Gucciで見せる
大都会の理想郷

「田舎はイライラするんだ」とフェン・リ(Feng Li)は言う。フォトグラファーはそう言って、田園風景には近づかず、Gucciを手がかりに、自分の考える「田舎」の定義を作り上げる。コンクリートの壁から剥がれ落ちるペンキを岩を覆う苔に見立てたかと思えば、モデルたちは木にもたれるように物干し用ロープに身を委ねる。上海の多様な質感が、Gucciというファッションの小宇宙を映しだす。GG スプリームのモチーフは、奇妙にも、グレイハウンドのツヤのあるブリンドル模様に呼応し、エメラルドのラメ用糸の光沢は、店のウィンドウに貼りついたままの、翡翠色の文字ステッカーを際立たせる。

人口2500万人にもなろうかという大都市では、長閑な休息の時間は皆無に等しく、稀にしか訪れない。そんな場所で、Gucciというレンズを通して、遊び心に満ちたくつろぎの瞬間を垣間見る。偉大な発見というのは、しばしば日常の中に落ちている。必要なのは、その見つけ方を知ることだけ。Gucciは闇の中で煌めき、都市に生きる冒険者たちのユニフォームとなる。