このブレスレットは、ありのままの力
パリのジュエリーラインLe Grammeが、ゴールドブレスレットでミニマリズムの限界を試す
- 文: Karen Orton
- 撮影: Haw-lin Services

新たに登場したアイコンが語る、今シーズンとりわけ注目すべきアイテムの誕生秘話
Adrien MessiéとErwan Le Louër。Le Grammeの共同デザイナーであるふたりが、お互いにミニマルアートへの愛を共有していることは周知の事実である。彼らを引き合わせたパレ・ド・トーキョーでの偶然の出会いも、ふたりがともにDonald Juddのアルミニウム製大型立体作品に興味を持っていたことがきっかけのひとつである。しかし、すべてが過剰な現代社会において、わたしたちは自分自身に問いかけないといけない。ミニマリズムに未開の可能性があるとすれば、それはどの領域なのか? まるで想像力が欠如した時代に思い描かれた表現のように、飾り気がないと、あらゆる形態において、われわれから感情を奪う。だが、もしミニマリズムを、美に対する誠実性だと定義してみたらどうだろうか? すなわち、表情の無さをブランドの戦略として置き換えるというラディカルな行為と考えてみればどうだろうか?
ゴールド、シルバー、メッキを剥がし取り、ジュエリーが持つもっとも自然な形をさらけ出す。そうすることで、Le Grammeはジュエリーをありのままの姿である高価なメタルとして活用する。彼らのアイテムは純粋な日用品として提示され、メタル自体の重さを中心にしてデザインが施されている。なんともふさわしいことに、彼らの名前は国際規格である計測単位のグラムから取られている。正確であり、冷静であり、同時に賢明さを感じさせる数学的基準を彼らは掲げているのだ。
親しみやすくミニマルであるGold Le 21 Grammes Cuffは、男性用のブレスレットだが、その重さと素材以上のことは何も言わない。18カラットのイエローゴールド21グラム。輪郭が明快であるために、ゴールドの真価がよりいっそう発揮されている。手首で感じる冷たく重いゴールドの快感こそが、このブレスレットにある魅力であり、生身の身体性から来る美しさである。
肉体が見せる、このある種の正直さが、ミニマリズムの新たな可能性を決定する。つまり、それはシンプルな中には根源的な魅力が宿ることを証明しているのだ。ゴールドはもっとも原始的でありながら、同時にもっとも現代的な金属でもある。インカの儀式から結婚指輪、そしてiPhoneのマザーボードに至るまで、過去三千年に渡って重要な要素として使われてきた。それゆえに、ゴールドがわれわれに対して魅惑的な力を持たないと言うのは誠実ではないだろう。ゴールドは、力そのものなのだから。
- 文: Karen Orton
- 撮影: Haw-lin Services