Thom Browne、
ペットへの情熱
ダックスフンドの形をしたバッグが、メンズウェアに隠された犬のDNAを暴く
- 文: Emily Friedman
- 写真: Haw-lin Services

新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話
ツヤツヤと驚くほど細長い体をしたダックスフンドは、長年にわたってメンズスタイルのミューズとされてきた。その存在感にはパワーがある。Andy Warhol、E.B. White、David Hockney、Thom Browneという正真正銘のダックスフンド・オーナーである彼ら選ばれしグループの面々は、そのパワーを常に利用してきた。想像してみよう。ニューヨークの伝説的なベメルマンズ・バーで、この4人がひとつのテーブルに腰掛けている。夜も更け、彼らは他の客よりも長居してしまった。そして、その陽気な笑い声を証明するかのように、マルティニの空になったグラスがあちこち転がり、Warholの愛犬、Archieがナプキンの下から顔を出している。ここに集まった男たちは、誰もが非の打ち所のない着こなしをしているが、この場での真のアクセサリーは彼らの無二の友、愛犬なのである。

この架空のパーティを頭に浮かべてデザインされたThom Browneの新作、Hector Browneバッグは、実物大をした愛犬でありながら小さなカバンでもあり、きっと犬も人も振り向くであろう魅力にあふれている。左右で異なる愛嬌のある作りを強調することで、このペットをミューズとして讃えている。アメリカの作家、E.B. Whiteが飼っていたダックスフンド、Fredはたびたび主人による愛のこもったエッセイの主題になってきた。「Fredはいろんな意味で子供なんだ。彼はいつも自分のイマジネーションや冒険に対する愛を満足させるため、大袈裟に騒ぎ立てようとしていた。まるで犬のCecil B. DeMille(娯楽性に満ちた大作を数多く発表した、20世紀前半を代表するアメリカの映画監督)だったんだ。」とWhiteは書く。
Thom Browneが所有する愛犬のダックスフンドと同じ名前、Hector Browneと名付けられたバッグは、美しい仕立てにヒネりをきかせた2016年秋冬コレクションにおいて、至るところに登場する常連となった。彼は持ち運び可能なダックスフンドの分身としてだけでなく、スーツ、帽子、ケープレットの柄としても登場している。信ぴょう性を高めるためにゴールド色のドッグタグを付け、大胆な配色を施されたペブルレザー製のHector Bagは、日常の必需品を持ち運ぶならうってつけのサイズである。平らなところに置けば4本の足で自立するし、飛行場のセキュリティーに連れて行けば、犬用の書類の提出を求められるかもしれない。彼の存在は、機能的でありながらもいささか風変わりでもあり、あなたのカバンが並ぶクローゼットの立派な資産になるのだ。












- 文: Emily Friedman
- 写真: Haw-lin Services