18+ のデジタル ロールプレイ

インターネットをベースにするポップバンドが、限定ディレクターズ カット版三部作「Three Song Medley」を発表

  • インタビュー: Zoma Crum-Tesfa

Samia Mirza と Justin Swnburne のふたりが結成した 18+ は、デジタル時代にあるべきポップバンドの姿を示している。匿名性、リミックス、ロールプレイといったインターネット独特の表現技法を駆使し、ミステリアスで性的魅力の充満したペルソナ、そして自らディレクションするミュージックビデオによって 18+ は有名になった。初のビデオ コラボレーションでは、ベルリンを拠点とするクリエティブ スタジオ Haw-lin とタッグを組み、ニュー・アルバム「Collect」から3曲のディレクターズ・カット版ビデオ「Three Song Medley」を作り上げた。

ビデオのリリースに合わせ、Zoma Crum-Tesfa が 18+ の Mirza と Swinburne と話した。

Zoma Crum-Tesfa

Samia Mirza 、 Justin Swinburne

Zoma Crum-Tesfa: では、まず最初にふたりがどうやっていっしょに活動するようになったかを聞きましょうか。

Samia Mirza(以下、SM): シカゴのアートスクールでいっしょだったの。ふたりとも彫刻の勉強をして、卒業後はそれぞれ理由は違ったけどロサンゼルスに移ったの。なんとなく始まったって感じね。

以前に、立体作品でいっしょに作業したことはありますか?

Justin Swinburne(以下、JS): ないね。まったく。

SM: 彼がわたしにビートを送ってきて、その上に自分の声を乗せてみたの。それを海で踊っている女性のビデオにかぶせて、友達に見せたわけ。有名だったわけでもないし、何か確たる根拠があって始めたわけでもなくて、ふたりで何か面白いことを試してみたかっただけ。彫刻以外でね。それが、ある友達の手に渡って、そこからシェアされてうまくいったの。

当時、アートの方はどうしていたんですか?

JS: けっこう充実していたよ。たくさん作品を発表していたけど、このプロジェクトが始まってからはアートに目を向ける機会が少なくなっていった。当時、個人として職業アーティストを目指すなんてとても退屈だと感じていたから、そこからの完全な逃避だったね。なんて言うか、情熱がなかったんだ。多くの友達がそうやってすぐに成功を掴んでいたから、自分的にはうんざりしていた。今では、もっと趣味としてアートに接しているよ。

SM: 学校ではかなりの彫刻を制作したし、ロサンゼルスに来てからも彫刻をやっていたわ。でも、18+ が始まったとき、ふたりとも会社勤めをしていたから、わたしは仕事中にコンピュータでアートをやっていたの。それで、わたしが求めていたクリエイティビティが満たされたわ。

このプロジェクトでは、原作者が姿を消え始めていると思うわ。誰が何を作ったのかという役割は、大切なことではない。。
—Samia Mirza

このビデオは、自分たち以外の外部のディレクターとの初めての仕事なんですか?

JS: そうだよ。Haw-lin の Nathan とは仲の良い友達だということがまず基本にあったんだ。いつもお互いの作品を尊重し合っている仲だから。自然の成り行きだよね。Samiとぼくは Nathan や彼のチームとうまくやっていけるとわかっていた。

このビデオのコンセプトは何ですか?

JS:コンセプトは、見ての通り携帯電話なんかでパーソナルなコンテンツを撮って、それを商業写真として再撮影するということなんだ。だから、スクリーンや照明器具なんかを用意して商業写真の撮影現場を作り上げたけど、そこへ私的なコンテンツを押し込めたんだ。このやり方は 18+ が今までやってきたことの全体的なメタファーだ。つまり、オーガニックなオンラインのコンテンツを市場へ出してみる。それがお互いにどう反応するか見るためにね。

あなたのプロジェクトは、従来のバンドに比べて、よりコラボレーションにオープンな姿勢をとっていると思いますか?

