今日は何を着ればいい?
ロンドン出身の新進気鋭フォトグラファー、ロナン・マッケンジーがイギリスの空模様スタイルを撮り下ろす
- 文: Durga Chew-Bose
- 写真: Ronan Mckenzie
- スタイリング: Nathan Klein
郵便番号E10 イーストロンドン、レイトン。キングスミル製パン工場のすぐ隣。何を隠そう、イギリスで現在人気上昇中のフォトグラファー、ロナン・マッケンジー(Ronan Mckenzie)が10年ほど前に働いていた工場だ。撮影は、ここで行なわれる。
スタイリストのネイサン・クレイン(Nathan Klein)と組んだ今回のコラボレーション プロジェクトで、ロナンが見せてくれるのはロンドンの空模様だ。戸外の気温に合わせて − あるいはそれに反発して − 着るものを選ぼうとする心の動きが、どれほど私たちの毎日の生活に影響を及ぼしていることだろうか。何枚重ね着するか、外出を止めて家にいるか、誰に会うか、そして当然ながら、どんな気分になるか…すべて、1時間刻みの天気を予報するアプリのお告げ次第だ。
ところが、おかしなことになった。ロナンはロンドンを象徴する陰鬱を表現するつもりだったのに、あろうことか、撮影日にはロンドンでこれ以上は望めないほどの晴天に恵まれてしまった。まるでロサンゼルス並みの陽光が溢れている。これだから、天気予報はあてにならない、云々。
さて、レイトンの1日を、ローナン自身の言葉で語ってもらおう。
春の息吹
お天気というのは、時として、双頭の怪獣になる。晴れていたかと思うと、風が吹き始める。空が割れて、雨が振り始めるかもしれない。私たちは、そんなお天気次第でやっていく他はない。花はネイサンのアイデアだったけど、とてもいいと思う。ヒバ(Hiba)とフダ(Huda)から姉妹の絆を感じるおかげで、一見灰色の世界から美しいものが芽生える可能性と期待が表れてる。
炸裂する日の光
いきなり太陽が顔を出して、何が何でも日光の中へ飛び出して行きたくなる気持ち、わかるでしょ? この写真は、着ているものの遊び心や、モデルの頬が日光を反射しているところが、とても気に入ってる。彼女はすごく堂々としている。だけど、149番のバスに乗ってるときの彼女も、どんなお天気だろうといつも輝いてるはず。
キャリア ウーマン
ネイサンは、究極のキャリア ウーマンを念頭に置いて、モデルに着せるアイテムを選んだ。晩春が初夏へ移り変わる頃、スマートな装いを心がけるのは勿論だけど、仕事が終わった後は公園へも行ってみたい。モデルのステラ(Stella)は、毅然とした雰囲気があるけれど、とてもオープンで、唇にはよく笑みが浮かぶ。この写真には、そのふたつの要素がとてもよく出ている。ステラがブリーフケースを持ったままサーフィンへ行くつもりでも、ちっとも驚かない。

画像のアイテム:ブレザー(Raf Simons)、帽子(A-Cold-Wall*)
炎熱地獄
イギリス国内で、ロンドンの地下鉄ほど暑い場所は多分ないと思う。肌を刺す冷気に備えてしっかりと身支度を整え、地下鉄に乗る。と、車内は耐えられないほどの暑さ。何層もの重ね着に包まれて、汗が流れ落ちる。完全に沸騰状態。だけど気を確かに持って、取り乱したりしない。汗の滴が顔を流れ落ちても、わざわざ拭く手間さえかけないこともある。

モデル (左) :タートルネック(Jil Sander)、ブラウス(Issey Miyake)、帽子(Prada) モデル (右) :コート(Issey Miyake)

モデル (左) :タートルネック(Jil Sander)、ブラウス(Issey Miyake)、帽子(Prada) モデル (右) :コート(Issey Miyake)
灰色の光
雲、雲、雲。でもだからといって、いつも憂鬱な日になるとは限らない。私がアパートをシェアしていた男の子は、朝起きたときにほんの少しでも太陽が見えないと、必ず不平を言った。だから、私は逆に、空模様に関係なく、ハッピーで楽しいことを見つけるようにした。友人のカタリナ(Catarina)は、「雲の後ろで、太陽は輝いてる」と言ってたものだ。朝起きて、曇り空だった日は、ぜひこの言葉を思い出してほしい。

モデル着用アイテム:ポロ(Gucci)、カーディガン(Gucci)、コート(Gucci)、フーディ(Gucci)、ジャケット(Gucci)、ショーツ(Gucci)、ソックス(Gucci)、サンダル(Gucci)
ロンドン クラシック
着る人次第で服がすごく違って見えるのは、とてもおもしろい。モウ(Moh) は、全身 Gucciづくめでも、とてもカジュアルにリラックスして見える。でも、そのままの姿で、小学校のときの同級生の菜食主義のお父さんにも見える。家庭菜園に精を出して、野菜を山ほど詰め込んだ、やけに青臭いランチ - 今の私だったら大歓迎 - を子供に持たせるお父さん。私にとって、ロンドンとロンドンで暮らす人々の多様性は大いなるインスピレーションの源だ。それを、この写真で表現できた。
- 文: Durga Chew-Bose
- 写真: Ronan Mckenzie
- スタイリング: Nathan Klein
- モデル: Eastwood Danso、Joy Danso、Nana Danso、Stella Lado、Nadumba Lomodong、Hiba Samra、Huda Samra、Mohammed Samra
- メイクアップ: Michelle Boggs
- ヘア: Asahi Sano / Caren
- キャスティング: Jonathan Johnson
- 制作: LG Studio
- 翻訳: Yoriko Inoue
- Date: October 11, 2019