トレンド警報発令中

SSENSEのお天気お姉さん、エリカ・フウルがお届けするこの夏のオシャレ予報

  • 文: SSENSE エディトリアル チーム
  • 写真: Rebecca Storm

母なる自然? そんなのは知ったこっちゃない。テイクアウトの食べ物とか高級スキンケア商品でも空から降らせてくれるのでない限り、おそらく知る必要すらないだろう。SSENSEのお天気お姉さんこと、私エリカ・フウル(Erika Houle)が、この夏に唯一使える天気予報をお伝えしよう。夏至が正式に過ぎ、1年でいちばん日照時間の長い時期を過ぎた今、回り回って、ちょっとした幸せを感じていることだろう。そしてほっとしていることだろう。肌を刺す冷たい風が、暖かい緑の香り漂う心地よい風に変わり、日中に引きこもってドラマの一気見をして過ごした時間が、今は公園で友だちと過ごす時間に変わった。人肌恋しい季節のことは、かなり意識的に、忘れ去った。これらすべての変化に加え、夏ならではのものが盛りだくさん。ジェラート! アペロール スプリッツ #sunsoutbunsout — と、盛りだくさんすぎて、すでにお腹いっぱいに感じる人もいるかもしれない。でも心配ご無用。私の専門的なオシャレ予報を見れば、豊富な情報をもとに、シーズン全体を通してベストの判断ができること間違いなし。

不条理気象

ポスト スプリング、プレ オータム。北風を先取りして凍える日があるかと思えば、次の日にはエアコンをがんがんに効かせつつ、体中のあらゆる割れ目に汗染みを作っている。2018年において、もはやシーズンの意味は完全に失われている。地球温暖化の影響は避けられないのだ。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)がBalenciagaの2018年秋冬コレクションにおいて、おそらく皮肉でもなんでもなく、豊富な重ね着の数々を見せたように、装備不十分なのは、もはや可愛くもなければ、許されるものでもない。だからこそ、衣替えをするために気温が確実に下がるのを待つ必要などないのだ。この夏は、予測不可能な状況にもばっちり対応できるようなスタイルで行こう。おすすめは、フェイクファーで暖かさもカバーするかわいいヒール サンダルと、ジッパーで簡単にカプリ パンツからショート パンツに早変わりするパンツ。クロップド トップスを着るようになったら、パーカーはクローゼットに掛けておくことになるので、収納ボックスは捨てて、ハンガーを用意しよう。

バナナの亡霊

熟れすぎたバナナほど、完璧に詰めたお弁当を台無しにするものはない。バナナは、チーズイットやグラハムクラッカーの入ったジップロックの袋を、ムスクのような香りで充満する。こすると香るシールのように、強くこすればこするほど香りが長続きし、より強烈な香りになる。実際、バナナの香りのシールもある。基本的には、もともとそこまで嫌な香りではないからだ。何がうんざりするかって、ハンドバッグやバックパックの中から匂ってきたり、あるいは齧ったサンドイッチに感じたり、車の座席の下から漂ってくる、バナナが放つ異質な存在感だ。バナナの亡霊である。こちらに気付かせようと存在を主張してくる、あの間違いようのない香り。もちろん、私としては、良質の香水ならこうして香りが残ってくれるのは大歓迎なのだが。おそらくそのせいで、最近ますます、葉巻の箱やモーターの潤滑油やサドルのような、わけのわからない合成の香りが出てきているのだろう。ありふれた香りが吸い出されて、従来とは異なる器、香水のアトマイザーに入れられ、首筋にシュッとつけられる。私たちみたいに、目新しいものにもすぐに飽きてしまうような客層には、時として、最も謎な香りより、むしろ最もありふれた原料を使った香りの方が、人気が出るものだ。今こそバナナの香水を流行らせよう。

怒りのスリッパ

夏は、妥協の連続だ。いくら私たちが快適さとファッション性を実現しようとしても、気温が上がれば、どちらかを選ばざるをえない。露出しすぎになるか、通気性が悪すぎるかを繰り返しながら、昼間の化粧が最高にノッテいる状態と汗ベタベタで脂がテカった状態との、微妙な境界線を制するため、試行錯誤を重ねている。これは本当に疲れる。こうした実用面と精神面における格闘の結晶のようなアイテムが、スリッパだ。風通しはそこそこ良いのだが、つま先も丸見えになるので、私としては、うわぁという感じだが。この履き物は、うだるように暑い地下鉄の満員電車に乗り込もうと、押し合いへし合いするような移動にぴったりだ。それだけでなく、突如、座っている大統領の頭に投げなければならないようになった際の、理想的な早撃ちの道具にもなる。スリッパを履いていて、口論から猛然と立ち去ろうとしたことはあるだろうか。かかとがスリッパに当たるときの、漫画の効果音のようなペタンペタンという音ほど、それがどのようなものであれ、吐いたばかりの捨て台詞の効果を弱めるものはない。これこそ、怒りのスリッパ。汗でベタベタし、イライラしていて、もしかすると、日焼けで肌の皮だって剥けているかもしれない。が、少なくとも極寒の冬ではないんだから、まぁいいよね。

