概念をパッチワークする

Calvin Klein、Eckhaus Latta、Junya Watanabeに見る、昔ながらの手芸の進化

  • 写真: Rebecca Storm

何かを継ぎ合わせると、そこには新たな意味が縫い込まれる。全体はピースによって決まり、そのピースは塞がれる穴によって決まる。2017年秋冬コレクションのランウェイでは、多くのデザイナーがパッチワークの可能性を探っていた。だが、これを単なるトレンドのひとつとして片付けるのは、パッチワークの歴史に失礼というものだろう。その歴史を紐解けば、パッチワークがいかに多様で、変化に富んでいるかわかるからだ。

モデル着用アイテム:セーター(Stella McCartney)トラウザーズ(Stella McCartney) 冒頭の画像 モデル着用アイテム:シャツ(Balenciaga)ジャケット(GmbH)

パッチワークは、ただ手に持ったり、身につけたりするだけのものではない。パッチワークの比喩はさまざまなものに見て取れる。50年代のキルトからお気に入りのアプリが縦横に並んだイメージまで、時系列に並べてみれば、パッチワークのパッチワークができる。これ以上、メタなものがあるだろうか。

パッチワークと言ってまず思い出すのは、おばあちゃんの家のベッドの端に折りたたんで置かれたブランケットだろうが、パッチワークの可能性はそれに止まらない。中世の鎧では、クッションとしてパッチワークをほどこした素材を中に着て強化することが多かった。これは理にかなっている。軽量で柔らかいキルトには、保護材としての性質もあるからだ。Eckhaus Lattaは、工業製品の領域に手芸を持ち込み、ベビー ブランケットのようなスカートで、この取り外し可能な安心感を演出する。

全く同じパッチワークはふたつとない。人間の手が加わることで、必ず違いが出る。Junya Watanabeのアウターが、この慎ましい手仕事にオマージュを捧げているのは明確だ。だが、ラグジュアリーとして扱われるパッチワークとは何を意味するのか。個別性が偏在性に触れるとき、そこで何が起きるのか。

映画のヒット作がシリーズ化して再始動するときのように、本来は連続していないものに連続性を持ち込むことは、文脈を取り込むということだ。だが取り込まれると同時に、その文脈はあいまいになる。パッチワークは調和しないがために、何とでも調和するのだ。大量生産された場合ですら、パッチワークはその控えめなDIY精神を主張し続ける。

画像のアイテム:ブーツ(Vetements)

Vetementsのライター ブーツは、たとえそれがネタだったとしても、デザイン界のマルセル・デュシャン的な情熱に再び火を点けた。さらにグレードアップした蛍光ペンのブーツを見るに、このクラッシックなレザーと平凡な文房具との融合は、もはやコンセプチュアルなパッチワークとでも言うべきものだ。事務用品を手に入れるために、ドアを蹴破って侵入しよう人はいないだろう。だが、この完全に異なるふたつの物体が組み合わさったことで、新たな価値が生まれる。

モデル着用アイテム:コート(Calvin Klein 205W39NYC)

モデル着用アイテム:コート(Calvin Klein 205W39NYC)

パッチ ポケットのついたボタンダウンに、メタルプレートのブーツ トゥなど、ラフ・シモンズ(Raf Simons)のCalvin Klein 205W39NYCでのデビュー コレクションには、アメリカーナに対する病的な情熱があった。ビニールとフェイクファーの予想外な結合を通して、シモンズは素材を使ってコンセプチュアルに遊ぶ。ガーメント バッグのもつ密かなのぞき見趣味を、人に見せるために存在するファー コートにパッチワークしてみせるのだ。すべてをステッチで縫いつけるべし、というパッチワーク本来の姿に縛られない、この型破りな素材の組み合わせが繰り出すのは、美的概念のパッチワークである。手縫いのパッチワークは昔からある手法だが、コンセプチュアル パッチワークは流行の最先端なのだ。

  • 写真: Rebecca Storm
  • 写真アシスタント: Aok Palad
  • ヘア&メイクアップ: Ashley Diabo / Teamm Management
  • モデル: Damaris / Folio
  • スタイリング: Rebecca Storm
  • 制作: Jezebel Leblanc-Thouin
  • 制作アシスタント: Erika Robichaud-Martel