぎたり暑苦しくなることはない。


  1. Saint Laurentと盛り上がった滴

カート・コバーン(Kurt Cobain)ですっかりお馴染みのサングラス。曇ろうが雨が降ろうが、ずっとかけていたいと思わせる憂鬱な雰囲気が漂う。ネイルの上に垂らしたマニキュアの滴には表面張力が作用して、完全に乾くことも流れることもない。少しばかりサイケデリックな効果。


  1. Dries Van Notenと過度な一致

サングラスとネイルをマッチさせるのは、支配欲の極地だ。とことん極めよう。混沌たる世界には、まとめ役が必要だ。


  1. Gucciと不条理な懐古趣味

こんなネイルをした女性の耳障りな声が、聞こえないだろうか? クラシックな四角形のネイルも、極端に誇張すると空恐ろしい。べっ甲のアビエーターには、スキャンダラスな過去がまつわる。ところが、両方の組み合わせは、まったく感傷とは無縁なアメリカ文化を象徴する。


  1. Mykitaとクロームの階調

指先と視界に、人工的に生み出された朝の日光が訪れる。自然界に、これほど完璧でスポーティーな偏光グラデーションは見当たらない。おまけに反射する。目であれネイルであれ、あなたを見る人は鏡に映った自分を見ることになる。


  1. Mykitaと全面カバー

隠密では不十分なときがある! 時には、すべてを覆い隠す必要がある。1990年代にアメリカ軍が形容したごとく、「変動しやすく不確かで入り組んでいて不明瞭」、すなわち「Volatile, Uncertain, Complex, and Ambiguous」略して「VUCA」の時代に私たちは生きている。まさに現代に最適のサングラスとネイル。


  1. Maison Margielaととにかくシルバー

ダサいインテリは姿を消した。ワイヤー フレームのメガネを奪われ、コーディングのマニュアルも捨てられて、残ったのは冷徹なエレガンス。ピュアなシルバーのネイルがクールを演出する。


  • 文: Emily Segal
  • 撮影: Brent Goldsmith
  • スタイリング: Juliana Schiavinatto
  • ネイリスト: Khristinne Manuszak for TIPS NAIL BAR / P1M
  • ヘア&メイクアップ: Susana Hong / P1M
  • モデル: Alana, Jamila, Chanelle, Rene, Maxime, Amarindi, Ali, Alyssa, Carly, Lindsay
  • 撮影場所: The Darling Mansion