速攻サングラス

その時々の気分を、サングラスで表現するというのは、そう悪くない考えのはずだ。その日、その時点での気分を、感情の変化のスピードに合わせてクリップオンが代弁してくれる。怠惰な気分? やる気が出ない? ベッドでひとり孤独に過ごしている? それなら、小さくて薄いサングラスをさっと着ければ、魅力がアクセル全開で急上昇するのがわかるだろう。小さなサングラスの大胆な形は、スピード スケートの瞬発力に猛禽の素早さを合わせたような、純粋なパワーを思い出させる。ミニチュアのような流線型は、エアロダイナミクスの結晶だ。活発な敏捷性の表れなのだ。ありがちではあるが、外出することになっているのに、直前になってやっぱり家にいたい、ドタキャンしたいという気持ちがうずいてお困りなら、このミニ サングラスにモチベーションを求めてみるといい。逆に、物憂げなプールサイドでバカンスを過ごすための荷造りをしているところなら、大胆さが必要だ。しかも、思い切り大胆にならなければ。そんな時に選ぶならハート型。Chloéがいい。自分がこの世界で見てみたいと思うリチャード・フィリップス(Richard Phillips)になろう。

ラムソン、ラムソン

お日様が照っている時間は、冷凍庫のように冷え切った、やたらと高いスーパーの混み合った通路で物を探し回って過ごすなど言語道断だ。とはいえ、出会い系アプリTinderで決まったBBQデートに手ぶらで行っては、間違いなくマッチングは実現しない。というわけで、持って行くものは戸外で確保するのがおすすめだ。夏はあっという間に終わってしまう。そして、夏ほど、自称採食者になるのにうってつけの時はない。森林床や歩道の割れ目に生えるような野生の食物こそ、このシーズン最も人気のアイテムなのだ。グルメなスパゲッティにも、二日酔いの朝の朝食をパワーアップするのにも使えるということから、特にラムソンは要注目だ。当然、地元産である。ニラのようでもありネギのようでもあり、それでいてわずかに辛味がある。ニンニクに似た葉の生息時期は短く、見つけるのはかなり難しい場合がある。現に、ラムソンの闇市場まで確認されている。生にせよ、茹でるにせよ、ピクルスにせよ、ピュレにせよ、ヒントはあちこちにある高級レストランのメニューから盗もう。そして、バスケットにすべて詰め込んだら、ピクニック参加者の中でいちばんの人気を獲得しよう。

ボックス ワインの袋

オーストラリアの映画は、この国がサバイバルや世界滅亡後の世界や、そんな類の物語が大好きだということを示している。他に好きなものは何だろう。オーストラリア英語でグーンとも呼ばれるボックス ワインだ。この容器の性能が、見事なまでに冒険旅行にうってつけであることから、高い評価を得ている。グローブ ボックスやヘルメットの下にも問題なく詰め込める蓄尿バッグのような形状で、密閉されたデザインが酸化速度を遅め、長期保存がしやすい。そして、袋のワインを飲み終わったらどうするか? 袋を空気で膨らませ、枕にして迷った砂漠で眠ったり、ゴムボートが転覆したときの浮揚装置にしたりするのがいいだろう。いずれにしろ、もし夏のプランにとっぴな計画が盛り込み済みなら、あるいは未来のプランの中に世界滅亡が入っているなら、スティーブ・アーウィン(Steve Irwin)や『マッドマックス』を生み出した国のファッションにヒントを得て、ワイルドに行こう。

ダルメシアン

人生における多くのものと同様に、犬もまたトレンドの渦からは逃れられない。2015年のフレンチ ブルドッグの集中豪雨に続き、最近では柴犬やパグル、ボストン テリアの洪水が起きている。ゴールデン レトリーバーが郊外における非公式犬として知られるように、東海岸の高級な人気地区においては、フレンチブルドッグは避けられないものになっている。だが、2018年の夏についてはどうだろうか。私の予報はダルメシアンだ。少なくとも、Instagramのタイムラインに少なくとも101匹は出現する。よく知られるように、この犬は気難しい性格で手がかかるかもしれないが、セルフィーに取り憑かれている世代にとって、このインスタ映えする毛並みは完璧だ。言うまでもなく、2匹として全く同じ毛を持つ犬はいないので、誰がいちばんかわいい子犬を手に入れたかの争いは、かなり過熱する可能性がある。この先、犬を飼おうと思っている人は、次の「イット」犬は全身まだら模様だということを、肝に命じておいてほしい。

  • 文: SSENSE エディトリアル チーム
  • 写真: Rebecca Storm
  • スタイリング: Romany Williams
  • モデル: Erika Houle、Harvey
  • ヘア&メイクアップ: Laurie Deraps / Teamm Management
  • 制作: Jezebel Leblanc-Thouin
  • 制作アシスタント: Ian Kelly