New Icons: Comme des Garçons の先鋭的なウィット

Rei Kawakubo が魔女を彷彿とさせるオックスフォードで、メキシカン ダンス サブカルチャーのシュールレアリズム的な側面に挑む

  • 文: Bianca Heuser
  • 写真: Mathieu Fortin

新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話

1980年代、Comme des Garçons最初期のファンたちは「カラス族」と呼ばれていました。Kawakubo の奇形的でありながら画一的なデザインが多くのカルト的なファンを生み出し、彼女が発表するコレクションの大半が闇夜のような漆黒で統一され、カラスが不幸と破壊の前兆だという伝説もあることから、「カラス族」という呼び名は的を射ていました。皺が寄り、引き裂かれ、染みが付き、継ぎが当てられた Kawakubo のウェアは、ショールームに至るまでの苦難に満ちた運命を想起させます。つまり、Comme des Garçons が持つ最大の魅力は、カラスの美学に集約されているのです。彼女の仕事は、証明というプロセスの否定にあります。

Kawakubo は一片の苦悩が、時として調和を破壊する最適な手段たりうることを我々に示しました。ライター兼ディレクターの John Waters は、「Role Model」と題した一連のエッセイの中で、Comme des Garçons というブランドと、その夢想的な創始者に対する、自虐的とも言えるほどの献身について事細かに語っています。Kawakubo の最新コレクションを展示する数少ないブティックや、彼女自らが「Comme des Garçons Army」と名付けた従業員はもちろん、Kawakubo のボブ ヘアでさえ、Waters の胸を高鳴らせました。Waters は東京の旗艦店で働く一人の従業員に、特に魅了されていました。「クールでスタイリッシュ、かつ物怖じしない彼女は、白雪姫に登場する異形の魔女を連想させた」と Waters は振り返ります。「私は彼女の落ち着きぶりに恐怖さえ覚えた。Kawakubo 流を全身で体現する彼女を笑う者は誰もいなかった。彼女はファッションの奴隷ではなく、ファッションの支配者だった。もし彼女が洋服ではなく毒リンゴを勧めてきたら、私は躊躇なく食べただろう。」

Waters の言葉は、まさに Comme des Garçons とその信奉者が目指している影響力を象徴しています。そして今季の「毒リンゴ」は、メキシコで流行している爪先の尖った奇妙なブーツにインスパイアされた、ブラック パテントレザーのポインテッド オックスフォードをおいて他にないでしょう。不条理主義のトレンドは、サン・ルイス・ポトシ州マテワラ発祥のサブカルチャー、Música Trival に端を発しています。シーンのメンバーたち(キックス)は、ダンス シューズの爪先を再現なく尖らせた結果、爪先の尖り具合を競い合うようになりました。正気を疑うほど非現実的で装飾的なこのトレンドは、Kawakubo にとって抗しがたい魅力を発散していたのでしょう。彼女がパテント レザーで再現したシューズは、蠱惑的という Comme des Garçons の基準を満たして余りある、魔女のような存在感が際立っています。しかしこのシューズは、着用者がその雰囲気に相応しい歩き方をして、初めて完成します。このオックスフォードが放つ純真かつ悪魔的なウィットは、Kawakubo の最も興味深い告解を連想させます。 2005 年、ニューヨークのジャーナリスト Judith Thurman が Kawakubo はどんな時に笑うのかと訊いたところ、彼女は素っ気なく答えた。「人が転んだとき」

  • 文: Bianca Heuser
  • 写真: Mathieu Fortin
  • スタイリング: Oliver Stenberg