JS: 確実にそうだね。自分たちのアプローチは、どこからでも物事を集めること。18+ という名前も、誰もがその下に参加できる傘を作ることを意味している。人も物も画像でも絶えず吸収されて、このブランドに注ぎ込まれる。とても流動的で、漠然とさえしているんだ。誰が何を作っているのかもわからない。もしくは、もともとのオリジナル コンテンツが何なのか、何が妥当かもわからないんだ。

SM: このプロジェクトでは、原作者が姿を消え始めていると思うわ。誰が何を作ったのかという役割は、大切なことではない。実際には、もっと人の手を入れたいわ。Haw-lin とのコラボはとてもうまくいっているの。わたしたちのミックステープやビデオでさえ、全部がリミックスのように感じるわね。

バンドを始めたときはふたりとも匿名で、そのことが大きく取り上げられましたね。どうして、名前を明かそうと決めたんですか?

SM: わたしたちは、いつも、プロジェクトにとって自然だと感じられる範囲で仕事をしているの。当初は、ライブをせずにオンラインだけで音楽を発表してきた。だから、匿名性が有効だったけど、そのうちライブも始めるようになったし、直接会インタビューも受けるようになったし、レーベルとも仕事をするようになったわ。だから、物理的な存在が必要になって、匿名であることが意味をなさなくなったの。

活動を始めたとき、自分たちのことを男の子と女の子と言っていましたね。

SM:わたしたちの役割を任された匿名の代理人だったわけ。

性別による役割分担は、あなたたちのテーマでもありますか?

JS: そうだね

どういうふうに?

SM: わたしはクールで落ち着いた態度。歌詞の中では、女性としての権利やエンパワーメントを表現する役割。誰かを言い負かすような苦々しい声の場合もあるわ。

女性による支配の傾向がここにもあるということですか?

SM: そうね。

JS: 服従と支配はいつも循環すべきだと思う。

SM: マイクの前にいるときは、自分が何者になるかわかるの。虚構を備えた何者かになることができるの。でも、偽りのない自伝的な内容もある。最後の「Slow」という曲では、「売春婦のように振る舞い始め、絶えず自分の成果を気にしている」というラインがある。こんなことを歌うのは心が痛むわ。だってレーベルからリリースされて、オーディエンスが買って聴いて吸収するんだから。売春婦というのは単に性的行為の意味で使ったわけではなくて、人々が聴いて買って吸収するものを作るという観点でもあるの。

JS: 例えば「Sense」という曲は、ピントがズレている人物について歌っているんだ。金銭的な成功が人生の目標なんだけど、現実には、絶望して錯乱してしまうんだ。

レコーディングが始まってマイクに向かえば、何かしらフィクションが生まれるんだ。
—Justin Swinburne

こういうキャラクターはどうやって作られるんですか? 本当のことを言うと、自分が今から会う人がスカンジナビアのヒップホップ オタクなのか、ワシントンDCかサンタ・クルーズ出身のブラザーなのか、全く見当がつかなかった。あなたは、どこからやって来たんですか?

JS: カリフォルニアのムーアパークだよ。

いや、かなり誘導的な質問かもしれませんが。

JS: わからないね。レコーディングが始まってマイクに向かえば、何かしらフィクションが生まれるんだ。でも、わからない。「Sense」という曲は、あらゆる理由から、不快になりやすい。この曲には、多くの点で、ミンストレル・ショー(1830年代のアメリカで生まれた、顔を黒く塗った白人が演じたショー)とも解釈できる要素がある。お金について話しているんだけど、ヒップホップのパロディーのようにも聴こえる。でも、本当は、人や男らしさや絶望についての曲なんだ。貧しいと見られることにおびえたり、その恐怖を間違った方へ向けてしまうことについて語っている。当時ぼくは全くの一文無しだったから、これは自分の心にあった本当の気持ちなんだ。

最後に、Mariah Carey についてはどう思いますか? わたしは好きですが。

SM: わたしは Mariah Carey を聴いて育ったの。彼女の声域は見事よ。それだけじゃなくて、キャラクターを自由自在に変える彼女の能力はいつも傑出していたわ。「Fantasy」や「Always Be My Baby」は楽しくて、愉快で、まるで恋を歌うティーンエージャーみたい。で、「My All」とか「I Still Believe」のような歌では、信じられないほど大人で、シリアスで、深くて、まるで自分がたどって来た長い人生を歌ってる女性のようだし。このふたつのスタイルの間にあるすべてが、彼女の興味深いキャラクターと作品を作りあげているのよね。

  • インタビュー: Zoma Crum-Tesfa
  • クリエイティブ ディレクション: Haw-lin
  • サウンド デザイン: 18+