デヴ・ヘインズ × ウェールズ・ボナー
「Practice」

ミュージシャンとデザイナーが、新しいコラボレーションを語る

  • インタビュー: Grace Wales Bonner
  • 写真: Grace Wales Bonner
  • 動画: Grace Wales Bonner

グレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)と写真家ハーレー・ウィアー(Harley Weir)は、4月、Wales Bonner 2017年秋冬コレクション「Spirituals II」のリサーチとキャンペーン撮影のために南アフリカを訪れた。さらに「Spirituals II」コレクションの延長として、新しい映画の撮影も開始した。その成果が「Practice」。デヴ・ハインズ(Dev Hynes)、別名ブラッド・オレンジ(Blood Orange)が音楽を担当した「Practice」は、主人公であるプレトリア出身の17歳ダンサー、リロイ・モクハートレ(Leroy Mokgatle)を通して、幅広い視点から舞踏を探求する。コラージュされたヨハネスブルグとケープタウンのシーンは、地元のミュージシャンやダンサーたちと交流するモクハートレの様子を映し出す。「Practice」は、6月2日にロンドンのICAで初公開された後、世界各地で上映される予定だ。ウェールズ・ボナーは旅を写真とビデオで記録し、現場での録音を基にしてデヴ・ヘインズがオリジナルのサウンド スケッチを制作した。

旅が終わった後、ウェールズ・ボナーはコラボレーターであるデヴ・ヘインズと顔を合わせて、彼の創作プロセス、読書リスト、自分の作品を評価する方法を尋ねた。

グレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)

デヴ・ハインズ(Dev Hynes)

グレース・ウェールズ・ボナー:こういうプロジェクトの場合、どういうアプローチをするの?

デヴ・ハインズ:えっと、先ずプロジェクト全体の雰囲気を考える。そこから、音調や雰囲気を組み立てていく。映像を撮影してるときに、君が音をたくさん録音してたのが良かったよ。それを雛形に使えたから。

あなたにとって、演習(Practice)という言葉にはどんな意味がある?

僕は練習が足りないな、っていつも思ってる。僕がやってるより、本当はもっとたくさん練習しなきゃいけないんだ。でも最近は、僕は自分なりのやり方で練習しているんじゃないか、って思うようになってきた。毎日音楽を作っているし、それも練習のひとつの形なんじゃないかな。

ダンスと音楽では、関わり方に違いがある?

僕が踊るときは、ただただ自分の心のため。瞬間の動きなんだ。楽になるし、リラックスするし、元気になる。それは音楽も同じだけど、音楽の場合は、もっとゆっくり燃焼する。すごくイライラして、ストレスになることもある。だけどダンスは、力を抜いてリラックスする、すごく直感的な表現だな。

どんな音楽を聴いてる?

サム・クック(Sam Cooke)、イヴ・チューモア(Yves Tumor)、キム・ジョンミ(Kim Jung Mi)、ジョージア・アン・マルドロウ(Georgia Anne Muldrow)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)、アリス・コルトレーン(Alice Coltrane)、デューク・エリントン(Duke Ellington)、クエール・クリス(Quelle Chris)、キングピン・スキニー・ピンプ(Kingpin Skinny Pimp)。

私は、南アフリカの民主化革命のときの音声や音楽を集めたCD「The Winds of Change」を手に入れたばかりよ。それと、南アフリカから帰ってからは、ソイル(The Soil)とサムシング・ソウェト(Samthing Soweto)をずっと聴いてるの。南アフリカの音楽では、何が好き?

前に君が送ってくれたメールに、ダンサーたちが聞いていた音楽が入ってただろ? あれはすごく良かった。あれから、ダンス ミュージックを聴くようになったんだ。ブラック・コーヒー(Black Coffee)は大好きだし、Kalawa Jazmee Recordsも好きだな。

南アフリカの旅では、南アフリカのズールー人が生んだ伝統的なイシカタミアを通して、トランスからテクノまで、いろんな音楽愛好家を紹介してもらったけど、あなたがいちばん興味を感じたのはどれ?

クロエ・デ・ソング(Culoe De Song)の音楽は、すごく良かった。エモボーイズ(EmoBoys)の「Sax in the House」も気に入ったよ。

僕が踊るときは、
ただ自分の心のため

今、どんな本を読んでるの?

マービン・ゲイ(Marvin Gaye)の伝記、ジョー・ローゼンタール(Jo Rosenthal)の小説集、エセックス・ヘムフィル(Essex Hemphill)とエイズの流行に関する本。

自分の映像作品も監督してるわよね。あれは、あなたの創作活動とどう関連してるの?

今は、両方を結び付けて、同時に作るようになった。前はそんなことができるとは思わなかったけど、今は実際にそうなってるから、このままやってくつもりだよ。

ニューヨークであなたに会ったときは、とても多作なアーティストっていう印象だったのを覚えてるわ。今回いっしょに仕事してみて、すごく仕事が速い感じなんだけど、どういう制作プロセスなの?

そこに音楽を作れる可能性がある限り、僕は音楽を作れる。そう思ってるんだ。最初は腰を据えて、時間をかけてじっくり考える。そうやって、やりたいことのために風景を頭の中に描いていく。その後は素材の問題だ。隙間を埋めて行く作業って言えばいいかな。

音に関しては、主に何を参考にするの?

僕にはテクスチャがとても重要なんだ。それからもちろん、ダンス。ダンスの色んな要素ね。僕がもう知っている場所、それから僕にとっては新しい場所から、音を引き出すんだ。

これは映画の中で尋ねたことだけど、優れたパフォーマンスは、どうすれば分かるの?

(笑)。僕自身のパフォーマンスが良かったって、今までに思ったことあるかな。自分にはすごく厳しい水準を求めてるから。でもそれは、演習に通じることかもしれないね。

自分の作品はどう判断するの?

自分の作品を作り出せて、それ以上手を付け加える必要がないと思ったら、そこで僕はハッピーになる。

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